花開く「日本ワイン」消費 その商機と課題

フランスでも、カリフォルニアでも、チリでもない、100%日本産ぶどうを使った日本ワイン。その市場が質量ともに広がってきた。日本ワインだけに焦点を当てたフェスティバルが多数の客を集め、専門のワインバーも続々と登場。一握りの大手ワイナリーが孤軍奮闘していた時代は過ぎ、いまや日本全国で意欲的な作り手が独自のワイン造りに励む。2012年ごろからのワインブームのけん引役となっている。一方で市場が一段と「熟成」するための課題もみえてきた。日本が世界的なワイン産地へ育つのか、現場を訪ねた。

「すっと入る飲みやすさが和食にあいそう」「日本産だと品質面で安心」――

東京・豊洲で6月上旬、「日本ワインMATSURI祭」が開かれた。日本ワインの飲み比べができるとあって、若者のグループや中高年のワインファンらが多数押し寄せ、各地のワイナリーが設けた51のブースには開場と同時に長い列ができた。会場周辺の高層マンションの住民や、仕事の合間というサラリーマン、わざわざ関西から駆けつけたワインファンの姿もあった。

「日本ワインをもっと知ってもらうための大切なイベント」と話すのは日本ワイナリー協会の横山清理事長(メルシャン社長)。国税庁によるとビールや日本酒など酒類全体の消費量が20年前と比べて約15%減る一方で、ワインは過去最高を記録。特に国産ワインが人気で、大手のサントリーワインインターナショナルでは日本ワインの販売数量がこの5年でほぼ倍増したという。日本ワインMATSURI祭の来場者数も1万2000人を超えた。

消費者の盛り上がりを背に、日本ワインを売り込む動きが広がっている。

メルシャンは東京・六本木に日本ワイン専門のバーをオープンした。山梨など国内各地の約50種類を提供。週末に開く日本ワインのセミナーは定員が募集開始早々に埋まる。店内には日本人だけではなく外国人の姿もよく見られ、「カウンターに座って、店員から日本ワインについてあれこれ質問する一人客も多い」(同社)という。日本ワイン専門バーは、都内だけでなく産地などにも登場。日本固有品種のブドウから造られたワインと、欧米で一般的なカベルネ・ソーヴィニヨンなどのワインを飲み比べる人も多いという。

日本ワインの市場は国内にとどまらない。数々の国際ワインコンクールで受賞したことで、国際的な評価が上昇。海外からの買い付けが増えている。サントリーワインインターナショナルはアジアを中心に今年から輸出を本格的に開始。今年は1000ケース、2018年には3000ケースを販売し売上高1億円を目指す。今年4月にシンガポール、5月に香港で大規模な販促イベントを開いた。香港のイベントでトップセールスを仕掛けた山崎雄嗣社長は「海外で和食のブームが続く中、それにあう日本の酒として反応は上々だった」と手応えを感じている。

日本ワインの人気が高まった背景に挙げられるのが味の向上だ。「製造の技術が上がってきたことに加え、これまで食用のブドウを使っていたのを、ワイン専用のブドウに変える造り手が増えてきた」と話すのは日本ワイナリー協会の石井もと子顧問。「甲州」「マスカット・ベーリーA」という日本の固有品種のブドウが近年、国際機関から品種登録されるなど評価されたことも大きい。

同じ国産ワインでも輸入した濃縮果汁を原料とする商品と、日本ワインを明確に区別するよう2018年秋に新たなワインの表示ルールが本格施行される。国税庁が中心となってルール作りを進めており、「勝沼ワイン」など産地名を名乗るには、その地で収穫したブドウを85%使用し醸造しなけらばならなくなる。基準を定め一定以上の品質を保つことで、国際的に日本ワインの評価を高めようとする試みだ。

一方で課題は少なくない。「まだまだ知名度不足。作り手がどんどん情報発信していかないと」と石井氏は話す。増産するにはブドウを一定量確保する必要があるが、耕作地の確保も遅れがちだという。メルシャンは長野県や山梨県で荒れ地の開拓を進める考えだが、「ワインのブドウ畑を作りあげるには10年かかる」との指摘もあり、解決の道はなかなか遠そうだ。小規模のワイナリーにはワイン製造の技術をきちんと確立できてないところもあり「ワイン造りの技術的な底上げ」もブームを定着させるために不可欠といえそうだ。

国産のウイスキーは一足早くブームを迎えたが、必要なモルトの不足という課題も抱えた。ウイスキーに続けとばかり人気面で熟成の時を迎えつつある日本ワインも似たような懸念が残る。せっかくの人気を一過性で終わらせないためにも、業界をあげた改題解決への取り組みが必要といえそうだ。

(映像報道部 近藤康介)

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