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転職前、生活費6カ月分が理想 健保や年金変更早めに

2016/6/25

「やりがいのある仕事をしたい」「もっと高い給料がほしい」といった理由で転職を考える人は少なくないだろう。現在の勤め先を辞めてスムーズに次の会社に移れればいいが、思うように職が見つからないこともある。社会保険・税の手続きや当面の生活費など転職する際の注意点をまとめた。

総務省の調べによると、2015年の転職者数は前年比8万人増の298万人と09年以来6年ぶりの水準を回復した。特に女性の転職者が6万人増と全体を押し上げたことが目立つ。景気の持ち直しに加え、女性活用に積極的な企業が増えたためだ。

ただしだれもが次の仕事が決まってから退職するわけではない。再就職支援サービスを手掛けるパソナキャリアカンパニー(東京・千代田)が25~44歳の男女を対象に実施した「転職に関する意識・実態調査2015」によると、「転職活動中に退職した」「退職してから転職活動を始めた」と回答した人は合計で45%弱に達した。社会保険労務士の佐佐木由美子氏は「女性の場合は次の就職先が決まらなくてもいったん退職する人が比較的多い傾向」と話す。

■すぐに手当出ず

退職して次の就職先が決まるまで期間が空く場合、まず思い浮かべるのは失業手当(基本手当)を受け取ることだろう。ハローワークに行って、失業状態と認定されれば受給資格が得られるが、退職した理由によって手当てを受け取れるまでの期間が違うので注意が必要だ。

「まさか4カ月近くもかかるなんて」。昨年4月に東京都内の通信会社に再就職したAさん(30)はこう振り返る。14年6月に広告代理店を辞めて職探しを始めたが、失業手当を受け取れたのは10月から。失業手当は原則、職探しをしている状態が4週間続いた時点で4週分をまとめて支給する。会社の倒産やリストラなど「会社都合での退職」をした人は受給資格を得て約1カ月後からもらえる。しかし「一身上の理由」など自己都合で退職すると、さらに3カ月間受け取れない。

基本手当の金額は年齢などを踏まえて決まり、直近6カ月の賃金の平均日額の45~80%が一般的だ。Aさんの基本手当は月約20万円だったが、就職活動が長引いたこともあって「貯蓄を取り崩して生活し、面接に行くための交通費を隣の県に住む親にもらったこともある」という。

パソナキャリアカンパニーの調査で「転職活動を開始してから入社先を決めるまでの期間」を聞いたところ、3カ月以上との回答は4割弱だった(入社先を決めて退職した人も含む)。ファイナンシャルプランナー(FP)の横山光昭氏は「生活費は少なくとも6カ月分用意しておくのが理想」と助言する。

退職すると、勤務先で加入していた健康保険や年金保険の変更が必要になる。佐佐木氏は「転職する人が特に気にするのが健康保険」という。保険証がないと医療費の負担が膨らみかねないからだ。

退職した人は3つの選択肢がある。1つ目は勤務先の健康保険から国民健康保険に切り替えること。住んでいる市区町村の窓口で14日以内に手続きをする。保険料は前年の年収などを基準に市区町村ごとに決まる。

2つ目は勤務先の健康保険に「任意継続被保険者」として引き続き加入する。退職日の翌日から20日以内に手続きをする。保険料は在職中は会社が半分負担していたが、任意継続は全額自己負担となるので基本的に約2倍になる。加入できる期間は2年だ。

国民健保と任意継続の保険料のどちらが安くなるかはケースバイケースだ。国民健保の保険料は自治体の窓口、任意継続は健保組合で分かるので安い方を選ぶといい。

■市区町村に届け出

親や配偶者など家族が会社員なら扶養家族になる方法がある。家族の健康保険に入るので、自分で保険料を払う必要はない。ただし60歳未満の人が加入するには、年収の見込みが130万円未満といった条件がある。3つのケースいずれも「前の勤務先が手続きをしてくれるわけではない。早めに自分で動くことが大切」(佐佐木氏)だ。

年金も国民年金への切り替えが必要。14日以内に市区町村に届け出るが、収入がなく保険料を納められない人は免除制度がある。免除額は保険料の4分の1~全額の4種類だ。免除期間も基礎年金を受給するための資格期間に算入される。免除を受けても10年以内に追納すれば、通常の年金額として計算される。免除の手続きをしないで保険料を納めないと未納状態となり、後から納められるのは原則2年以内となる。未納期間があると、年金は減額される。

住民税は前年の所得に課税するので、現在収入がなくても納めなければならない。3カ月または1年ごとにまとめて払う。いずれを選んでも比較的まとまった金額になるので気をつけよう。(川鍋直彦)

■住宅ローンは金融機関に相談
住宅ローンがある人は退職前に借入先の金融機関に相談するのが得策だ。一部繰り上げ返済を求められる場合もあるが、返済期間を延ばすなどで支払能力に応じた新たな返済計画を作ってくれる。退職してからでは交渉は厳しくなる。一般にローンの返済が一定期間以上滞ると、ローンの一括返済や自宅の売却を迫られかねない。
勤務先で財形貯蓄制度を利用していた人は、2年間はその金融機関に預けることができる。転職先に同制度があれば移管できるが、財形住宅と財形年金を払い出す場合は、決められた使途にあてないと非課税扱いがなくなり、直近5年分の利子に課税される。

[日本経済新聞朝刊2016年6月22日付]

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