都市公園、民が「助っ人」柔軟発想、にぎわい生む

天王寺公園(大阪市)の「てんしば」には商業施設が立ち並び、多くの人が訪れるようになった
天王寺公園(大阪市)の「てんしば」には商業施設が立ち並び、多くの人が訪れるようになった
民間企業やNPOの力を借りて、都市の公園を使いやすくする動きが広がる。商業施設の開業や利用ルールの緩和などで、もっと楽しめる空間に生まれ変わりつつある。

「こんなにきれいになったんや」――。大阪市の天王寺公園に立ち寄った人が驚きの声を上げる。入り口の広場「てんしば」が、昨年10月にリニューアルオープンした。来園者は半年間で約209万人と、改装前の4倍に増えた。

商業施設に好影響

近鉄不動産が20年間、同市から運営を引き受けた。12億円強をかけ芝生広場を整備しフットサルコートやドッグラン付きのペット用品店などを誘致。今秋には外国人向けのゲストハウスも登場する。

近鉄不動産は周辺に日本一の高層ビル「あべのハルカス」などを抱える。同社の能美慎次郎課長は「公園の魅力が高まれば当社の商業施設に波及効果が期待できる」と運営に手を挙げた狙いを話す。

大阪市のメリットも大きい。通常なら自治体の側が費用を払うが、ここでは逆に近鉄不動産が同市に毎年約3000万円を支払う。近鉄側はテナントからの賃料で投資を回収する仕組み。同市は大阪城公園でも昨年4月から似たような制度を採り入れた。新たな官民連携の枠組みとして全国的に注目を集めている。

「京都鉄道博物館」が今春に開業した京都市では、博物館がある市営の梅小路公園を活性化するプロジェクトが始まった。JR西日本やオムロンなど37社・団体が加わる「京都・梅小路まちづくり推進協議会」が清掃活動のほか、年間約1億円を出して施設を整備。イベントも開く。

同公園がある京都駅の西側は観光資源に乏しく人通りも少なかった。しかし12年に公園内に京都水族館ができ、19年春には近くにJRの新駅も開業する。これにあわせて公園の集客力も高め、周囲に人の流れを生み出す狙いだ。

日本の都市公園は1970年代以降に大きく増え、総面積は約12万ヘクタールに達する。しかし設置から30年以上過ぎたものが約4割を占め、古くなっている。一方で財政難もあり、公園の整備や維持管理の費用は頭打ちだ。

各地で進む民間活力の導入は、こうした財政の厳しさの裏返しでもある。03年導入の指定管理者制度など規制緩和もあり、みずほ総合研究所の晝間(ひるま)友仁研究員は「地域の実情にあわせて民間が自由に提案できる余地は広がってきた」と説明する。

立地条件が左右

東京・御茶ノ水の再開発ビル「ワテラス」ではビル前の広場と区立公園を利用した地域物産展が開かれている(東京・千代田)

東京・御茶ノ水では、13年に安田不動産などの再開発ビル「ワテラス」を開業する際、敷地内の千代田区立淡路公園を民間資金で大幅に拡張・再整備した。地域貢献に取り組んだ分、容積率を上積みしてビルを高くできる都市再生特別措置法の規定を活用して必要な経費を賄った。

ビル前の広場と区立公園は地元町会長らも加わるまちづくり組織の「淡路エリアマネジメント」が一体運営する。月2回の地域物産展など様々なイベントを開いている。

ただ、こうやって民間資金を呼び込めるのは立地条件の良い一部の公園に限られる。さびれたままの公園も各地で増え続けるなか、今後は住民が利用しやすくするための仕組み作りも欠かせない。

横浜市では地元青年会議所の関係者が立ち上げたNPO法人「ハマのトウダイ」が、昨年7月から「パークキャラバン」という試みを始めた。

公園にテントを張り、子どもを集めて泊まり込みのキャンプを開くなど、新たな公園の利用法を提案する。共同代表の岡部祥司さんは「地元の人たちを巻き込みながら行政にも掛け合い、これまで難しかった利用方法にも許可が下りやすくなった」と話す。

