3年後の糖尿病リスク 健診データで簡単判定
職場で定期健康診断の結果を渡され、異常値を示すマークがなかったので一安心……。
だからといって、今の生活習慣を続けることが「マル」とは限らない。国立国際医療研究センターの南里明子室長は「糖尿病は、各検査項目では正常範囲でも、喫煙習慣、腹部肥満などの要素が重なることで発症リスクが高まる」と話す。
今回、南里室長を中心とした研究グループが開発した「3年間の糖尿病発症を予測するリスクスコア」は、身近な健診結果を利用することで、異常値の有無にかかわらず3年後にどれぐらい糖尿病を発症する可能性があるかを示してくれる。
研究グループでは、企業などで健診を受けている約3万7千人分のデータを追跡調査。健診項目の中から、糖尿病の発症しやすさを示すリスク因子として性別、年齢、BMI、腹部肥満(腹囲)、喫煙習慣の有無、高血圧の有無、空腹時血糖、過去の血糖の状態を示すHbA1cを選んだ。各項目の結果を点数化し、その合計によって3年後の糖尿病発症確率を示すリスクスコアを開発した。
開発したリスクスコアは4タイプ。血液検査が行われない若い人のために空腹時血糖、HbA1cを用いないタイプを用意したほか、それに空腹時血糖、HbA1cのどちらかを追加したタイプ、その両方を追加したタイプがある。これにより「健診を受けているほとんどの人がリスクスコアを利用できる」(南里室長)というわけだ。
発症確率の算出は簡単だ。各項目の該当する点数を合計する。空腹時血糖、HbA1cの両方を含むリスクスコアの場合、合計点数が15または16点だった場合、3年後に25~34%の確率で糖尿病を発症することになる。
南里室長は「発症確率が高かった人は、これをきっかけに生活習慣を見直してほしい」と話す。なかでも家族に糖尿病の患者がいるなど、より高リスクの人は、早めに専門医に相談し「75g経口ブドウ糖負荷試験」などを受けることでも糖尿病リスクが高まっていないか確認することもできる。
このリスクスコアを、健診結果を「深く読み解く」ツールとして活用したい。
この人に聞きました
国立国際医療研究センター 国際医療協力局疫学・予防研究科 生活習慣病予防研究室。「身近な健診データを利用して、糖尿病予防に取り組んでもらいたい。今後は、利用できるデータを増やすなどして、5年後の発症確率を知るリスクスコアの開発にも取り組みたい」
(科学ライター 荒川直樹)
[日経ヘルス2016年7月号の記事を再構成]
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