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アムールトラ2頭誕生! 歴史的な繁殖大作戦(下)

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さて、アムールトラの続きです。キリル(オス)とザリア(メス)は2014年(平成26年)9月に来園したのですが、ここが自分たちの暮らす場所だと認めてくれること、旭山動物園での一日の生活のリズムを受け入れてくれること、飼育係との関わりを認めてくれること、何て言うか「旭山の住人」になるまでにこんなに時間がかかったことはないというくらいに難しい飼育のスタートでした。

新しい環境に慣れるのに時間

別々の動物園で生まれ育ったキリルは5歳、ザリアは4歳。もう立派な大人です。先方の飼育担当者からの個体情報から日本での一般的なトラの飼育方法とは大分違う環境で育ってきたことがうかがえました。

寝室と放飼場を出入りすることが必ずしも一日のリズムではなく、ある程度自由に居場所を決められる環境のようでした。もう2頭とも成獣なので親とは別に飼育しているので、放飼場(=展示場)での生活が主ではないようでした。キリルに至っては、たくさんのお客さんを見るとパニックになるので注意すること、と書かれていました。

また2頭ともそれぞれ別の方法でハズバンダリートレーニング(無麻酔で檻越しに採血や爪切りなどができるような訓練)も完全ではないけれど取り入れているとのことでした。ザリアの飼育担当の女性スタッフが心配だからと、日本までついてきました。ザリアの性格やトレーニングの仕方などを事細かに教えていただいただきました。生まれたときから特定のスタッフだけが関わり飼育をしてきたようでした。

結果として飼育環境や特定の飼育係への依存度が高くなっていたように思われ、新しい環境や飼育係への順応にとても時間がかかりました。トレーニングも継続したのですが、何かを強制しようとしていることに対するストレスや敵対心を育ててしまう傾向になってしまうなど試行錯誤の連続でした。トレーニングを中止し、まずは落ち着ける環境づくりに専念しました。

年が明けてやっとキリルは放飼場と寝室の出入りのリズムになれてきました。遅れること数ヶ月でザリアも放飼場に出るようになりました。

本来トラは単独生活者です。メスもそれぞれにテリトリー(縄張り)を持ち、さらに数頭のメスのテリトリーを一頭のオスがテリトリーとします。オスとメスはメスの発情期の交尾期だけ行動を共にします。お互いに空間を共有し合う中で、相手の状態を確認し合いながらテリトリーを持つのです。

キリルとザリアは檻越しに存在は認識していますが空間を共有していません。長い年数単独での生活が続くと認め合うことが難しくなり同居が不可能になりかねません。ただでさえ成獣同士の場合同居した瞬間にオスがメスを殺してしまうという最悪の事態も起こりえるのです。

最悪の初産に

そもそもテリトリーを持つのは生きていくための獲物の確保が第一の目的です。動物園の場合食べることは補償されているので広さが問題にはならないと考えています。

狭いながらもお互いが落ち着ける環境が大切なのだと思います。地面の起伏や樹木によりお互いが身を隠せる死角がある旭山の放飼場は、落ち着けるはずだと信じ同居を急ぎました。4月中旬同居を決行しました。同居は僕たちの心配をよそに小競り合いもなく成功しました。

寒冷地の動物は冬に発情交尾をし、獲物の確保や子育てがしやすくなる雪解け時期に出産をする動物が多くアムールトラも同様です。ザリアは同居の刺激からか5月に入り本格的な発情が来て同月下旬に交尾が成立しました。

9月上旬には出産の可能性が出てきたのですが、想定外の交尾で産室の準備をしていませんでした。産室の準備を急ピッチで進めましたが、産室を子育てをするのに安全な場所と認識するまでには時間がかかります。

8月下旬から出産に備えザリアを産室内での飼育に切り替え9月9日の出産となりました。監視カメラの映像から、ザリアは出産はしたものの、子供をなめることも胎盤の処理も全くしませんでした。

母親が子育てができる環境ではないと判断した場合、子を食べてしまうこともあるのですが、生みっぱなしの無関心は、母性という点からは最悪の初産でした。

貴重な血統であることから人工保育も試みたのですが結局繁殖は失敗に終わりました。

ビデオを分析して、いかにしたらザリアにとって安心して子育てする環境を整えられるのかを考え、産室の大改修に取り組みました。前回は1つの部屋の中に出産育児用の産箱を設置し、摂餌排便のスペースを確保したのですが、本来清潔に保つ産箱内に餌を持ち込むなどの行動が認められていました。

そこで出産育児に専念できる暗い産室と餌を食べ排便をする寝室を用意し自由に出入りできるようにしました。リラックスできることが母性を目覚めさせるきっかけにつながることを期待しました。

昨年の12月下旬に交尾をし、今年の3月下旬から放飼場に出すのを中止しました。産室に餌を持ち込むようなことはなく期待が膨らむ中、4月8日出産。見事に授乳、育児をしてくれました。1頭は死産でしたが2頭がスクスクと成長しています。

生後50日頃から子供たちの動きも活発になり産室から寝室に出てくるようになりました。6月に入り放飼場への扉を開放しました。子供は産室から顔を出し初めての景色を不思議そうに眺めています。

ザリアがついてきなさいと先に出るのですが数メートルも歩くと子供は引き返してしまいます。数日後ザリアが子供をくわえて放飼場に連れ出しました。来園者の歓声やカメラの放列にも全く動じることなく、子供たちの動きを優しく見守っています。

今年の冬は、雪の中を転げ回る親子の姿を見ることができるでしょう。日本最北の動物園、旭山動物園にとって象徴的な動物の繁殖成功になりました。来年開園50年を迎える旭山ですが、新たなスタートを切る勇気をもらいました。

地方創生大臣賞受賞

さる6月13日第1回日本サービス大賞の授賞式があり、旭山動物園は地方創生大臣賞を受賞しました。公務員が運営する施設として唯一の受賞でした。公務員もやればできるんだと少し嬉しくなりました。公共でやる意味はお金で計れない物・心を還元していくことなんだと常々思っていて、その取り組みの結果が動物園単独の会計ということではなく、地域の経済にも大きな貢献ができる可能性を示すことができたのかなと思います。

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