どこでもあり得る「震度7」 地震保険を知る

日経マネー

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契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。今回は、地震で被災した際に頼りになる地震保険の役割を改めて考える。

東日本大震災から5年、我が国は再び大地震に見舞われた。今回の熊本地震では、2度にわたり震度7に襲われるという、観測史上類のない事態になっている。

「経験則にない地震であり、今後の地震活動を見通すのは難しい」と気象庁。ある専門家は、「震度7の揺れは、全国どこにいても遭遇する恐れがある」と指摘する。

地震は私たちから家族、住まい、コミュニティー、仕事……と、様々なものを奪う。それでも暮らしは続く。災害を生き延びた後、私たちは「生活再建」というもう1つのハードルを越えなくてはならない。

日本に住んでいる限り、地震で被災するリスクを無視した生活設計は、もはや成り立たないと心得た方がいいだろう。

被災後は「自力再建」が基本

住まいや家財を失う事態に陥れば、その後の生活再建では大変な出費が待っている。

持ち家の再建・修繕には、数千万円の費用が必要になることもある。新たな暮らしを始めるに当たって、衣類や寝具、家電、家具など最低限必要なものも出てくる。

そうなった時、我が家はどうなるのかと考えてみてほしい。

被災後の費用を、国や自治体の支援に期待する人は多い。ただし、支援は限定的だ。主力は「被災者生活再建支援金」。持ち家・賃貸を問わず、住まいが全壊・大規模半壊した世帯に最高100万円が、住宅再建時にはさらに最高200万円が支払われるが、そこまでだ。

そもそも日本政府は、被災者の私有財産を税金で補填する立場を取っていない。被災後の生活は自力再建が基本とされ、自助努力が前提になっている。

地震保険金が再建を後押し

そこで、有力な備えとなるのが「地震保険」だ。東日本大震災では約1.2兆円の地震保険金が支払われ、発生した2011年には保険契約数も大きく伸びた。そして今回の熊本地震でも既に1200億円以上が支払われている。

注:損害保険料率算出機構の資料を基に作成

地震保険は、地震保険法に基づく官民一体の制度。通常の保険とは異なり、保険金の支払いは国が保証する。生活者のための制度であり、地震による液状化の恐れがある地域や、耐震性の不十分な古い木造住宅などの被災リスクが高い案件でも、契約は排除されない。

地震保険料が高いという人がいるが、実際は低水準に抑えられている。保険料が最も高い東京都の木造住宅でも、全損で1000万円の保険金を受け取るための保険料は、年間3万円程度にすぎない。

そもそも、損害保険会社は国策に協力する立場であり、地震保険の販売では利益を得ていない。保険料の大半は、将来の保険金支払いのために積み立てられている。地震国で暮らす私たちのための、相互扶助の仕組みなのだ。

保険会社の立ち合い調査から数日で支払われる保険金の使い道は自由。地震保険は、被災後の生活再建を推し進めるための、いわば“パスポート”となる。

地震は、いつ・どこで・どのような規模で起きるか誰にも分からない。だからこそ、最悪の事態にも対抗し得る備えが必要といえる。

清水香(しみず・かおり)
生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2016年8月号の記事を再構成]

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