変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

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「せっかく転職するのであれば、成長している会社に入りたい」――そう考える方は多いと思います。ところが、念願かなって「伸び盛りの会社」に入社したものの、思いがけぬ困難にあったり、イメージしたような働き方ができないケースもあります。魅力的である反面、どういった課題やリスクを抱えているかをお話しします。

「新しいチャレンジ」の段階を終えていることもある

「転職するなら、成長中の企業に入りたい」と考える方は多くいらっしゃいます。その理由として「新たな商品・サービス開発に携わることができそう」「新しいチャレンジができそう」という声がよく聞かれます。

もちろん、その希望がかなう「成長企業」もあります。ところが、中には「これまで順調に成長してきたが踊り場を迎えている」という状況の企業もあるのです。

こうした企業では、新たなプロジェクトの立ち上げは休止し、足場を固めるために組織の見直しに入ることがあります。「新たなチャレンジ」への投資を控え、合理化を図ることに力を注ぐのです。

このフェーズに入った企業では、効率化の仕組みや組織のルールを整備する仕事が好きな人は力を発揮でき、やりがいを感じられるでしょう。しかし、「チャレンジ」を求めている人にとっては、もどかしく感じるかもしれません。

このほか、新しいビジネスモデルを強みとする企業の場合、成長を遂げたころには、そのビジネスモデルに新たな付加価値をつけた競合他社が台頭してきているもの。変化のスピードが速い昨今では、うかうかしていると、あっという間にシェアを奪われてしまいます。

成長企業に入社したつもりが、いきなり衰退期に突入してしまうこともあり得るわけです。そうした状況下では、新しいプロジェクトを立ち上げるよりも、競合対策に悩まされることもあり、「追い上げられる不安や焦り」がストレスになることもあるようです。

組織の急拡大でひずみが発生、チーム構築に苦労が伴う

成長企業に入社したいと思う理由の一つとして、「社員のモチベーションが高く活気がある」というイメージを抱いている方も多いことでしょう。

もちろん、その通りの企業も多いのですが、実は組織の求心力が薄れ、まとまりがなくなっているケースもあります。

事業を一気に拡大し、短期間で従業員数が増えた企業においては、社員の間にカルチャーギャップが生まれたりします。特に、多様な業界から異なるバックグラウンドや価値観を持つ人が集まってきていると、意見の食い違いも生じやすくなるわけですね。マネジャーとして入社し、チームをまとめるミッションを負った場合、苦労することが多いようです。

特に、成長してきたプロセスの中でM&A(合併・買収)を行った企業の場合、組織状態が少々複雑かもしれません。2つ以上の会社の「DNA」が入り混じっている状態ですので、社員間に価値観のギャップが存在する可能性があります。両者の間で調整するような役割を担うことになると、大変な思いをするかもしれません。

「ダイバーシティ」が叫ばれる昨今、もちろん、多様性を価値と捉えることもできます。さまざまなタイプの人間が集まれば、ぶつかりあいから新たなアイデアが生まれることもあるので、それを楽しめる人にとっては刺激的な環境といえるでしょう。ただし、ファミリー的な和気あいあいとした雰囲気、一体感といったものを求める人にとっては、ストレスとなるかもしれません。

IPO前に入社した社員に引け目を感じることも

IPO(新規株式公開)を果たしたばかりの企業は、資金力がつき新たなチャレンジができるほか、IPO前のベンチャーと比較すると安定感もあるという点で魅力的です。転職の際、家族からの反対も受けにくいといえるでしょう。

しかし、IPO後に入社した経験幹部の方から、こんな声が聞こえてくることがあります。

「IPO前に入社した社員を越えることができない気がする」

創業した経営陣からすれば、IPO前の苦労とIPO達成の瞬間の喜びを共有した社員には、やはり特別な思い入れがあるもの。IPOの前に入社したか後に入社したかが、その後長期にわたり、会社でのポジションに影響することもあるというわけです。

能力やスキルは平等に評価されたとしても、精神的な面で「越えられない壁」を感じることもあるようです。

沈んでいる会社でこそ、チャレンジができることも

このように、直近の業績や組織の拡大ぶりから「成長企業」と見なすことができても、内部はイメージと異なる可能性もあるわけです。組織の状態や今後の事業戦略に注目し、自分が望むような働き方ができそうかどうかを見極めてください。

そして、「刺激的なチャレンジ」がしたいのであれば、むしろ衰退期にある企業、危機的状況に立たされている企業にも注目してみることをお勧めします。

私は、エグゼクティブの転職を数多くお手伝いしてきましたが、非常に優秀な方が、あえて破たん寸前の企業を転職先に選ぶケースが見られます。

その理由をお聞きすると、「1を2にするより、-1をゼロにするほうが、実は難易度が低い。しかし成果が見えやすいので、高く評価されやすい」とのことです。

しかも、既存社員からは「窮地を救ってくれた」ととても感謝される。そのやりがいは非常に大きい、といいます。

「マイナスの状況を打開し、盛り返した」という実績は、キャリアの価値のアップにつながるもの。成長企業だけに目を奪われず、「変革」「再生」を手がけるチャンスがある企業にも注目してみてはいかがでしょうか。

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は8月12日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
森本千賀子(もりもと・ちかこ)
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント
1970年生まれ。独協大学外国語学部英語学科卒業後、93年にリクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援、転職支援を手がける。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、つねに高い業績を挙げ続けるスーパー営業ウーマン。現在は、主に経営幹部、管理職を対象とした採用支援、転職支援に取り組む。
 2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『リクルートエージェントNO.1営業ウーマンが教える 社長が欲しい「人財」!』(大和書房)、『1000人の経営者に信頼される人の仕事の習慣(日本実業出版社)』、『後悔しない社会人1年目の働き方』(西東社)など著書多数。

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