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毎月分配型ファンド、選ぶなら「2つの常識」持とう QUICK資産運用研究所 北澤千秋

2016/6/22

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 資産形成や運用の手段には不向きだと、プロの運用アドバイザーなどにはあまり評判が芳しくない毎月分配型投資信託。しかし今も個人投資家の人気は絶大で、純資産総額は34兆6000億円と国内追加型株式投信(ETF除く)の6割近くを占めている。

 高い分配金利回りに惑わされている人が多そうだが、退職世代を中心に、毎月の生活費を補うために分配金が欲しいというニーズが根強いのも事実のようだ。ではどうしても毎月分配型を購入したい場合、何に注意して選んだらいいだろうか。

■高利回りのカラクリは元本取り崩し

 毎月分配型の投信が資産運用に不向きといわれるのはなぜか。まず指摘できるのは、中長期で資産を増やすための原動力となる「複利効果」が薄まる点だ。

 複利効果とは時間の経過とともに運用の成果が投資元本に上乗せされて、膨らんだ元本が生む運用収益がさらに増えていくという好循環だ。しかし、毎月分配型投信はたとえ運用が好調でも、その成果を毎月、分配金として吐き出してしまうため、この複利効果が生かされない。

 毎月分配型の人気が広がるとともに投信業界で始まったのは、どれだけ多くの分配金を出すかという競争だ。分配原資を確保するため、株式や外国債券での運用に加え、リスクが高い高金利通貨やデリバティブ(金融派生商品)にも投資する2階建て、3階建てといわれる投信が流行した。

 これらは仕組みが複雑なだけに、どんなリスクがあるかがわかりにくいうえ、運用管理コスト(信託報酬)も高くなりがちだ。高コスト・高リスクの投信は、中長期の資産形成にはあまり向かない。

 ここ数年は、元本を取り崩しながら高額の分配金を払い続けるファンドが目立つ。資金流出に直結する分配金の引き下げは避けたいが、運用の成果(配当収入や売買益)だけでは分配金を賄えないというファンドの苦肉の策だ。

 元本を取り崩すと基準価格が下がるため、過去1年の分配金総額を直近の基準価格で割った「分配金利回り」は上昇する。20%、30%という高利回りファンドもあるが、基準価格の騰落に分配金を加味した「分配金再投資ベースのリターン」をみると、マイナスのファンドが大半だ。高い分配金を毎月払い続けるために投資元本を食いつぶし、しかもトータルでは損失が生じているのだから、まさに元も子もない。

 長々と毎月分配型投信のマイナス面を書いてきたが、それなりに合理性があると思われる利用法もある。生活費の補填などで資金の一部を毎月取り崩しつつ、運用は継続して資産の目減りペースをできるだけ緩やかにしたいという場合だ。

■毎月の分配金、メドは「30円」

 例えば1000万円の資金を運用せずに月10万円ずつ取り崩すと8年4カ月でお金は底をつくが、年利5%で運用しながらだと資金の寿命は11年に延びる。退職世代などは、毎月分配型投信にそんな役割を期待している人も多いだろう。

 では、この「運用しながら取り崩す」のに適した毎月分配型投信はどんなファンドだろうか。まずは表Aを見てほしい。独立系ファンドコンサルタントの吉井崇裕氏が選んだ5本だ。

 吉井氏は毎月分配型投信の選び方について、「2つの常識を働かせるのが大事だ」と指摘する。

 最初のポイントは分配金の額。今のような超低金利の時代、インカムゲイン(利子や配当収入)を原資に毎月50円以上の分配金を出すのは難しく、「30円程度が一つのメドになる」という。

 基準価格が1万円で毎月の分配金が30円だとすると、分配金利回りは3.6%。いまどき国内で年利回りが5%を超える金融商品を探すのはなかなか難しく、2ケタ超となれば何か仕掛けがあるとみるのが妥当だ。毎月分配型投信についても同様に考えるべきだろう。

 次にチェックするのは基準価格。5000円を下回っているようなファンドは除外した方がいいという。リーマン危機のような厳しい市場環境でも、株式や債券の価格変動だけで基準価格が5000円を下回るのはまれだからだ。基準価格が大幅に下がったファンドは、高額の分配金を払い続けるために元本を取り崩している疑いが濃厚になる。

 一見して分かるように、吉井氏が選んだ5本のファンドには国内の株式や債券で運用する投信は入っていない。一定の分配金を継続的に出すには安定したインカムゲインが必要だが、日本株の配当利回りや国内債券の流通利回りは低すぎて、十分な分配金原資を確保しにくいからだ。投資対象は世界の高配当株や高利回り債券が中心になる。

 新興国株は配当利回りが高いが、その分、価格変動リスクは大きい。例えば新興国高配当・成長株ファンド(JPモルガン)は3年リターン(年率)がマイナスだ。ただ、このファンドは運用成績が好調な時はボーナス分配金を出す。吉井氏は「短期的に基準価格がブレてもいずれ回復する期待がある」と主張する。

■支払い原資の健全性を見分ける

 運用期間3年以上、純資産総額100億円以上などで絞り込んだ毎月分配型投信を対象に、QUICK資産運用研究所が試算した「分配金健全度」で選んだ主なファンドを挙げた(表B)。分配金健全度とは、月々の分配金をどれだけ分配原資の中の「配当等収益」で支払ったかを表す。

 投信の分配原資には決算期間の運用の成果である(1)配当等収益(2)有価証券等売買利益と、過去の蓄積である(3)分配準備積立金、そして新規の資金流入がもたらした(4)収益調整金がある。

 このうち、(3)と(4)を分配金に充てるのは元本の取り崩しにつながり好ましくない。(2)は運用の成果ではあるが、その時々の市場環境でぶれるため、安定的とは言い難い。結局、持続的に分配金を払い続ける原資としては(1)の利子や配当などのインカム収入がふさわしい。

 ただし、ここにも落とし穴があって、個別の株式や債券の代わりに複数のファンド(外国籍投信の例が多い)を投資対象としているファンド・オブ・ファンズと呼ばれるタイプでは、投資先ファンドの上げた売買益を配当として吸い上げている例が少なくない。

 この場合、見かけは(1)の配当等収益でも、実質的には(2)の有価証券等売買益に等しい。これを見分けるには、個別に各ファンドの運用報告書などを読み込むしかない。今回の試算では、ファンド・オブ・ファンズ型の投信は除いた。

 表Bのファンドはいずれも分配金健全度が100%を超えており、集計した決算日まで1年間の分配金はすべて(1)の配当等収益で賄われていた。過去3年のリターン(分配金再投資ベース、年率換算)が3%以上のファンドに絞っており、運用成績も悪くはない。ただし、月々の分配金は20~30円で、分配金利回りもせいぜい4%程度だった。

 やはり毎月分配型投信を買うときは、金融商品の常識では考えられないような、多額の分配金や高利回りは期待してはいけないようだ。

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