津田大介 ダイソン扇風機、空気がスマホで見える便利

ジャーナリスト津田大介氏が事務所で使っているダイソン空気清浄機能付ファン。その新製品に感じた可能性と評価は?
ジャーナリスト津田大介氏が事務所で使っているダイソン空気清浄機能付ファン。その新製品に感じた可能性と評価は?
ジャーナリスト津田大介氏が“気になるモノ”に迫る連載。今回はダイソン空気清浄機能付ファン、「Dyson Pure Cool Link(ダイソン ピュア クール リンク)」のレビューをお届けする。縦長のタワーファンモデルだが、その製品に感じた可能性と評価とは?

2016年3月にダイソンから空気清浄機能付きの新作「Dyson Pure Cool Link(ダイソン ピュア クール リンク)」が発表された。会社では、昨年発売の前機種「Dyson Pure Cool(ダイソン ピュア クール)」を使っているのだが、性能も見た目も良く、とても満足している。今回登場した新機種は、見た目こそ前機種とほとんど変わっていないが、面白い新機能が搭載されたので、自宅に導入して使っている真っ最中だ。

同社の羽根のない扇風機「Dyson Air Multiplier(ダイソン エア エアマルチプライアー)」で話題となった、扇風機の外枠だけのようなデザインは、やはり見た目がユニーク。穴の抜けたデザインは、存在感が良い意味で希薄で、高さの割に威圧感がない。どんな部屋にもなじむ。

前機種を買ったのは、オフィス内の空気を循環させるのが目的。サーキュレーター代わりに使ったり、エアコンをつけるほどではなくてもちょっと暑く感じたときに動かしたり。エアコンをつけてからも、これで冷気を循環させている。

使っていて地味に便利だったのが、リモコンを丸い枠の上部にマグネットでつけておける点。リモコンを探し回らなくてもよいし、何より使い勝手が良い。こういう実用的なデザイン性の高さがダイソンの魅力だ。日本製品の家電はどれも多機能で、リモコンにもいろいろなボタンがついてゴタゴタしてしまいがちだが、たとえばアップル製品は、Apple TVなどでも、どれもリモコンがすごくスマート。ダイソン製品もアップルに近いセンスで、リモコンもマニュアルもシンプルだ。とにかくボタンひとつでこういう風に使える、というように、機能が絞り込まれていて、日本の家電にはないスマートさを感じさせる。

津田氏が自宅で使っているダイソン ピュア クール リンク。前機種と、見た目はほとんど変わっていないが、面白い新機能が搭載されている

新機種の興味深い新機能

さてその「ダイソン ピュア クール リンク」なのだが、自宅ではリビングに置いている。最近暑くなってきたので、日常的に空気清浄モードでつけっぱなしにして使っていることが多い。ちょっと暑くなってきたかなと思ったら扇風機を入れて首振りモードにするという使い方だ。エアコンを入れなくても、強で首振り設定にしておくとかなり涼しく感じる。そもそも基本的には扇風機なので、機能もシンプルでよいと思うのだが、今回の新機種はセンサーがついていてオートで運転できるようになった。本体にニオイセンサーとホコリセンサーがついていて、空気中の様々なガスや揮発性化合物、粒子をモニター。つけっぱなしにしておけば、空気が汚れてくると、自動的にきれいにしてくれるのだ。自動的に判断して、空気の汚れをきれいにしてくれるのは、とても楽だ。僕は花粉症ではないが、そうした人にとって、くしゃみがではじめる前にアレルゲンを除去してくれるとすれば便利だろう。

もうひとつ、特筆すべきが、空気清浄機能を見える化したアプリが登場したこと。本体が置かれている環境の空気清浄の状態をモニターして、それをスマホなどに入れたダイソンのアプリで見ることができるのだ。

この製品以外にも、空気清浄機は何台か使ってきたのだが、これまであまり空気の状態を確認したことはなかった。というか、チェックしたくてもできる機能があまりなかったのだ。

それがこのアプリを使ってみると、現在の空気の状態がわかることの利点に気がついた。

見える化のさまざまな利点

たぶんほとんどの人がつけっぱなしで使う空気清浄機にとって、空気という見えないものを見える化する必要性があったのだろう。アプリは、空気の汚れ具合を教えてくれるので、まず稼働する理由がわかる。それからフィルターを取り換えるタイミングも知らせてくれる。ほかの空気清浄機と構造が異なるためフィルターの汚れが簡単に見えるわけではないので、これも必要な機能といえる。

アプリの画面では、家の温度や空気の状態を視覚的に把握できるのも面白い。室内の温度がどんな季節変化をするかわかるし、ペットを飼っている人や、これから帰宅する人が部屋の空気を循環させておこうなどと、外から空調をコントロールすることもできるのだ。

