AKB総選挙、熱狂の新潟市内 見逃せない経済効果
指原莉乃(HKT48)の2年連続1位で幕を閉じた「AKB48 45thシングル選抜総選挙」。会場となったハードオフエコスタジアム新潟のある新潟市内には大勢のファンが訪れ熱気に沸いた。AKBの選抜総選挙は地方都市にどれだけの経済効果をもたらすのか、現地を歩いて検証した。
18日朝、選抜総選挙に立候補した272人全メンバーのポスターがずらりと並べられた新潟駅南口は、お気に入りのメンバーを撮影するファンで熱気に包まれた。
「今日は燕三条に泊まります。日曜は日本海を見て観光してから帰るかな」。静岡県から初めて新潟に来たという、35歳の会社員男性は駅前で語った。選抜総選挙の新潟市開催が決まった3月に宿を取ろうとしたら新潟市内は予約がいっぱいで、上越新幹線で隣の燕三条駅の宿に決めた。「案外近いんですね。今度はスキーやスノーボードを遊びに来るかな」
東京から新潟までは上越新幹線に乗れば約2時間。時間的には都内から奥多摩町や埼玉県秩父市などへ行く場合と変わらない。「首都圏の人は新潟が近いことを知らない。もっとアピールしないと」。去年誕生したAKB48の姉妹グループで、新潟県内を拠点とするNGT48の劇場支配人、今村悦朗氏は今年1月の劇場開業後、市幹部に発破をかけ続けてきた。
東京からの近さを情報発信する好機とみて、選抜総選挙開催にあたって市も全面協力。選抜総選挙のポスターをはれるようにしただけでなく、通路のスピーカーからはAKB48関連の楽曲を流し、階段の蹴上がりを総選挙関連の広告に塗り替えるなど、AKB48関連の情報で埋め尽くした。のどかな水田風景が広がる、会場のハードオフエコスタジアム新潟まで向かう歩道には総選挙を告知するのぼりが数メートル間隔で立てられた。
会場の外にはAKB48などの関連グッズの販売ブースが並ぶなか、タレかつ丼やへぎそばなど地元グルメの屋台にも長蛇の列ができた。県もPRブースを設け、佐渡をはじめとする県内の観光情報を積極的に伝えた。県のブースに出展した胎内市観光協会のスタッフは「予想以上の集客力。集まった人の反応もよかった」と、今回をきっかけにリピーターが続くことに期待を示した。
民間も後押しした。会場は新潟駅から4キロメートル以上離れている。旅行会社が駅と会場の間を往復するシャトルバスを運行し、飲食店が集まる新潟駅周辺にファンを誘導。新潟市南商工振興会は駅周辺で深夜営業する飲食店の情報を掲載したグルメマップを配布した。宿泊客や飲食店で夜を明かす人が新潟駅周辺に集結。新幹線の始発が出る時間まで営業した飲食店も多かった。
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地方都市にとってイベントがもたらす経済効果は無視できない。昼のコンサートと夕方以降の総選挙の開票イベントを見に新潟市内に延べ5万人以上が来たとみられる。総選挙の会場に来た3万人のファンのうち宿泊したのは半分近く。新潟市は展示会やイベントの効果を測る観光庁のソフトを使って経済効果を測定。総選挙に伴う新潟県内への経済波及効果が15億6000万円に上り、うち11億円が市内への波及効果と試算した。
新潟市で盛り上がったのは「下地」ができていたのも一因だ。
15年9月に発表された「全国都道府県別魅力度ランキング」。新潟県が14年の35位から突如、19位に急浮上したのだ。ブランド総合研究所(東京・港、田中章雄代表)が全国約3万人を対象に都道府県と市区町村の魅力度などを尋ねる「地域ブランド調査」の結果だ。
この調査で「地域の魅力度」について「とても魅力的」から「全く魅力的でない」の5段階で聞いて分析したところ、新潟県を「魅力的」(「とても魅力的」と「やや魅力的」の合計)と答えた20代の割合が14年度の16.1%から15年度は51.7%へと急伸。「NGT48が新潟市に誕生してニュースが全国に伝わり、若い世代の注目度が高まった」(田中氏)
今回の総選挙で初めて新潟に足を運び、食などを通じて新潟の魅力を再認識した人も多い。足を運んでくれた人をリピーターにつなげていけるかは、今後の官民挙げての取り組みにかかっている。
(竹内太郎、村野孝直、武藤邦雄、皆上晃一)
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