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リーダーのマネジメント論

孫さん柳井さん私「大ぼら3兄弟」最後に生き残るのは 日本電産会長兼社長 永守重信氏(中)

2016/6/21

 日本電産会長兼社長の永守重信氏。ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏とは盟友であり、ライバルです。実際、永守氏と柳井氏はともにソフトバンクの社外取締役を務めるほどの間柄です。この3人に共通するのは、あまりにも高い経営目標を掲げること。それゆえ3人は「大ぼら3兄弟」と呼ばれています。果たして3人のうち、最後の勝者は誰となるのでしょうか。

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■100年続く私の会社

――永守さんと、柳井さん、孫さんの3人は「大ぼら3兄弟」ともいわれていますが、一番の大ぼら吹きは誰ですか。

 「それは孫さんでしょう。私らはとても追いつけない。(時価総額)100兆円、1000兆円など想像もできない。しかし、我々3社のなかで、『100年先も残っているのはどこか』と言ったら私の会社だと思うね。ほらの大きい順に先に潰れると思ってる(笑)。3人のなかでは、私が一番ほらが小さいと思うからね」

日本電産会長兼社長の永守重信氏

 「我々メーカーは、ほらの吹き方にも限界がある。ほらにもいろんな種類があるんです。私らは実現不可能なことは言わないし、言っても通じない。工場をつくり、工場長や技術部長を配置して――とやらなければならないので、簡単にはできない。でも孫さんの会社なら、10兆円の会社をパッと買える。柳井さんの会社も、ほかの会社に商品を作らせて世界中で売っている」

――71歳の永守さんから見て孫さんは一回りも年下で、いわば「弟分」だと思います。孫さんから得る刺激もありますか。

 「上に立つ人間は、人を明るくしたり、楽しくしたりしなければいけないが、そういう経営者は少ない。みんな謙遜して、慎重に発言する、ごく普通の人が多いね。孫さんは、他人から何を言われても気にしない。何度も潰れかかり、墜落寸前になっても上昇する、サーカスの曲芸師みたいなことをしている。たまたまそういう仕事だからうまくいっているが、メーカーだったら潰れている。でも彼は本当に明るい。夢を追い続けている。夜中まで考えつくして、夢を追い続けて一生を生きようとしている。『楽をしよう』とも思っていない」

ソフトバンクグループ社長の孫正義氏

 「やっぱり、孫さんはすごい。自分を中心に地球が回っている。今さっきもここへ来て、長時間、情熱的にバンバン話して帰って行った。彼と話していると、アドレナリンが出てくるんだよ。『昼ごはんはうどんにしよう』と思っていたのに、すしをとったり。(社外取締役を務めている)ソフトバンクの取締役会の日も『よし今日はステーキ食おう!』となる」

「投資家」孫さんには興味がない

 「孫さんのような人は、失敗してもらったら困る。ああいう人がいなくなったらいけない。ただ過去にも夢を語り、潰れていった人たちが何人もいた。普通はビジネスなんてなかなか自分の思い通りにならない。株の含み益なんてものは、金融恐慌が起きたらパーになってしまう。保証はないのだから」

 「彼は将来をよく見据えているし、天才的な投資家だ。ただ、100年後に残っているかといえば話は変わる。やっぱり行き過ぎてはいけない。片山(幹雄元シャープ会長。14年に最高技術責任者として日本電産に入社、現在は副会長)の会社も投資しすぎた。腹八分目というか、ちょっと休まなければね。私は人を切るのは絶対にいやなんですよ。リストラしたほうが、会社にとって早い。でも人材は大切だ。最後、一番強いのは人を切らないことだ」

――孫さんとはM&A(合併・買収)の方針も全然違いますね。

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏

 「私は事業家の孫正義には興味はあるけど、投資家の孫には興味はない。以前の話だけど、『(ソフトバンクの米携帯電話子会社)スプリントを売るなら、私は社外取締役をやめる』と話したことがある。やっぱり、孫さんには事業家として社会に貢献してほしい。柳井さんも同じ考え方じゃないかな。お金を払って投資するのも貢献といえるけど、中国の(インターネット通販最大手)アリババ集団だって馬雲(ジャック・マー)氏が育てた会社だ。投資して当たった、ということに私は価値を見いだせない。それでは歴史に名を残すことはできない。私は経営のことならアドバイスできるけど、投資のアドバイスはできないよ」

M&Aは100%成功

――永守さんは50件近いM&Aを手がけ、そのほとんどが成功したといわれています。なぜうまくいっているのですか。

 「手がけたM&Aは全部成功した。100%だ。リストラもしていないし、赤字は1社もない。海外も全部だ。理由は、3つある。1つ目は当たり前の話だが、高く買わないこと。去年も小さい規模のものしか買っていない。大きい案件が8社あったんだけど、全部見送った」

 「『買いたい、買いたい』という気持ちでいかないことだ。何年でもずっと待つ。私が最近買った会社でも、5年、10年待っていたものもある。2つ目は要らないものを買わないこと。これも当たり前だと思うかもしれないが、結構みんな要らないものを買っているよ。シナジーのあわないものは買ってはいけない。お城の石垣にたとえれば、大きな石だけで積もうとしてうまくいかない。地震がくると、がらっと崩れてしまう。よく見ると大きな石の間に必ず小さな石が敷き詰めてある。みんな、そういう小さな詰め物の買収をおやりにならない」

永守氏は「手がけたM&Aは100%成功した」と語る

 「3つ目は、シナジーを出すこと。今の事業に全然関係のない、例えばホテルを買うとかはない。私は日本電産という会社がある場所から、ボートで行けたり、陸続きで行けたりする会社を買うんです。間違いやすいのは、飛行機や大きな船でないと行けない場所にある会社を買うこと。パズルを埋めるように、陸続きにしなければ、買収なんてうまくいきません」

100年後も残る会社にするために

――大胆に見える永守さんの戦略は、緻密な計算もあるんですね。

 「買収した会社のなかに100年以上続いている会社が3、4社ある。こういう会社を観察すると、なぜ続いてきたのかということがよくわかる。100年後も生き残るためには繊細さと、長期的な思考がなければ絶対に無理だ。(経営幹部育成のための独自の)グローバル経営大学校も、会社を100年続けたいと考えなければそもそもつくらないよ」

 「事業家にとって一番大切なことは、会社を潰してはいけないということ。会社を買って、『もうかったから、さよなら』なんてだめだ。お客様も株主も大事だけど、一番大切なのは従業員です。従業員を大事にできない経営者はだめだよ」

永守重信氏(ながもり・しげのぶ)
1967年職業訓練大電気科卒。73年日本電産を創業し、社長に就任。2014年から現職。「【新装版】奇跡の人材育成法」(PHP研究所)など、著書多数。71歳。

(代慶達也 松本千恵)

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