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格安SIM2年で4倍、限界見えた価格競争の後の戦略 格安SIM最前線

2016/6/15

IIJの個人向け格安SIMサービスにおける回線数の推移

 大手の通信会社よりも安い月額料金でスマートフォン(スマホ)を使える「格安SIM」。格安SIMに参入する通信会社は今も増えており、競争が激しい。各社とも生き残りをかけて知恵を絞り、新サービスの開始や料金プランの値下げなど、毎月のように新しい動きが見られる。そこで、格安SIMを巡る動きの中から、特徴的なトピックスをピックアップしてみよう。今月取り上げるトピックスは、格安SIMの利用者増加に関する話題と、そこから見えてきた今後の戦略に関する話題だ。

■格安SIM大手「IIJmio」の回線数が70万を突破

 2016年5月13日、IIJmioのブランド名で格安SIMサービスを展開するIIJは2015年度の業績を発表した。

 決算資料によると、2015年度第4四半期(2016年1月~3月)における個人向け格安SIMサービス「IIJmio高速モバイル」は、74万7000回線に上る。2014年度同期の43万回線から7割以上、2013年度同期の18万1000回線からは4倍以上にまで増えたことになる。

 業界全体を見ても、格安SIMのユーザー数は順調に増加している。

 2015年12月にMM総研が発表した「国内MVNO市場規模の推移(2015年9月末)」によれば、2014年9月末に230万5000回線だった「独自サービス型SIM」[注]の回線数は、2015年9月末には405万8000回線に増加した。増加率は76パーセントで、IIJmioの2014年度第4四半期から2015年度同期にかけての増加率とほぼ等しい([注]通信会社がSIMカードを活用し、独自の料金プランで通信サービスを提供するもの、いわゆる「格安SIM」を示す)

 この利用者数の増加は、それだけ通信料を安く抑えたいという人が増えていることを示している。

 格安SIMを提供する通信会社は、いかに大手よりも安くスマホが使えるようになるかをアピールしてきた。他社の料金プランより10円でも安くするべく、最安値を追い求めて値下げを繰り返してきた格安SIMもある。

 こうした努力が格安SIM全体のユーザー数増加を支えてきたともいえるのだが、IIJ、BIGLOBE、So-net、ニフティといった主要なインターネットプロバイダーはもとより、イオンリテールといった通信事業とは異業種の業界からも参入する事業者が現れるなど、格安SIMを提供する通信会社は増加の一途にある。「大手の通信会社より安い」とアピールするだけでは不十分になりつつある。

 値下げ競争にも限界が見え始めている。

 インターネットプロバイダーのSo-netは、幾つかの格安SIMを提供している。そのなかの一つに、毎月のデータ通信量が500メガバイト未満であればデータ通信の料金が無料という「0 SIM」がある。データ通信専用SIMの場合は月額料金0円から、音声通話SIMの場合は756円から(税込み、以下同)となっている。

 もしもこの0 SIMより安いプランを提供するとなれば、無料で使えるデータ通信量の範囲を広げるしかない。MMD研究所が2015年11月に実施した調査結果によると、格安SIM利用者の18.3パーセントは、毎月のデータ通信量が1ギガバイト未満だという。仮に1ギガバイトまで無料とした場合、2割近いユーザーがデータ通信料金無料の対象となってしまう。これ以上安いプランを提供すると、事業として立ち行かなくなる可能性もあるのだ。

 このような状況のなか、格安SIMでは、「安さの追求」だけでなく「ユーザーの使いやすさ」の向上を目指した動きが現れ始めている。

■格安SIMの競争は「安さ」から「使いやすさ」にシフト

 使いやすさ向上に関する動きの一つが、長電話をするユーザーの通話料金を改善する動きだ。

 電話をかける時間が長い人やかける回数が多い人など、音声通話をよく利用するユーザーにとって、格安SIMの月額料金は必ずしも安いとは言えない。ほとんどの格安SIMは通話料金が30秒当たり21.6円の従量制で、大手の通信会社では一般的な「通話料金が定額のプラン」が用意されていなかったためだ。

 しかし最近では、ニフティの格安SIM「NifMo」の「国内かけ放題プラン」(月額1404円)や、エックスモバイルが提供する「もしもシークス」の「かけたい放題フル」(月額1944円)のように、通話料金が定額になるオプションを提供する格安SIMも登場している。

 また、楽天の格安SIM「楽天モバイル」の「5分かけ放題オプション」(月額918円)や、DTIの「DTI SIM」が提供する「でんわかけ放題」(月額842円)のように、各通話発信の最初の5分間だけが定額というオプションも登場している。

 従来の格安SIMはデータ通信量が多い人ほど大手の通信会社よりもお得にスマホを使えたが、音声通話を重視するユーザーは、通話料金の高さから乗り換えにくかった。通話定額制オプションの登場で、短時間の通話発信で済む人、5分以上の通話も多い人など、電話のかけ方に応じて格安SIMを選択できる環境が整いつつある。

 「音声通話が多い」という理由で格安SIM導入にためらった人たちを、この戦略でどれだけ取り込めるか、興味深い。

■実店舗を展開する格安SIMも増加

「格安SIMに興味はあるけれど、設定が難しそうで」と乗り換えに踏み切れなかった人たちに対する対応も充実してきた。格安SIMの契約や相談ができる店舗やカウンターの設置も増えてきたのだ。

 大手の通信会社ではショップの店頭で手続きや相談を受けられるのが普通だが、格安SIMの契約はオンラインでの申し込みが一般的だった。

 だが、ユーザーの裾野が広がるにつれて、スマホの初心者やシニア層が格安SIMを選ぶケースも増えてくる。オンラインの手続きではなく、店頭でスタッフに一つ一つ確認しながらサポートを受けたいと願う人もいるだろう。そこで、スタッフと対面で受付できる実店舗の拡充をアピールする会社も増えてきた。

 イオンリテールの「イオンモバイル」は、全国200店舗以上のイオン店頭で契約などの受け付けに対応。イオンの店舗網を活用し、サービス当初から店頭サポートをアピールする。同じ流通業界からの参入である楽天モバイルも、各地の楽天カフェや直営店で料金プランの相談や端末の試用ができる。

 インターネットプロバイダーのフリービットと、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の合弁会社であるトーンモバイルも、今年度中に全国のTSUTAYAのうち200店舗へのカウンター設置を目指すとしている。

 プラスワン・マーケティングの製品ブランド「FREETEL」は、格安SIMサービスの「FREETEL SIM」や、同社のSIMフリースマートフォンを扱う専用カウンター「FREETELコーナー」を、ヨドバシカメラの一部店頭などに設置している。独自の店舗は持たないものの、FREETELコーナーでは格安SIMの契約・開通や端末の購入など、FREETELのサービス全般に関するサポートを受けられる。

 この他にも、ビックカメラオリジナルの「BIC SIM」や、U-NEXTの「U-mobile」など、家電量販店の店頭や直営店舗で契約手続きを受けられる格安SIMが増えている。これまではインターネット経由での契約が主だった格安SIMだが、店舗のスタッフと相談しながら、その場で契約できる環境が整いつつある。

 「音声通話が多いから」「設定が難しそうだから」という理由で格安SIMへの乗り換えをためらっている人は、近くに店舗や専門カウンターがないか、確認してはいかがだろう。

(ライター 松村武宏)

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