新・定番は高品質&自分流
カスタマイズし長く楽しむ
デザイン不変 細部オーダー
すその広がったノースリーブのワンピース。ゆるやかにドレープを描くカシミヤのマント。2004年に登場したブランド「MIKAKO NAKAMURA(ミカコ ナカムラ)」の婦人服は、そのシルエットの美しさに定評がある。
素材や色は毎年変わるものの、12型ある基本アイテムのデザインは創立当時から不変。ただし、すべての商品がオーダーだ。仕立ての際には顔立ちや体形に合う首回り、丈、肌の見え方など細部にこだわる。そんな服作りが、まずスタイリストや編集者らプロに高く評価され、口コミで熱烈なファンが増えた。価格は代表的なコート「ルナ」が約20万円から。創立当初は2着だった年間のオーダー数は700着まで増え、08年に始めたカジュアルブランド「エムフィル」と合わせて9億円を売り上げる。
デザイナーの中村三加子さんはテキスタイル会社で布地開発の腕を磨き、バブル崩壊後に独立。百貨店やセレクトショップのオリジナル品を作る企画会社、オールウェイズ(東京・豊島)社長として成功を収めた。その後到来したファストファッションブームで使い捨てされる安価な服に疑問を抱き、「捨てる服はもういらない」と宣言、自分のブランドを立ち上げた。
「私が作りたい服は、そう、江戸前ずしみたいな服ね」と中村さん。そのココロは、目利きした素材に、酢で締めるといった一手間をかける。客の一人ひとりと向き合って、それぞれの好みや季節に合う品を出す。高品質だが、決して華美ではない――。「最小限のデザインが、着る人の個性を最も引き出せると思う」という。
カジュアルラインではパンツが大ヒットし、8月からは快適着心地のウエストゴムのパンツブランド「ナンバー エム」を展開する。同型のコートやパンツを色や素材違いで毎シーズン買うお客が増えている。
創業80年を迎えたフランスの高級ジュエリー「フレッド」では、ブレスレット「フォース10」(税別22万2000円から)の人気が広がっている。ヨットの金具を模した金などのバックルと多彩な色のケーブルで、1400を超す組み合わせが可能。選び方次第でドレスアップにもスポーティーにも楽しめる。
「フォース10は常に売れ続けているヒーロー商品」。ラシェル・マロワーニ最高経営責任者(CEO)はこう表現する。日本で人気に火が付いたのは05年。最近は一段、ファンの裾野が広がり、売り上げは2ケタ増を維持する。その要因を「自分に合う、パーソナルなものを大切にする消費者の共感を呼んだから」とみる。たとえ高級ジュエリーであっても、限られたハレの日に身につけるだけでなく、生活スタイルの様々な局面で楽しみたいと思う消費者は多い、とマロワーニCEOは話す。
飾らずリアル 生き方重視
高品質な品を自分流にカスタマイズして、生活の中で長く楽しんでいく。こんなファッションブランドの新・定番の発想に沿うような化粧品も間もなく登場する。
5月18日、都内で開かれたカネボウ化粧品の発表会。13年の白斑問題以降、初の大型ブランドとなる「KANEBO」(9月発売)をお披露目した。夏坂真澄社長は「これまでのラグジュアリーとは一線を画すナチュラルな生き方、飾らないリアルな女性の姿を新しい価値観として提供していきたい」と話した。
自然派化粧品を好むが、効き目には敏感。ブランドで選ぶのではなく、ものにこだわりがある本質主義の女性に向けた「ニュープレステージ化粧品」と位置づける。
商品は40ほどに絞り、個人の肌質に合ったアイテムを組み合わせて使えるよう、価格は単品約5000円とした。「価格=価値ではなく、高級化粧品をどう身近に感じてもらえるかを意識した」とカウンセリングブランドグループ部長KANEBOブランドマネージャーの葉山信太郎さんは話す。
広告に起用したのはスーパーモデルのアリゾナ・ミューズさん。未婚の母のミューズさんはいわば「人生を語れるモデル」(葉山さん)。ポーズを決めるのではなく、普段の生活をそのまま撮影したかのように仕上げたポスターには、「モノの価値を重視した時代から生き方を重視する時代に移行した、今の消費者の共感を呼びたい」との思いが込められている。
(企業報道部次長 松本和佳)
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