「保険の相談はFPに」とは限らない保険コンサルタント 後田亨

この連載では一般のお客様との対話を通して「実は間違っている保険の常識」を考えます。今回は、いわゆる独立系ファイナンシャルプランナー(FP)による保険相談を取り上げます。相談に来られた会社員の男性Kさん(33)との会話です。

後田(以下、U):「『特定の金融機関などに属していない独立系FPが相談に乗ります』という案内を見たら、どんな印象を持たれますか」

Kさん(以下、K):「中立的なアドバイスをしてもらえそうな感じですね」

U:「相談が有料でも構わないですか」

K:「まあ、有益な情報に対してお金を払うのはしょうがないですよね。実際、お金を払ってFPに相談するのが一番なのでしょうか?」

U:「私も有料相談をやっていますが、正直『無料よりマシな方法』という認識なんです」

K:「なぜ、一番だといえないんですか」

U:「例えば、あまり感心できないような保険に加入するよう誘導されても、相談者にはわからないと思うんです」

K:「本当ですか? 著書がある人やいろんな媒体に出ている人だと信じられる気がしますけど」

U:「ところが有名なFPでも『手数料が高くてお金が増えにくい投資信託』で運用する保険で資産形成することを推奨していたりします」

K:「……。誰を信じたらいいんですか?」

U:「誰も信じないことです。そもそも、アドバイザーの信頼度を見わけるには、アドバイザー以上の知見が必要になりますよね」

K:「まあ、そうですけど」

U:「信頼できる相手に確実に出会う方法はないとしても、失敗を予防しやすい人の選び方はあると思います。そういう意味で、ベストではなく“マシ”なんです」

K:「例えば?」

U:「まず、商品販売や顧客紹介によってコミッション(手数料)を得ていないことです」

K:「保険を売っていないFPのほうがいいと。でも、相談者の中には保険に入ったほうがいい人もいるんじゃないですか?」

U:「おっしゃる通りです。だからといって、相談者の保険料負担が大きくなればなるほど、得られる手数料が多くなるという人に、加入すべきかどうかの助言を求めるのは危険でしょう」

K:「この人に聞けば間違いない、という答えを知りたいんですけどねぇ」

U:「それは私も知りたい(笑)。ただ、誰だって間違うことはあると思っていたほうが痛い目に遭いにくいでしょうね」

K:「他に留意点はありますか」

U:「代理店手数料などのコストについてきちんと説明する人かどうかは大事だと思います。先ほどお話しした投信で運用する保険などは、手数料の高さが大きな欠点です。販売側にとっては利益相反であっても、ちゃんと手数料について説明するかどうかは、顧客本位かどうかを見るポイントでしょう」

K:「でも、保険ってコストだけでなく担当者のアフターフォローとか安心感も大事ではないですか」

U:「確かに。ただ、そういうことは、営業の人がいくらでも語ってくれますよ。私は営業現場できちんと語られていないコストについて、説明があるかどうかのほうが重要だと思います」

K:「営業の人が語っていないことって、他にもありますか?」

U:「貯蓄商品の返戻率に関する説明でしょうね」

K:「どういうことですか」

U:「中途解約時や満期時に払い戻されるお金の額を、それまでに払い込んだ保険料総額で割って『加入からX年後の返戻率は110%です』といった説明がよくされます」

K:「何か問題がありますか」

U:「10年後、20年後、30年後の返戻率がいずれも110%だったとしたら、ベストとワーストはどれですか?」

K:「10年後がベストで30年後がワーストですね」

U:「そうですよね。つまり返戻率は貨幣価値が変わる可能性、満期までに解約して元本割れする可能性など不確実な要因が増える分、遠い将来になればなるほど、評価を厳しくする必要があります。でも、このことはほとんど語られていないと思います」

K:「そう言えばそうかもしれません」

U:「なので、『返戻率が100%を超えていても、果たして時間の経過やコストに見合うだけの返戻率なのか』という見方も教えてくれる人がいいと思います。コストは確実なマイナス要因ですから。私も営業マン時代には額面通りの評価をしていたので、恥ずかしいんですけどね(苦笑)」

後田 亨(うしろだ・とおる) 大手生命保険会社や乗り合い代理店を経て2012年に独立。現在はバトン「保険相談室」代表理事として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。著書に「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)や「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」「保険外交員も実は知らない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。公式サイトはhttp://www.seihosoudan.com/とhttp://www.yokohama-baton.com/

生命保険は「入るほど損」?!

著者 : 後田 亨

出版 : 日本経済新聞出版社

価格 : 1,620円 (税込み)


注目記事