国土交通省も5月、都市公園に関する検討会で、民間との連携や柔軟な使い方などを加速する方針を打ち出した。制度面の後押しで、これまで閑散としていた公園にも新しい使い道が生まれてくるかもしれない。

横浜市では地元NPOが「パークキャラバン」と銘打ち、公園で泊まり込みのイベントなどを開く(写真は臨港パーク)

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計画段階から民の意見反映も

地方自治体が新たに公園を整備する際などに、計画段階から市民や企業、NPOの意見を採り入れる動きも全国的に広がっている。

「今まで市役所は公園の利活用に後ろ向きな部分もあった。地域のためになるなら、今回の公園では(利用ルール上は)グレーな部分でも市役所がやれる方策を考えていきたい」――。5月24日、埼玉県の和光市役所の一室で開かれた研究会。集まった企業やNPOの関係者など約50人を前に、和光市役所の公園担当者がこう呼びかけた。

和光市では、土地の区画整理事業によってできる新たな市街地の一部に来春、医療や健康・福祉をテーマにした公園をつくる「ヘルシーパークス構想」を進めている。近接する4つの公園をジョギングコースで結び、市民の健康作りなどに役立ててもらう狙い。これにあわせて民間企業などからアイデアを募り、新技術の実証試験やイベントを行う拠点としても活用してもらいたいというのが和光市の考えだ。研究会は新産業文化創出研究所(東京・千代田)の協力を受けて開催した。

この日の会合では飲料販売会社の担当者が、自動販売機を活用した災害時向けの食料備蓄や、自販機に搭載したカメラによる高齢者の見守りなどのアイデアを披露。終了後には建設予定地の見学会も開いた。今後も継続的に会合を開いていく予定だ。

似たような試みは横浜市でも進んでいる。JR関内駅前にある横浜市役所を、2020年までにみなとみらい線の馬車道駅近くに移転する計画があるからだ。約6000人の市職員が一斉にいなくなるが、市役所跡地などの活用方法はまだ決まっておらず、関内地区の地盤沈下が懸念されている。

そこで同市は、市役所移転後の関内地区のまちづくりに企業、大学など民間のアイデアを生かすための議論の場として「横濱まちづくりラボ」を2014年に立ち上げた。公共施設の移転跡地や、関内駅近くにある「大通り公園」など都市公園も含めた公共スペースの有効利用法についても考えてもらう狙いだ。

横浜市・都心再生課の庄司敏雄担当係長は「残念ながら大通り公園などは現状ではあまり利用されていない」と嘆く。理想の公園のモデルとして挙げるのは米国のニューヨークにあるブライアントパーク。かつて犯罪の温床になっていたが、官民の協力により芝生広場に大量のいすを並べるなどして市民の憩いの場に生まれ変わったことで知られる。庄司担当係長は「公園を人が利用してくれるようになれば、商売も生まれて周囲の活性化につながる」と民間からのアイデアに期待している。

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法改正、公園に保育園開設可能に「違う年代の子の行き場は…」

ツイッターでは「最近の公園って禁止事項が多すぎて公園じゃねーよな」と、近所の公園の使いにくさを嘆く声が多くみられた。大阪市の天王寺公園には「すごく変わっててびっくり」「オサレスポットになってる」と変貌を驚く声が多かった。ただ「広場付きショッピングモール」などと皮肉る声もあった。

昨年の国家戦略特区法改正で都市部の公園に保育園を開設できるようになったことへの賛否も目立った。「違う年代の子どもたちの行き場がなくなる」という非難の一方で「公園が全部無くなる訳じゃ無いだろう」と理解を示す意見も。調査はNTTコムオンラインの協力を得た。

(本田幸久)

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