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英国最古の書字板発掘、二千年前の「日常」伝える

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

「私、ウェネストゥスの解放奴隷ティブルスは、スプリウスの解放奴隷グラトゥスに対し、配達された商品の代金として105デナリウスの支払い義務を負っています…」

借用書はラテン語の筆記体で、書字板と呼ばれる木の板に刻まれていた。そこに記された日付は、紀元57年1月8日と読みとれる。これまでに見つかった、古代ローマの属州ブリタンニアの文書では最も古い日付だ。現在は英国ロンドンの金融街がある地区で、商業活動が行われていたことを示す最古の記録ということにもなる。

古代ローマ時代の書字板は、この借用書を含めて405点も見つかった。驚くべき発見の現場は、ロンドンの金融街の一角で、経済・金融情報の配信会社ブルームバーグが欧州本部の新社屋を建設中の土地だった。1.2ヘクタールの建設現場は、たちまちロンドンの歴史上で最大の発掘現場となり、紀元1世紀の古代ローマ時代に生きた人々の暮らしぶりを伝える遺物が大量に発掘された。見つかった品々のなかには、革のブーツや装身具から、手紙、借用書、売買の証書や裁判関連の文書まであり、保存状態は極めて良好だった。(参考記事:「地下に眠るロンドン」)

発掘作業は2014年に完了し、その後2年にわたり、遺物の保存処理と調査がじっくりと進められてきた。そしてこのたび、ロンドン考古学博物館(MOLA)がその成果をまとめて、『古代ローマ時代のロンドン市民たちの最初の声』と題して出版。判読可能な88点の書字板すべての翻訳を収録した。古代ローマ帝国の辺境に築かれ、混乱のさなかにあった初期のロンディニウムの姿を明らかにする内容となっている。

現代のメール感覚? 支払いの催促状も

筆頭著者を務めたロジャー・トムリン氏は、元オックスフォード大学の古典学者で、書字板の解読と翻訳を担当した。これらの書字板は「最も古い時代のロンドン市民の暮らしぶりを、極めて個人的なレベルで見せてくれる史料です。なかには、興味をかき立てられる内容のものもありますよ」と評する。

例えば、アティクスという男性が書いた手紙は、36デナリウスの支払いを催促する内容で、「パンと塩をあげるから」なるべく早く支払ってほしいと懇願している。また、ティトゥスという金貸しは、軽率な融資によって世間で笑いものにされていたようだ。「彼らは市場のあちこちで、あなたから金を借りたと自慢しています。だから、みすぼらしい服装はしないでください。…そのような服装はあなたご自身のためになりません」という忠告の手紙を受け取っている。

現地での発掘調査を指揮したMOLAの考古学者ソフィー・ジャクソン氏は、「他人の電子メールの断片を読んでいるような気分になります」と打ち明ける。個人的に気に入っているのは「カトゥルスの家の向かいに住む、たる屋のユニウスに、これを渡してください」という簡潔な文章だという。「判読可能な部分はこれだけですが、想像力をかき立てられました。カトゥルスという裕福な男性は、きっと目印になるほど大きな屋敷に暮らしていて、通りの向かい側に、たる屋のユニウスが住んでいる。まるで友だちに電子メールで、『オックスフォード・ストリートのHMV前で会いましょう』と伝えるような調子です。私たちが今いるロンドンは、かつては彼らの街だったのです」

歴史を覆す日常の記録

最も歴史的に重要な発見は、紀元62年10月22日付の契約書だ。ウェルラミウム(現在のセント・オールバンズ)からロンドンまで、荷車20台分の食料を運ぶという内容だ。

「重要なのは、日付です」とトムリン氏は説明する。「ブーディカ(ローマ帝国に反旗を翻したケルトの女王)による反乱の直後だからです。ブリタンニアに関する主な情報源となっている歴史家タキトゥスの著作には、紀元61年のある日に反乱が起きたと記されています。ロンドンとセント・オールバンズがともに破壊され、7万の犠牲者が出たといいます」

「(しかしながら)反乱は2年に及んだという根強い主張があります。もしそうであれば、ブーディカは紀元60年に蜂起したことになります。新たに発見された書字板の契約書は、ロンドンとセント・オールバンズが紀元62年10月までに復興していたことを示すため、2つの都市はタキトゥスの記述より1年早く破壊されたという主張の裏づけになります。新たな史料の登場で、文献の解釈が変わることもあるのです」

判読可能な文書の多くは契約書や借用書だった。タキトゥスは『年代記』に、初期のロンディニウムは「実業家であふれ、商業がさかんだった」と記したが、書字板の内容からもその様子がうかがえる。

ブルームバーグの建設現場で発掘された構造物の一つは、紀元1世紀末に造られた、「オフィスビル」的な建物だったと考えられている。「この建物の中だけで、書字板が19点も見つかりました。残念ながら、すべて判読不可能でしたが」とジャクソン氏は話す。

「数独」やパズル好きなら、解読作業向き?

書字板はiPadくらいの大きさで、たるの板を再利用したものとみられる。中央の浅くへこんだ部分に、すすで黒く着色した蜜ろうを薄く塗り、その上にとがった鉄筆で文字を刻んだ。

これらの板は2000年近く、水分を多く含んだ土の中に埋もれていたため、表面の蜜ろうはとっくの昔に消えてしまった。それでも、鉄筆による引っかき傷がかすかに残っている。引っかき傷を識別し、解読するのは容易ではなかった。すべての書字板のデジタル写真を、照明の角度を変えながら4枚ずつ撮影し、4枚の画像を重ね合わせて、表面の傷を浮かび上がらせる方法がとられた。

ここから単語や文字、あるいは文字の一部の、かすかな痕跡を見つけ出す。書字板1点の翻訳に1週間かかることもあった。「数独やパズルを解くのが好きな人なら、この作業も向いているかもしれませんよ」とトムリン氏は言う。もっとも、大昔のロンドン市民が好んで使ったラテン語の筆記体を読み解けるのは、トムリン氏のような、ごく限られた古典学者だけだ。(参考記事:「イラストも文字もまったく意味不明、ボイニッチ手稿」

トムリン氏にも、お気に入りの文書を挙げてもらった。「1つ選ぶとしたら、あの紀元57年1月8日に作成された借金の覚書ですね。現時点ではブリタンニアで最も古い日付の入った文書で、比較的わかりやすい内容ですから。ああいったものに遭遇するのは、楽しいものです」

(文 Roff Smith、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年6月6日付]

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