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察してほしい上司とはっきり言ってほしい部下

以前、上司が部下に求めることをまとめた「あなたが上司から求められているシンプルな50のこと」という本を書きました。その際、上司層に部下への要望を改めて聞いてみたところ、最も多かったのが「上司の意を察して動いてほしい」という期待でした。

そのことを部下の皆さんに伝えると、「勝手だ」と怒るとともに「期待することがあるなら、はっきり伝えてほしい」、「指示はもっと具体的にしてほしい」など、様々な声があがりましたので、それを「あなたが部下から求められているシリアスな50のこと」という本にまとめました。察して動けという上司、はっきり言ってほしいという部下の対立は様々な問題の根になっている様子です。

果たして、どちらの言い分に理があるのか考えましょう。

上司の言い分

部下には、こちらの意を察して動いてほしいといつも思っています。こっちは、複数の部下を抱えている立場です。いちいち細かく言っていられませんよ。こっちの立場をわかってほしいですね。それに、細かく指示すると部下は嫌がるじゃないですか。

期待していることは伝えていますよ。年度方針だって出していますし、日常的に話しています。聞き流しているから、何を求められているかわからないということになるんです。それは、部下の側の問題ですよ。

察して動くというのは、ビジネスの基本です。相手の状況を考えた上で行動する。それができなくては、顧客対応もうまくできません。いまの若い人たちはその点が弱いと思います。

【部下に求めること】

*上司の意を察して動いてほしい

*日常的に話している期待をきちんと聞いてほしい

*相手の状況を考えた上で行動するよう心がけてほしい

部下の言い分

意を察して動けというのは、ムシがよすぎます。僕らは超能力者じゃないんです。きちんと言ってくれなければ、わかりません。だいいち、上司はいつも忙しそうにしていますが、いま何をやっているのか僕らに説明しません。だから、察しようがありません。

それに、部下に何を求めているのかよくわかりません。年度方針で期待は伝えてあると思っているようですが、漠然としていて具体的にどうしてほしいのか、理解しにくいです。また、部下の状況はそれぞれ違いますから、一律に同じ期待をしても意味がないと思います。

だからといって、個々の仕事で細かく指示されるのは嫌です。任されていないと感じますから。部下が思っているのは、期待は明確に伝え、細かいことは任せてほしいということなんです。

お客さんの意を察して動くということはやっています。仕事ですから。ただ、上司までお客さん扱いしなくてはいけないというのは、勘弁してほしいです。

上司こそ部下の気持ちを察してほしいです。

【上司に求めること】

*期待はきちんと具体的に伝えてほしい

*細かいことは任せてほしい

*部下の意を察してほしい

上司も部下もお互いに察することを求め、不満を感じている様子ですが、これではらちがあきません。どうすればよいか考えましょう。

<上司への提案>

意を察してほしいという気持ちはわかりますが、それに応えてくれる部下は少ないもの。生まれも育ちも性格も異なる部下に、察して動けと要求するのは無理があります。もともと、部下は上司のために生まれてきた人ではないのです。ここは、意を察する前提となる「期待」からきちんと伝え、動かす必要があるでしょう。

期待をきちんと伝えてもらっていないと思っている部下は多いものです。上司と部下に個別にインタビューしてみると、上司の期待を正確に把握している部下は10人に1人ぐらいしかいません。「自分と部下は10人に1人の強固な関係だ」と自信を持って言えるならともかく、そうでなければ伝わっていないという前提で考えた方がよいでしょう。

まずは、伝え方を再考します。最近の若いビジネスパーソンの中には、口頭で言われたことは重要ではないと考える人が少なからずいます。期待は、次期の目標を設定するタイミングで、ペラ1枚でもよいですから、文書にして手渡すのがお勧めです。

また、その際、個々の部下の立場、役割、能力、本人のキャリアプランなど総合的に勘案し、期待することを示すとよいでしょう。例えば「顧客向けの企画書を独力で作り、説得できるようになってほしい」、「中規模の案件を、外部リソースを活用しながら、完結できるようになってほしい」、「技術的な問題解決が必要な他者の案件について、指導者として助力をしてほしい」というように。

その上で、個々の仕事については、任せるようにすればよいでしょう。もちろん、その仕事に関する部下の能力に応じ、任せる範囲を広くしたり狭めたりする調整はします。

また、察する前提として上司もいまの自分の状況をもっとオープンにした方がよいでしょう。部下は、上司がいま、どういう状況なのかを、よく把握できていないものです。ミーティングなどの場を活用してオープンにしていきましょう。

上司が察してほしいと思っているのと同様に、部下も察してほしいと思っています。でも、部下の腹の内はわからないもの。期待を伝えると同時に、部下が上司に期待することを聞いてみてはどうでしょう。それを受け止めることができるのが、器の大きい上司です。

*期待することを文書にして渡す

*個々の部下に応じて期待を考える

*いまの自分の状況をオープンにして察しやすいようにする

*部下の期待も聞いて受け止める

<部下への提案>

期待することをはっきりと伝えない上司が多いことは確かです。察して動けと言うのは上司の身勝手と思う気持ちもわかります。ただ、少し考えてみましょう。

上司は、部下を導き、育て、守るのが役割です。しかし、それを複数の部下に対し、完璧にやることは難しいもの。部下が上司にそれを求めれば、ストレスがたまることの方が多くなるはずです。だから、上司は身近なクライアントと割り切ってしまった方がすっきりします。それは、自分のためです。

クライアントの中には、気難しい人もいれば、細かい人、感情の起伏の激しい人もいます。部下の皆さんは、そういう人に対し、どうすればよいか模索して、なんとか対処していることでしょう。上司も同じと考えてしまうわけです。

察して動いてほしい、というセリフもクライアントが発しているものならば、受け入れられるでしょう。相手がクライアントなら、こちらから尋ねたり、これまでの言動からヒントを得て対応を考えたりするはずです。時には相手の立場に配慮しながらこちらの要望を伝えることもあるでしょう。上司に対しても同様にします。

上司が自分に期待することを、インタビュアーになったつもりで聞き出したり、「こういうことを期待されていると思っているのですがズレていませんか」と確認したりしましょう。

上司に「こういう対策もしておいてくれないか」と言われたとき、待っていましたとばかりに「そのように手は打ってあります」と告げることができたら、あなたの勝ちです。そういうことが増えれば、任される範囲も自然に広がり細かいことは言われなくなります。

ゴールは、上司の意を察して動くことではなく、上司の期待を上回ることです。そこに至るまでの入り口として、まずは期待を正確に把握して動くことを意識してみてはどうでしょう。

*上司は身近なクライアントとして割り切る

*期待されていることを正確に把握する

*ゴールは上司の期待を上回ること

よいパートナーシップのためには、お互いに察し合い、話し合うことが必要です。

[日経Bizアカデミーの記事を再構成]

濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント
1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。

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