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英EU離脱…悲観相場でも慌てず騒がず(藤野英人) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者

2016/6/28

「中長期投資は『世の中はいろいろあるけれども、最後に人々は困難を乗り越えて前進する』ということを信じられるかどうかが問われる。つまり『健全な楽観』の姿勢だ」

先週23日に行われた英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まり、歴史的な日になりました。

私も含めて大多数の人は、最終的には英国はEUに残留するのではないかと考えていたのではないでしょうか。また民間研究機関や調査会社でも僅差でEU残留との見立てだったので、為替や株式市場の衝撃は大きく、24日に円は対ユーロでも対ドルでも大きく上昇し、日経平均株価も終値が1日で8%近くも下落しました。

といっても今回のコラムは先行きの影響について語ることが目的ではありません。そのような想像もつかないような市場の変動があったときにどのように行動するべきかということを考えてみたいと思います。

政治的なイベント、天変地異、テロや戦争、疫病の大規模な感染爆発(アウトブレイク)、経済の基盤の崩壊(システミック・リスク)などにより株価の変動はたびたび起きます。株式や投資信託を保有をしているなど何らかに投資をしている場合、私たちは今回も含めてどのように対応をしたらよいのでしょうか。

そのようなネガティブなイベントが発生すると、おおむね株価は下落しますので、保有株や投信の価格は大きく下落し、資産が目減りします。もちろん事前に察知することができて、売却できたら大損を免れるわけですが、残念ながらそのようなことを行うのは難しいことです。

それではどうするか。まずは中途半端が一番良くないでしょう。個人投資家の方はなんとなく耐えて、耐えて、それでも株価が下がっていき、なんとなく辛抱できなくなって売却するというパターンの人が一番多いようです。

そしてそのような人は決まって相場が一番底をつけたときに売却したりして、後に残念な気持ちになる方が多いのではないでしょうか。下落の兆候を察知したら、さっさと売却するのが理想的ですが、これは多くの場合難しいのでむしろ売却せずに長期保有するべきと考えます。

私の経験では、世界の経済・金融に破壊的な影響を与えたリーマン・ショックでさえも3~4年を過ぎると株価は回復し、10~15%程度の損失まで打撃を減らすことができました。バタバタ慌てて、売り買いを行い、我慢を重ねて中途半端なところで売却をするのは避けたいものです。

確かに英国のEU離脱は歴史的な出来事です。しかし、私は過去26年間、投資の仕事をしていますが、この間にマーケットに関するネガティブなイベントを他にもさまざま体験してきました。日本のバブルの崩壊、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、アジア通貨危機、ロシア危機、山一証券の破綻、IT(情報技術)バブルの崩壊、米同時テロ、リーマン・ショック、東日本大震災、チャイナショック……など数えることができないほどです。その時々を振り返ると先行きが見えなくなり、とても悲観的な気持ちになったのも事実です。しかし、そのつど私たち人間は必ず立ち直り、そして前に向かって歩き始めるのです。

私は米同時テロのときは1日で運用資産を100億円失いました。しかし、それでも半年間で元に戻すことができました。私たちはどのような危機でも必ず乗り越えることができるのです。中長期投資とは「世の中はいろいろあるけれども、最後に人々は困難を乗り越えて前進する」ということを信じられるかどうかが求められるのです。つまり「健全な楽観」ですね。

どんなに世界の終わりのような出来事であっても、終わりのない危機はないのです。だからこそ、私の経験でいえば、慌てて行動せずに状況を見極めるということが大切なのです。今回も時間がたてば必ず市場は落ち着いていきます。

さて、今まで株式や投信を持っていなかったあなたは投資のチャンスかもしれません。もちろん、投資にはリスクがあるし、これからまだまだ嫌なニュースがあるでしょう。でもこれだけ相場が下げているので長期投資のタイミングとしては悪くないと思います。

私がよくいうことですが、投資する際に重要なことは「小さく」「ゆっくり」「長く」ということです。小さくとは、手に汗をかかない程度の金額、ゆっくりとは一気に資金を投入しないで複数回に分けるということ、そして長くとは少なくとも景気のサイクルの3年から5年度程度の間、続けるということです。

投資は人生の一部であり、全てではありません。そんなことで笑顔が失われたら、もったいないじゃないですか。「いろいろあっても最後には人々は困難を乗り越えて前進する」と信じましょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏と楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が交代で執筆します。
藤野 英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)。1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。90年野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。96年ジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。「JF中小型オープン」は1年間の上昇率219%を記録。驚異的なパフォーマンスを上げ、「カリスマファンドマネジャー」と呼ばれた。2000年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに入社。03年レオス・キャピタルワークス創業。CIOに就任。09年取締役、15年10月社長就任。明治大学非常勤講師なども務める。著書に「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社)など多数。

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