ロードバイク、初心者こそパーツで性能向上

日経トレンディネット

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本格的な自転車シーズンに突入し、全国各地でたくさんのサイクルイベントが開催され、大きな盛り上がりを見せている。

近年、特に人気となっているのがヒルクライムレースだ。読んで字のごとく、坂道の上りだけで競うレースのことである。といっても、ロードレースのように他のサイクリストと直接的に順位を競うわけではない。既定のコースをどれだけ速く走ったかを競う、どちらかというと個人のタイムアタックに近いものだ。

毎年6月に富士スバルラインを封鎖して開催される「富士の国やまなし Mt.富士ヒルクライム」は数あるヒルクライムレースの中でも最大級の規模を誇る。約8500名の定員が1日で埋まってしまうほどの人気だ(写真:佐藤旅宇)

ひたすら坂を上ると聞くと何だかハードそうだが、制限時間が長いので自分のペースで走ることができる。本気で走ればツラいし、手を抜けばラクもできる。レーススピードが遅く、コーナリングなどで高度なテクニックも必要ないことから、初心者からベテラン、女性まで幅広い層に支持されているというわけだ。

事実、約8500人ものサイクリストが集まる日本最大級のヒルクライムレース「Mt.富士ヒルクライム」の参加者にもビギナーは多い(普段ママチャリしか乗らない筆者の家内も参加経験アリ)。最近では自転車ロードレースをテーマにした人気漫画『弱虫ペダル』の影響でロードバイクに乗り始めたという人も少なからず存在するらしいので、この傾向は今後も続くだろう。

今回はこうしたイベントを見据えて、エントリーライダー向けにロードバイクを“速く”するためのパーツを紹介したい。

(写真:佐藤旅宇)

エントリーモデルはパーツを軽量化して性能アップ

実のところ完成車[注]の形で売っているロードバイクは、ユーザーの好みにカスタマイズすることが半ば前提になっているといってもいい商品である。特にコストの制約が厳しいエントリーモデルの場合、初期状態では十分な性能のパーツが装備されていないことも多い。より軽量なパーツに交換するなどのカスタマイズによって初めてフレームが持つポテンシャルを100%発揮できるのである。また、ハンドルバーやハンドルを支持するステム、サドルなどのパーツを交換することで自分の体型にぴったりと合ったポジションに調整することもパフォーマンスをアップさせるために有効だ。

[注]ロードバイクは買ってすぐに走り出せる「完成車」販売のほか、フレームだけ販売し、オーナーの好きなパーツで組み上げるという販売方式もある。

ハイパフォーマンス=ハイプレジャー

高性能なロードバイクとは、軽く、車体剛性が高く、しかも乗り心地に優れた自転車のことを指す。そういうロードバイクは、フィーリングも快感に満ちている。こいだらこいだ分だけ進み、曲がろうと思った分だけ正確に曲がってくれる、いわば“人車一体”の気持ち良さだ。たとえるならよく切れる包丁のようなもの。ロードバイクは“ハイパフォーマンス=ハイプレジャー”なのである。だからロードバイクのカスタマイズは決して競技志向のライダーがレースに勝つためだけの行為ではなく、ロードバイクをより楽しむ方法といえる。

とはいえ、エントリーユーザーにいきなり高価なパーツや扱いがシビアな超軽量パーツをおすすめするのはあまり現実的ではない。ここでは費用対効果が高く、幅広いシチュエーションにも対応できる商品に絞って紹介したいと思う。

ちなみにスポーツサイクルは各部が規格化されているため、クルマなどと比べはるかにパーツの汎用性が高い。星の数ほどあるパーツのなかから自分に合ったものを選んでいく楽しみ(苦しみ?)もロードバイクライフの魅力のひとつだ。でも、一眼レフカメラのレンズよろしく、はまると抜け出せない沼のようなものなのでその気のある人は覚悟して踏み込むべし!

ヒルクライムレースの参加車両のほとんどはオーナーの好みに合わせて何がしかのカスタマイズが施されている(写真:佐藤旅宇)

走行性能アップに最も効果的なのはホイール交換

数あるロードバイクの部品の中で、走行性能にもっとも影響力を持つといわれるのがホイールだ。

高速回転するホイールの軽量化は、フレーム本体を軽くすることよりも数倍の効果があるという。外周部が軽量なホイールは回転時の慣性が小さくなるため、こぎ出しが軽くなり加速性能がアップする。ヒルクライムレースなどでは軽量ホイールは絶大な効果を発揮してくれるのだ。

一方、重量より空力性能を重視したホイールも存在する。構造的に外周部が重くなるため加速は鈍るが、速度を維持しやすくなり、平地での走行スピードを高められるようになる。

