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新たな方針をどのように策定すべきか

新年度を迎えると、会社としての方針、部としての方針が出ます。そして、もう一つ、部下が気にする方針があります。それは、自分のチームについて、直属の上司が出す方針です。

しかし、会社と部の方針を伝えるだけで、チームの方針を出さない上司もいます。また、抽象的な精神論を述べ、部下をがっかりさせる上司もいます。

上司としてはチーム方針を表明することで、部下のモチベーションを高めたいところですが、なかなかそうはいっていない様子です。

今回は、チーム方針について考えます。

上司の言い分

部下から「チームの方針を出してほしい」とよく言われますが、なぜそんなにこだわるのでしょうね。求めるわりには、方針を伝えてもあまり反応がありません。それに、方針を覚えている様子も意識している様子もありません。

毎年、上に出した方針を部下にも伝えているのですが、中には私が出した方針について「抽象的だ」と批判する部下がいます。また、方針は一貫させたいので、前年と同じものを出すと、「去年と同じですか」と不満げに言われます。逆に、新鮮味を出そうとすると「コロコロ変わる」と言われます。なにを期待しているのかよくわかりません。従うそぶりもないのですから本当に必要なのか疑問ですね。年度が変わっても、自分たちがやるべきことは同じで、それはみんな、わかっているはずです。

いつも、方針が出るのが遅いと言われますが、会社や事業部の方針が出るのが遅いんです。上の方針が出なくては、チーム方針は出せません。そういうことは理解してほしいですね。

そろそろ出さないとまた部下から聞かれますから、今期も方針は出しますが、反応は薄いんでしょうね。

【部下に求めること】

*方針を求めるなら覚えて意識してほしい

*出した方針を批判的に見ないでほしい

*方針を出す時期について理解してほしい

部下の言い分

うちの上司の方針はいつもパっとしません。「目標必達!」とか「あたりまえのことをあたりまえにやる」とか「基本の徹底」とか精神論が多いんです。今年度は「One for All All for One」というもので、いまさらという感じがしました。

上司の方針を聞くと、あまり考えていないんだろうなと思います。方針が前年と同じとか、コロコロ変わるというより、きちんと考えずに出すのがよくないと思っているんです。

年度方針のことだけを言っているのではありません。上司には2年、3年先の構想を持ち、語ってもらいたいんです。目先の数字のことばかり言われても、モチベーションは上がりません。

それに、方針が出るのが遅いです。来期の個人目標を設定する時期になってもチーム方針が出てこないこともありました。まあ、チーム方針が出たとしても抽象的なことが多いので、目標設定にはあまり支障はないのですが……。上司は、「上の方針がまだ出ていないからチーム方針が出せない」とよく言いますが、将来の構想をもとに、先にチーム方針を内示してくれればよいと思います。

こんな状況ですので、上司の方針にはあまり期待していません。

【上司に求めること】

*よく考えて方針を出してほしい

*将来に向けた構想を持っていてほしい

*方針は早く提示してほしい

チーム方針を共有するために

本来、方針はチームの活動のもとになる大切なもの。しかし、そうはなっていない様子です。方針のあり方、共有の仕方について提案します。

上司への提案

上の方針がなかなか出てこず、短期間に方針を考えなくてはならないのはよくわかります。また、部下は方針を求めるわりに、何を言っても反応しないことも確かです。方針を出すことに空しさを感じることもあるでしょう。しかし、方針を出すことはマネジャーにとって重要なアクションです。部下の心を動かす方針について考えてみます。

部下の心を動かす方針の要件は次の3つです。

1.中期構想に基づくもの

チームとして、3年先までの構想は練っておきたいものです。1年という期間で考えてしまうとできそうなことは限られる気がしますが、3年あれば改革的なこともできるはずです。3年後の到達点を見据え、1年の構想を位置づけましょう。

例えば、営業部門で「3年後には全業種のトップ3企業をすべてクライアントにする」のような構想を持ったとします。その1年目は「製造業、情報通信産業、建設業、不動産業のトップ3をクライアントにする」という方向が考えられます。そうすると、個々の営業マンがそれらの業界に対してアプローチする活動は、チームの3年後の到達点に向けた重要な活動と位置づけられます。

経理部門ならば「3年後、毎月1日の朝に、経営の意思決定に必要な情報がすべて提示できる体制を確立する」、1年目は「1日に管理会計データが出せる体制を確立する」といったようになります。いずれの場合も、2年目になにをすべきか、早い段階で示せるでしょう。

2.目標と方針の連動

前述の構想は、方針というより目標に近いものです。ただ、これを方針としても問題はないはずです。もし、目標と方針の両方を示す必要があるならば「この業界のトップ3をクライアントにする」という目標に加え「全メンバーが担当を越えた協力を行う」というような方針を添えるとよいでしょう。目標と方針は連動させた方が、理解されやすいものです。

3.言葉を選ぶ

部下を動機付けるような方針には、よく出てくる言葉があります。「No.1」「オンリーワン」「初の」「すべて」「全員が」「世界に」といったものです。例えば、ある金融機関のチーム方針に「全員が社内でNo.1の分野をつくる」というものがありました。このチームのメンバーは「うちの方針はハードルが高いので大変だよ」と他チームの人に言っていましたが、その表情はうれしそうでした。それを聞いていた他チームのメンバーは「うちの方針は抽象的だからなあ」とうらやましがっていました。

なお、方針を決める前に、会議などの場で、メンバーの意見収集をしておくのもよい方法です。最終的に決めるのは管理職の役割ですが、メンバーの意見を反映できるならば、受け入れられる可能性が高くなります。

*3年先までの中期構想をもとにして方針をつくる

*目標と方針は連動させる

*部下がワクワクするようなキーワードを入れる

部下への提案

方針は上司がつくり、部下はそれを受け入れざるを得ない、という構図は確かにあります。しかし、上司の方針を聞いてがっかりし続けるのもよくありません。部下の立場でできることを考えましょう。

最も望ましいのは、上司から方針について相談されるような存在になることです。上司が方針を決める前にこちらから「来期の方針の件で事前に聞きたいことがあるので時間をとってほしい」と持ちかけます。

その話し合いの中で、上司の腹案を聞き前向きな意見を言う、腹案がないならば先手を打って提案するといった仕掛けをします。一度これをやっておくと、次回から相談されるようになるでしょう。

上司は部下に対して「ひとつ上の視点で見てほしい」と期待するもの。その期待に応える格好の場面です。また、上司から相談されるような存在になれば、他のメンバーからも一目置かれ、「上に伝えてほしい」と希望や不満を言われるようになるでしょう。そういった情報提供もできるようになれば、上司の補佐役として、地位も高まります。

もし、「自分はそんなことができる立場ではない」ということでしたら、リーダー格のメンバーを通じて、上司に希望を伝えるという手もあります。直接話すのに比べれば、影響力は小さいですが、なにもしないよりはマシです。

*上司から方針について相談される立場になる

*メンバーの意見を聞いておいて前向きな情報提供をする

*立場によっては、リーダー格のメンバーを通じて上司に希望を伝える

方針のもとにひとつになれるチームは、上司にとっても部下にとってもよいものです。そんなチームを目指しましょう。

[2013年4月17日掲載の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント
1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。

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