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次世代リーダーの転職学

経営幹部の転職、入社後に「嫌われる人・好かれる人」 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長 波戸内啓介

2016/7/29

PIXTA

「転職成功」とは、志望企業に採用され、入社を果たすことではありません。入社後に活躍できてこそ、成功といえます。しかし、責任あるポジションで、あるいは「変革」のミッションを担って入社した経営幹部の方々の中には、スタート時点でつまずいてしまう方もいらっしゃいます。今回は、幹部として入社した後、本来の力を発揮するためのポイントをお伝えします。

成果を焦る人は、先走って失敗しやすい

転職活動を行い、「経営幹部」として入社することが決まった方々に向けて、私がいつもお伝えしているのは「決して焦らないでください」「最初からハイペースで飛ばさないでください」ということです。

経営トップから、現場の改善・改革を期待されて入社した方々は、「早く結果を出さなければ」と焦り、失敗してしまうケースが少なくありません。

「前の会社ではこういうやり方で成果を上げた」「自分はこのようにしてうまくいった」という経験をそのまま、入社後すぐに導入しようとして、既存社員から反発をくらってしまうのです。正しいことを言っていたとしても、誰もついてこないという事態に陥りがちです。

それに、前職で成功した手法が正しいとも限りません。組織や業務内容が異なれば、自身の「成功法則」がまったく通用しないこともあります。状況を見極めながら、少しずつ自分の持つ引き出しを開け、その会社に合ったものを使っていくことを心がけたいものです。

ついては、入社後、最低でも3カ月程度は様子をみてください。どんなメンバーがいて、どういうコミュニケーションラインができているのか、「人を知る」ところから観察を始めてみることをお勧めします。

まずは現場の「健康診断」からスタートする

転職先企業の課題に対して「処方箋」を出すには、その前に「診察」が必要です。現状、どんな点を強みとしているのか、どんな点に問題を抱えているのかを把握し、仮説を立て、検証していく。それを順序立てて行うのがうまくいく秘訣です。

というのも、そもそも入社時点で課題と想定していたことが、実際には異なっていることがあるからです。

経営トップから「ここがうまく回っていない。それを何とかしてほしい」と言われていたとしましょう。しかし、実は問題の根本が別のところにあるケースも多いものです。それに気付かず、ただ言われたとおりに手術を施すと、余計に患部を広げることにもなりかねません。

自分なりの視点で現場を見て、課題を正しく捉えた上で行動に移すようにしてください。

情報収集は「現場」から、ラフな場で本音を引き出す

課題をつかむために必要なのは、言うまでもなく情報収集です。経営幹部の会議ではデータを得られますが、それだけでは実情をつかめません。やはり現場の社員の声を聞くことが重要です。

一見して「これは非効率だ」「理にかなっていない」と感じることも、これまでの経緯でそうせざるを得なくなった事情があるのかもしれません。現場の社員がこれまで取り組んできたプロセスを尊重する姿勢が大切です。

しかし、新しく入った上長から会議室に呼ばれ「さあ、話を聞かせてくれ」と言われても、社員は本音を出しにくいでしょう。ですから、現場社員へのヒアリングは、なるべくラフなスタイルで行うのが望ましいといえます。

休憩スペース、喫煙室、社員食堂といった「オフ」の場で何気なく声をかけ、雑談がてらに話を聞くほうが、実情や本音を引き出しやすくなります。あるいは、ランチや飲みに誘う手もあるでしょう。

ちなみに、私はリクルートグループ内で3社の経営を行ってきましたが、就任してしばらくはマネジャーやリーダークラスのメンバーと1対1の飲み会を開き、話を聞いてきました。リラックスした雰囲気になれば、相手も率直に話をしやすくなり、一気に距離を縮めることができると実感しています。いったん心を開かせることができれば、後々のコミュニケーションがとてもスムーズに運びます。

なお、複数のメンバーを集めて話を聞こうとすると、お互いに顔色を見合ってストレートにものを言えなくなることがあります。なるべく1対1でコミュニケーションを取ることをお勧めします。

また、社員だけでなく、その会社の取引先、クライアント、ユーザーなどの声も、課題の把握・分析の参考になります。主要取引先にあいさつに出向き、自社に対して感じていること、今後の要望などを聞いてみるのもいいでしょう。

ときには強力に推進を、目標期限は2つ意識する

これまでお話ししてきたとおり、新しい職場に入ったときは、自分のやり方を一方的に押し付けるのではなく、まずは既存のやり方をいったん受け入れることが大切です。

とはいえ、抱えている課題によってはシビアに、ドラスチックに改革を推進しなければならないこともあります。そうした場面では、既存社員全員の意見を聞き入れていたのでは、前に進めることはできません。そのあたりはバランスを取る必要があります。

ときには大胆に行動しなければならない場面で、「この人が推進することであれば、ついていってみよう」と思われるように、初期の段階で信頼関係を築いておきたいものです。

また、目標に対して、スケジュールを意識することも重要です。このとき、自分なりに「こういうスケジュールでできそうだ」という期間と、メンバーや社外に対して発信するスケジュールは、多少ずらしておくといいと思います。

「うまく運べばこのスケジュールで進むだろう」という想定と、「現実的にはこれくらいのペースで進むだろう」という想定を常に両方持っておき、調整しながら進めるのです。

そうすることで、必要以上に自分やメンバーを追い詰めることなく、適切なペースで推進することができるはずです。

次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は8月5日の予定です。
連載は3人が交代で担当します。
*黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
*森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
*波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
波戸内啓介(はとうち・けいすけ)
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
1989年リクルート入社。営業部門、企画部門責任者を経て、リクルートHRマーケティング関西など、リクルートグループの代表取締役社長を歴任。2011年リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長に就任。
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント(http://www.recruit-ex.co.jp/)

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