アプリの画面には、家の温度や空気の状態が表示される。画面右下のマークをタップすると、リモコン機能が立ちあがり、外から機器のリモートコントロールができる
1日や1週間の変化を知る事もできる

人が、こうしたアプリを介してやりたいことは、家の中のモニタリングだ。

手元のスマホで離れた自宅の空気の状態がわかる、ということを発展させて考えると、もっとさまざまな利点が浮かんでくる。

たとえば、急に温度が上がって部屋の中の空気が汚くなった場合は、火災かもしれない。誰もいないし窓もしまっているはずなのに、空気の状態が変化したとしたら空き巣が侵入しているのかもしれない。なにかそうした異常をアプリに通知する機能があれば、セキュリティーの面からも役立ちそうだ。そうした方向への発展もありうる。

さらに、ここで集積したデータを、ビッグデータとして活用できるとしたらどうだろう。花粉警報など、戸別の室内レベルの状態がわかるようになれば、精度も高くなりそうだ。また、ハウスダストや空気の状態を、病気やアレルギーなどの研究に生かせる可能性もある。

アプリで見える化したということは、モノのインターネット化であるIoT(Internet of Things)の第一歩でもある。状況がわかれば、エアコンや空気清浄機、ルンバ型の自動掃除機などをどう稼働させたらよいかも組み立てやすくなる。ダイソンがそこまでやるかどうかは別として、さまざまなセンサーを搭載した家電を使って、家の中の状態を集中管理すれば、それをベースにして掃除機を動かしたりやエアコンを稼働させたりもできるかもしれない。

こうしたスマート家電の連携は、同じメーカーならスムーズにいくだろうが、家電は性能や使いたい機能で選ぶことが多いため、必ずしも同一メーカーの機器ばかりをそろえるとは限らない。そこで囲い込もうとせずに、家電メーカーの垣根を越えてつながっていくようなものが必要だ。たとえば、録画した番組を異なるメーカーの機器でもシームレスに視聴できるようにしたDLNA(Digital Living Network Alliance)というガイドラインが策定されたように、スマート家電が普及し、IoT化が進んでいくためにも、今後はそうしたガイドラインや規格が求められるようになるだろう。それがどういった形で実現するかはまだわからないが、このダイソンの使いやすいアプリを見たとき、すべてのスマート家電がこうなっていってほしいと感じた。

難点は、面倒なセットアップ

とはいえ、このアプリにも難点はある。セットアップが不便だったのだ。アプリをインストールしてから部屋のWi-Fiにつないだ状態でセットアップするのだが、アプリにWi-Fiのパスワードを入れると、本体が無線LANルーターのような状態で表示される。そこでそれに接続し直して、またパスワードを入れて設定し直さなければならない。そうした手順でそこそこ時間がかかる上、ダイソン本体が無線LAN規格の5GHz帯に対応していないなど、リンクをシームレスに完了するにはまだ難アリ、という状態。こうしたところは、国産メーカーのようなかゆいところに手が届くような簡便さが欲しいと思った。

まとめとして考えると、さまざまな点で機能を割り切っているのはダイソンの良いところ。デザインも良いし、空気清浄機としての性能もシンプルかつ十分に使える。とはいえ、その上で、値段も高いのもダイソンクオリティーだ。価格的な面からみると、扇風機として見たら高い。高性能な扇風機に性能の良い“見える化”された空気清浄機とセットになっていると考えたときどう評価するかがポイントだ。

暑くなってきたら、エアコンをつけながら空気清浄機能を併用する使い方も

これまで、掃除機、扇風機、ドライヤーと、革新的な製品を作ってきたダイソン。今後もし、新しい家電を作るなら、ダイソンの冷蔵庫はちょっと見てみたい。なにしろ冷蔵庫は、賞味期限の管理や、メニューの提案、買い物など出先でなにがまだ残っているか知りたいなど、スマート家電になってくれると一番うれしいもの。日本の冷蔵庫は多機能で、製品としても完成されているけれど、シンプルで使いやすいダイソンならではの冷蔵庫が登場したら、話題になるのでは。果たして、どんな冷蔵庫になるのか。また、今後同社がどんな家電を手がけるか、想像してみると楽しいかもしれない。

津田大介(つだ・だいすけ)
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。1973年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。大阪経済大学客員教授。京都造形芸術大学客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。フジテレビ「みんなのニュース」ネットナビゲーター。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。株式会社ナターシャCo-Founder。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

(写真 石井明和、編集協力 波多野絵理)

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