自分で判断or上司に相談のボーダーラインはどこか?

濱田秀彦 株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント

濱田秀彦 株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント

部下にとって、相談は悩みのタネ

「上司から『勝手に判断するな。事前に相談しろ!』と言われたので、なんでも相談するようにしていたら、こんどは怒りだして『そんな細かいことまでいちいち聞くな!』と言われた。いったい自分はどうしたらよいのか」

部下層の方からよく聞く悩みです。本来、困ったときに上司が相談に乗ってくれればありがたいはず。それが、そうなっておらず「相談」が、報・連・相の一環として上司から強要されている様子です。

また、相談したことを後悔するようなリアクションが返ってくることもあり、部下にとって相談は、悩みのタネになっているようです。

中でも、部下の皆さんが困っているのが、自分で判断すべきこと、相談すべきことの境界線がわからないということ。今回は、相談をめぐる対立がテーマです。

上司の言い分

事前に相談してくれれば他にやりようもあったのに、勝手に自分で判断して失敗する。そんな部下を見ると腹が立ちますよ。重要な案件やプロジェクトでそういうことがあると、部門の業績に響きますから、こちらも甘い顔はできません。

一方で、なんでもかんでも「どうしましょう」と聞いてくる依存的な部下も困ります。管理職は細かいことにいちいち首を突っ込んでいるヒマはないんです。

いま、私が言ったようなことを「矛盾している」と感じる部下もいるようですが、わかっていないですね。私は、自分で判断すべきことと、事前に相談すべきことの区別をしっかりしてくれと言っているんです。なにも矛盾していません。

以前、相談すべきことのラインを示してほしいと言われたことがあります。でも、それは状況に応じて、総合判断すべきことで、単純にマニュアル化できる話ではありません。上司の視点で考えてみればわかるはずです。

【部下に求めること】

*重要案件で大きな判断をする際は事前に相談してほしい

*細かい話は自分で的確に判断して進めてほしい

*相談すべきこと、自分で判断すべきことの区別はしっかりしてほしい

部下の言い分

僕が自分で判断して結果が悪いと上司は「なんで事前に相談しなかったのか」と責めます。でも、それは結果論じゃないでしょうか。結果がよいときには、そういうことは言いません。器の大きい上司だったら、結果の良しあしに関係なく、部下の判断を支持してくれるはずです。もっと任せてほしいですね。

ただ、うちの上司にそれを求めても仕方がないので、こまめに相談するようにしたら、今度は「いちいち聞くな」です。やっていられません。

もともと上司にはあまり相談はしてきませんでした。相談しても、よいアドバイスや支援をしてくれることは少なく、面倒くさそうに応じられることさえあります。よいアドバイスがもらえるならば、言われなくても、もっと相談しますよ。

相談すべきこと、自分で判断していいことのラインは、きちんと示してほしいです。あいまいにしておいて、部下を責めるのは後出しジャンケンのようでフェアではないと思います。

【上司に求めること】

*任せて、部下の判断を支持してほしい

*相談したらきちんと応じてほしい

*相談すべきこと、判断してよいことのラインを示してほしい

相談を互いにメリットがあるものにするために

上司への提案

重要案件で、部下が独断で手を打ち、悪い結果が出れば「なぜ相談してくれなかったのか」と思う気持ちはわかります。他にもっとよい選択肢があれば、当然そう考えるでしょう。ただ、後になって部下を責めてもなにも生まれません。

重要案件については、事前に判断のポイントについて話し合っておき、どの状況で相談すべきか、部下と共有しておくことが大切です。例えば、コスト、品質、納期を左右するような判断をする際には協議することにしておくなどです。

部下が判断してよい範囲、上司に相談すべき範囲を単純に決められないことは確かです。しかし、ラインを出さず、部下の感覚に任せていては事態は好転しません。アバウトでもよいのでラインを提示した方がよいでしょう。

例えば、その判断によって生じる影響が利益額に換算して10万円までならば、部下が判断してよく、10万円以上の影響が出るなら相談をするというやり方です。さらに、部下のポジションや成熟度に応じて、判断してよい範囲を広げていくとモチベーションの向上につながります。なお、重要案件か否かのラインも、業績への影響度をもとに、金額で示しておくとよいでしょう。

また、部下にとって相談したくなる上司でいることも大切です。部下が相談に来たら、まずは1分間、口をはさまず聞いてください。1分間話せば「よく聞いてもらった」と感じるものです。

アドバイスは、すべて自分で答えるのがよいとは限りません。「それならば、技術部の山田君に聞いてみるといいよ」というようにするのも効果的です。あるいは、部下が自ら解決策を考えるよう「次の一手はどう考えている?」と聞いてみるのもよいでしょう。その場合は、「どんな手助けができるか?」という質問もして、支援につなげていきましょう。

*重要案件は、どの状態になったら相談すべきかポイントを決めておく

*相談する、自身で判断する基準を金額換算で決めておく

*相談される上司でいられるように応じる

部下への提案

どこまでが、自分で判断してよく、どこからが相談すべきなのかはわかりにくいものです。それは、上司が示すべきものですが、ラインを明示しない上司を批判しても、状況は変わりません。放っておいて苦労するのは自分です。

大きな方向性は「重要なことは相談、重要でないことは自分で判断」です。重要か否かは部門の業績に対する影響度で測ります。この点は、上司と話し合っておくとよいでしょう。一番わかりやすいのは金額換算です。「どこから相談すべきなのか」という問いより「どの程度の金額から重要案件と考えればよいか」、「どの程度の金額から重要な判断と考えればよいか」という問いのほうが上司も答えやすいはずです。

重要度がイメージできれば、あとは対処法です。重要度が大きい案件に関し、コスト、品質、納期を左右するような判断については、相談をします。これは、中間報告も兼ねることになり、上司も助かります。

重要度が低いものについては、自分で判断してよいのですが、もし、迷うことがあれば提案付きの相談をするとよいでしょう。「こうしようと思うのですがどうでしょう」というように聞きます。単に「どうしましょう」と聞くと「細かいことをいちいち聞くな」という話になりますが、提案付きで相談すれば、そうは言われません。応じる上司側の負担が減るからです。また、これは主体的な自分を表現することにもつながります。

相談は「問題解決のために、他者に意見、判断を求めるアクション」です。ただ、そこにとどまらず、さらに上を目指しましょう。例えば、「ご相談ですが」と相談の形をとりながら上司に意見具申をする、「相談があるんだけど」と他部署を巻き込んで大きなプロジェクトを動かすなど、「しかける相談」をしましょう。

*重要度で相談すべきか自分で判断するかを見極める

*提案付きの相談を行う

*相談の形をとったしかけをする

上司、部下、お互いにメリットが生じるような相談を目指しましょう。

[日経Bizアカデミーの記事を再構成]

濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント
1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。

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