そこで感じたのはユヌス博士がたった1人で立ち上げたグラミン銀が、今ではたくさんのバングラデシュの人たちを支えている、ということでした。村の学校をたくさんまわる中で、学校の先生たちから教員不足というニーズを聞き、「この問題を解決するための力になりたい」と感じました。この体験が僕を教育の問題に駆り立てたのです。

まるでミスチルの歌詞のようなチキンラーメンの誕生

――私の履歴書から
「チキンラーメンを発明した瞬間はどんな気持ちでしたか」とよく聞かれる。しかし、これという決定的な場面は思い浮かばない。失敗を繰り返しながら、しかし、少しずつ前進していることはわかっていた。その先のわずかな光を頼りに、進み続けるしかなかったのである。
(安藤百福「私の履歴書」第12回)

「私の履歴書」を読んで一番心に残ったのは、チキンラーメンを発明した瞬間について安藤さんが話すところです。「その先のわずかな光を頼りに、進み続けるしかなかったのである」というくだりは、本当に人気バンド「ミスターチルドレン(ミスチル)」の歌詞みたいだな、と思いました。ミスチルに「光の射すほうへ」という曲があります。バングラデシュでのプロジェクト立ち上げのときによく聴いていました。「頑張ろう」って前向きな気持ちになれる曲です。ここを読んだときに、ひたすら自分が目指す未来に向けて全力疾走する姿に、何となく曲のイメージが重なりました。

僕は「質の高い授業はお金持ちしか受けられない」という壁を破り、村の若い人たちに映像授業を通じて、教育の機会を届けるためにeエデュケーションプロジェクトをスタートさせました。まずは、バングラデシュの予備校で人気の講師の授業をビデオカメラで撮影して、その映像を最も貧しかった村に届けました。これが成果をあげ、その村ではダッカ大に5年連続で合格者を輩出することになりました。その後は、 パレスチナのガザ地区やソマリア北西部で独立を主張するソマリランド、ハンガリー、ヨルダンなどで、現地の教育問題の解決に関わっています。

粘り強く、目の前のことをこつこつと

「どんな時にeエデュケーションプロジェクトを思いついたのですか」とよく聞かれます。でも、安藤さんのように「ずばりここの瞬間」というのは言うことができません。仮に、言葉では言えたとしても、実際はそこに至るまでにすごい試行錯誤やトライ・アンド・エラーがあるわけです。

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