ホイール交換は効果を実感しやすく、またバイクの特性を大きく変化させられるのが醍醐味だ。20万円以下のエントリーモデルのロードバイクの多くは、「とりあえず」といった感じのホイールが標準装備されている。ホイール交換にかかる絶対的な費用は決して安いものではないが、すぐに実感できる分、コストパフォーマンスに優れた買い物といえるだろう。

なおホイールにはカーボン製のものとアルミ製のものがあるが、ビギナーには比較的リーズナブルで扱いやすいアルミ製がおすすめ。エントリーグレードのロードバイクに使用するなら性能的にもアルミで十分だ。

前後セットで4万円切る人気ホイール

◎シマノ「WH-6800」:税込み2万3729円(前輪)、税込み2万5365円(後輪)

初めて買うホイールとして人気となっているモデルがコレ。ネットショップでは前後セットで4万円を切る価格で販売されており、そのコストパフォーマンスは大いに魅力的だ。

エントリーモデルに標準装備されているホイールの重量はだいたい前後で1800g以上のものが多い。しかし、こちらは前後で1649gと軽量。ホイールという部品はこれぐらいの重量の違いでも加速力と登坂力が大きく変わる。また、ハブ(ベアリングを内蔵した中央の軸の部分)の精度も高いので、回転がなめらかで速度を維持しやすい。

半面、ビジュアルが他社メーカーのホイールに比べて地味なのがやや残念。見た目のグレードアップもホイール交換の楽しみのひとつだからだ。パンクに強く、乗り心地に優れるチューブレスタイヤにも対応している。

平地基調のコースを高速走行するならコレ

◎フルクラム「レーシングクワトロLG」5万4000円(前後セット)
左がフロント用、右がリア用

フルクラムは日本のシマノやフランスのマヴィックと並び称されるイタリアのホイールメーカー。コンポーネント製造メーカーである、カンパニョーロの子会社だ。

この「レーシングクワトロLG」は、ご覧の通りリム側面の面積が大きいエアロホイールだ。これをロードバイクの世界ではリムハイトの高いホイールという。高速走行をするとホイールのスポークが風を巻き込んで空気抵抗になるが、リムハイト(リムの厚さ)を高くしたホイールは相対的にスポークが短くなり、その空力抵抗が少なくなるという理屈だ。ただし、その分リムが重く(慣性が大きく)なるので、こぎ出しが重く、上り坂も苦手。平地基調のコースを高速で走行するときに適したホイールといえる。

ヒルクライムレースと同じく、エントリーライダーの間ではレーシングコースで行われるエンデューロレースも人気となっているが、そういったシチュエーションでは大いに有利になる。

ちなみに素材をカーボン製にして軽量化を図ったエアロホイールもあるが、それらは前後輪合わせると20万円以上もする、極めて高価なもの。その点アルミ製のこのモデルならば比較的安価にエアロ効果を実感でき、愛車のビジュアルだってぐっとカッコ良くなる。重量1725g(前後セット)。

前後合わせて1550g、信頼性が高くビジュアルもばっちり

◎マヴィック「キシリウム・エリート」11万3400円(前後セット)

マヴィックは優れたホイールを作ることで知られるフランスの自転車部品メーカー。ルックスもいいので予算に余裕があるならぜひおすすめしたい。一般的な感覚からいうと、車輪だけで10万円オーバーというのは相当にハードルが高いが、もちろんその分効果も高い。

ロードバイクを買う際には車体のグレードを下げて、ホイールにお金をかけるという選択肢もある。例えば筆者の場合は、定価が約4万円ほど値下げされた“超お値打ち”のアルミロードバイク、スペシャライズドの「アレーDSW SL COMP」と合わせてこのホイールを購入した。27万円の自転車を購入するつもりで、そう割り振ったのだ。この選択は正解だったようで走行速度や加速性能が標準仕様よりはっきり向上したことはもちろん、走りの“質”が良いので走る楽しさもアップした。いずれにしてもこの辺りの価格帯までがエントリーライダーが購入を検討できるホイールのギリギリ上限だろう。

キシリウム・エリートは前後合わせて1550gという軽さと脚力をしっかり路面に伝達する高い剛性を両立させたことに加え、空力にも優れているのが特徴。平べったい形状のエアロスポークやリムの角をなくすことで空気の抵抗を減らし巡航速度を高めているのだ。リムの幅を広くし、少し太めのタイヤサイズ(700×25C)の装着を前提としているのも近年のトレンドだ。ちなみにマヴィックのホイールには専用タイヤがセットになっている。

筆者のようにあえて安価なアルミロードバイクを選び、その分の予算をホイールへ投じるのもひとつの選択(写真:佐藤旅宇)
足元がビシッと決まっていると見た目にも特別感が出る(写真:佐藤旅宇)

(ライター 佐藤旅宇)

[日経トレンディネット 2016年5月23日付の記事を再構成]

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