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昇進・昇格に影響する人事考課は、部下の側からすれば、とても重要なものです。

考課の結果に関しては、上司から説明を受ける場合と、受けない場合があります。上司から考課結果を知らされない場合でも、昇進や昇給の度合いで、推測はできます。ただ、その場合、実際のところ自分がどのように評価されたのか、わかりません。

会社のルールで知らせることになっている場合もありますが、多くの場合、管理職に任されているようです。人事考課の結果を知らせるべきか否か、上司も迷うところでしょう。部下としても、知りたいような知りたくないような。

今回は、双方にとって微妙な話題、考課結果のフィードバックについてです。

上司の言い分

人事考課の結果を知らせるかどうか、悩みますね。知らせると落ち込む部下もいますから。それに、知らせると、その後他のチームの人々に「ひどい査定だった」とグチる者もいます。

知らせなくても、昇進・昇格時に、自分がどう評価されているかはわかると思います。評価に不満がある者は、その時期、私と目を合わせなくなったりして、変な雰囲気になります。

いまは、「知りたい者には説明するので、自分から言ってくるように」と告げています。聞きたいと言ってくる部下は半分ぐらいです。最初から対決姿勢で来る者もいるので、大変ですよ。こっちも手間をかけて説明するのですから、素直に受け入れてもらいたいものです。「納得いきません」と言うばかりでは、話し合いになりません。

それに、人事考課制度に関する文書はきちんと読んでおいてほしいですね。制度をよく知らずに苦情を言う部下が多いです。

もともと、会社が作った人事考課の基準があいまいなんです。そんな制度のもとで査定をするわけですから、本人が納得できる評価などなかなかできませんよ。

【部下に求めること】

*考課結果を知らせた際、いちいち落ち込まないでほしい

*他チームに考課結果のグチを言わないでほしい

*人事考課制度をよく理解しておいてほしい

*考課結果を聞きたいならば、素直に受け入れてほしい

部下の言い分

一番の願いは、きちんと見て評価してほしいということです。プレイングマネジャーを言い訳にして、部下のことをよく見ずに、適当に評価しているとしか思えません。

僕は、考課結果を教えてもらうようにしています。同僚の中には、「聞くとモチベーションが下がるから聞かない」という者もいます。その気持ちはわかります。ただ、僕は、どの項目で、どんな点がついているのか知りたいんです。

考課結果を聞く際には、いつも険悪な雰囲気になります。「どうしてその点数になるのですか」と聞いても、はっきりした答えは返ってきません。こっちは最初からケンカ腰なのではありません。説明に納得がいかないから、そういう雰囲気になるんです。

点数が悪いから納得しないわけではないんです。点数のよい項目でも、納得がいかない場合もあります。理由もはっきりしないまま「ここは高めにつけておいたから」と恩着せがましく言われるのはいやです。以前、実績が低かった時、意外に評価が低くなかったことがありました。その時思ったのは、「やってもやらなくても一緒なのか」ということです。そう考えたらモチベーションが下がりました。

考課結果について、他チームの人に不平を言ってしまうことはありますよ。気持ちが収まりませんから。不平を言うなというなら、納得のいく評価をしてほしいです。

【上司に求めること】

*部下をきちんと見てほしい

*納得のいく評価をしてほしい

*納得できるような説明をしてほしい

人事考課の結果をプラス材料にするために――

<上司への提案>

使いにくい考課基準のもとでつけた結果を部下に知らせ、納得を得ることは、大変なことです。とはいえ、知らせなければいいという単純な話でもありません。まずは、知らせること、知らせないことを比べてみましょう。

部下に考課結果を知らせる、知らせないメリット、デメリットは次のようなことです。

人事考課結果を知らせる

メリット

*緊張感を持って人事考課にあたれる

*一緒に前期を振り返ることで、課題を共有できる

*翌期に向けた意思一致をする機会にできる

デメリット

*知らせて部下が納得できないと上司部下の関係が悪くなる

*部下が多いと管理職の時間的・精神的な負担が大きくなる

人事考課結果を知らせない

メリット

*決定的に関係が悪くなるような場面を回避できる

*上司の査定後の負担が少ない

デメリット

*上司の人事考課に対する緊張感が薄れる

*振り返りと翌期に向けた意思一致ができない

理想論では知らせた方がよく、現実論では知らせることのリスクが気になります。トータルで考えると部下指導という意味で、知らせる方がよいでしょう。本人に続けてほしい行動を「強化」し、修正してほしい行動を「改善」する機会として、これ以上のものはありません。

プロ野球の選手に、評価結果を知らせなかったら、どうなるでしょう。ホームランを増やせばいいのか、打率を上げればいいのか、期待されていることがわからないまま来シーズンを迎えることになってしまいます。そうすると、チームの期待とは関係なく自分の考えでプレーします。それでは、勝てるチームができません。

手間はかかりますが、期のはじめに期待する行動を示し、期中は指導と記録を行い、事実をもとにした人事考課を行い、自信を持って部下に結果を知らせることができるようにしましょう。そして、翌期に向けて「なにをすればどう報われるのか」ということを確認しあい、モチベーションの向上につなげていきます。

人事考課は、上司の仕事の中でも、部下の生活に影響を及ぼす大きな仕事です。負担の大きい作業と思わずに、マネジメントのツールとして活用しましょう。

*自信を持って部下に知らせることができる評価をする

*考課結果を知らせながら、前期に対する認識を一致させる

*翌期に向け、なにをすればどう報われるか共通認識を持つ

<部下への提案>

人事考課について、不満を持つのは理解できます。何をもとに、どう評価しているのか、部下の側からはよく見えません。そのような状況で、考課結果を知らされ、素直に聞けと言われても納得できないでしょう。ただ、考課について受け身でいては、納得のいかない状況が続いてしまいます。

まず、人事考課制度を正確に把握しましょう。「どうせ会社側の都合で作ってあるのだろう」と最初から批判的な目で見るのではなく、客観的に理解します。そこには、あなたが参加しているゲームのルールが書かれています。まずは、理論武装です。

そして、上司から人事考課の結果を聞けるならば、教えてもらいましょう。既についてしまった評価を変えることはできませんので、結果はとりあえず受け入れます。ポイントはその後です。「来期、どのような行動をすれば、どう評価されるのか」をしっかりと聞いておきましょう。

上司と確認した行動をして、それでも評価が低ければ大いに文句を言ってよいでしょう。でも、そうはならないと思います。上司も「こうすれば評価する」と言った行動を部下がしているのに低い点はつけられないものです。特に、実績以外の点については、上司の主観の入る余地が大きいので、こういうことをやっておくと、評価は上がります。

テクニックで評価を上げようという話ではありません。上司の期待を知り、その方向で努力することで、正しく評価されるという、しごくあたりまえな状況を作るためです。そうすれば、評価が上がるという結果がついてきます。

*会社の人事考課制度をよく理解する

*人事考課結果を聞けるならば、教えてもらう

*来期、どのような行動をすればどう評価されるのかをきちんと確認しておく

人事考課の結果を共有する場は、上司と部下が未来に向け、同じ方向で歩むためのきっかけにできる場です。互いにうまく活用しましょう。

[日経Bizアカデミーの記事を再構成]

濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント
1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。

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