――孫さんとはM&A(合併・買収)の方針も全然違いますね。
「私は事業家の孫正義には興味はあるけど、投資家の孫には興味はない。以前の話だけど、『(ソフトバンクの米携帯電話子会社)スプリントを売るなら、私は社外取締役をやめる』と話したことがある。やっぱり、孫さんには事業家として社会に貢献してほしい。柳井さんも同じ考え方じゃないかな。お金を払って投資するのも貢献といえるけど、中国の(インターネット通販最大手)アリババ集団だって馬雲(ジャック・マー)氏が育てた会社だ。投資して当たった、ということに私は価値を見いだせない。それでは歴史に名を残すことはできない。私は経営のことならアドバイスできるけど、投資のアドバイスはできないよ」
■M&Aは100%成功
――永守さんは50件近いM&Aを手がけ、そのほとんどが成功したといわれています。なぜうまくいっているのですか。
「手がけたM&Aは全部成功した。100%だ。リストラもしていないし、赤字は1社もない。海外も全部だ。理由は、3つある。1つ目は当たり前の話だが、高く買わないこと。去年も小さい規模のものしか買っていない。大きい案件が8社あったんだけど、全部見送った」
「『買いたい、買いたい』という気持ちでいかないことだ。何年でもずっと待つ。私が最近買った会社でも、5年、10年待っていたものもある。2つ目は要らないものを買わないこと。これも当たり前だと思うかもしれないが、結構みんな要らないものを買っているよ。シナジーのあわないものは買ってはいけない。お城の石垣にたとえれば、大きな石だけで積もうとしてうまくいかない。地震がくると、がらっと崩れてしまう。よく見ると大きな石の間に必ず小さな石が敷き詰めてある。みんな、そういう小さな詰め物の買収をおやりにならない」
「3つ目は、シナジーを出すこと。今の事業に全然関係のない、例えばホテルを買うとかはない。私は日本電産という会社がある場所から、ボートで行けたり、陸続きで行けたりする会社を買うんです。間違いやすいのは、飛行機や大きな船でないと行けない場所にある会社を買うこと。パズルを埋めるように、陸続きにしなければ、買収なんてうまくいきません」
■100年後も残る会社にするために
――大胆に見える永守さんの戦略は、緻密な計算もあるんですね。
「買収した会社のなかに100年以上続いている会社が3、4社ある。こういう会社を観察すると、なぜ続いてきたのかということがよくわかる。100年後も生き残るためには繊細さと、長期的な思考がなければ絶対に無理だ。(経営幹部育成のための独自の)グローバル経営大学校も、会社を100年続けたいと考えなければそもそもつくらないよ」
「事業家にとって一番大切なことは、会社を潰してはいけないということ。会社を買って、『もうかったから、さよなら』なんてだめだ。お客様も株主も大事だけど、一番大切なのは従業員です。従業員を大事にできない経営者はだめだよ」
1967年職業訓練大電気科卒。73年日本電産を創業し、社長に就任。2014年から現職。「【新装版】奇跡の人材育成法」(PHP研究所)など、著書多数。71歳。
(代慶達也 松本千恵)