増える金利混合型 住宅ローン、固定・変動の差縮小

2016/6/18

Money&Investment

住宅ローンのプランで固定金利型と変動金利型を組み合わせた「ミックス型」を提案する金融機関が増えている。当初の返済額が固定型単独で借りるよりは少なく、将来金利が上昇したときの負担は変動型単独よりも軽くなるのが本来の特徴だ。ただ、日銀のマイナス金利政策を受けて固定金利の水準が大幅に低下(グラフA)。固定型を軸にローンを組むのが得策との指摘も増えている。

みずほ銀行は固定型ローンに変動型などを組み合わせて借りると、その部分が最優遇金利となる「ミックス50プラン」を扱う。他行と差別化する狙いで昨年10月からキャンペーンを開始。同プランを選ぶ人は全体の1割程度で、「少しずつ増えている」という。

三菱東京UFJ銀行はホームページ上で「安心、おトクをセットに」と説明するなど販促に力を入れる。「顧客に応じて柔軟に返済計画を提案する」という。三井住友銀行によるとミックス型を選ぶ人は2~3割程度。「変動型と全期間固定型を半額ずつ組み合わせる例が多い」という。

住宅ローンの金利タイプはいくつかある。金利水準がずっと変わらない固定型は一般に金利が変動型より高い(表B)。その代わり、世の中の金利動向にかかわらず毎月の返済額が一定なので計画を立てやすい。

月の返済額少なく

金利を半年ごとに見直す変動型は、当初の金利水準は固定型より低く毎月返済額が少なくて済む。その半面、将来金利が引き上げられれば利息負担が増えるため、返済計画の見直しが必要になる場合がある。

金利ミックス型は、借入額を変動型、固定型の2つに分ける方法だ。変動型を混ぜることで、固定型だけで借りるよりは当初の毎月返済額を抑えられる。固定型を混ぜることで将来金利が上がった場合、変動型だけで借りるよりは負担の増加を抑えられる。「固定と変動の長所を生かす」と多くの金融機関が提案する。

金利タイプ別に、合計3000万円を期間35年で借りたときの毎月返済額を試算してみた(グラフC)。金利水準は固定型が1.11%、変動型が0.625%で、ミックス型はそれぞれ1500万円ずつ借りるという想定だ。

現時点の毎月返済額は、ミックス型が約8万2000円と、固定型のみで借りるより数千円少なくなる。今後金利が上がらなければ変動型と同様、固定型より返済額を抑えられる。

では金利が上昇したらどうか。仮に6年目から変動型の金利が1%上がったとすると、ミックス型の毎月返済額は約8万8000円に増える。固定型を混ぜた効果で変動型単独よりは少なくて済むが、固定型単独よりは約2000円多くなる。この場合、1%以上金利が上がると考えるなら始めから固定型を選べばよいことになる。

小幅な金利上昇でミックス型の返済額が固定型を上回るのは、変動型と固定型の金利水準が接近しているからだ。1月末の日銀のマイナス金利政策導入発表以降、固定型金利は国債利回りに連動して急低下。すでに低い水準にあった変動型は低下余地が限られた。35年固定と変動型の金利差が0.5%以下になった銀行もある。

「固定型で十分」

過去5年以上、住宅ローン金利は国債利回りに連動して低下傾向が続いたが、将来はわからない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ債券ストラテジストである石井純氏は「2020年代以降、国債の信用力低下による金利上昇が起きる確率が高まるだろう」とみる。

住宅ローンアドバイザーの淡河範明氏は「固定と変動の金利差が縮小した今、ミックス型の効果は薄い」と指摘。「今後金利が上昇すると考えるなら固定型だけで十分」という。

ファイナンシャルプランナーの峰尾茂克氏は、「教育資金など将来必要な金額を除いてなお余裕がある人は、余裕資金と同額まで変動型を混ぜて借りるのも一案」と話す。仮に金利1%未満の変動型ローンで借りて、借入残高の1%が税額控除で戻る住宅ローン減税を活用すれば、支払利息よりも控除の額のほうが多くなる。峰尾氏は「資金面で余裕があれば、低金利の変動型の利点とローン減税の恩恵の両方を受けやすい」という。(川本和佳英)

[日本経済新聞朝刊2016年6月11日付]

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