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ポスト「成長の世紀」探る建築、日本の若手らが国際賞

ベネチア・ビエンナーレ国際建築展で特別表彰

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NIKKEI STYLE

イタリア北部のベネチアで開催中の世界最大級の現代建築展「ベネチア・ビエンナーレ国際建築展」で、「en(縁)」をテーマに掲げた日本館が国別参加部門で特別表彰を受賞した。特別表彰は最高賞の金獅子賞に次ぐ快挙。30歳代を中心にした若手建築家らの作品の何が評価されたのか。展示企画者(キュレーター)を務めた東京理科大学の山名善之教授に聞いた。

 日本館は「en(縁):アート・オブ・ネクサス」をテーマに、「新しい家族のかたち」「減築」「過疎」などのキーワードで、現代日本が直面する課題に挑んだ若手建築家12組の作品を紹介。授賞理由では「都市の過密な環境での集合住宅の新たなあり方を詩的な簡潔さで示した」。日本館は国別参加部門で1996年に磯崎新氏、2012年に伊東豊雄氏がそれぞれコミッショナーを務め金獅子賞を獲得している。

展示では大きく変わりつつある日本の社会状況における建築のあり方を示そうと考えました。

海外での日本現代建築のイメージは丹下健三氏や伊東豊雄氏、安藤忠雄氏など、経済が右肩上がりの豊かな社会を反映した建築です。しかし、かつてのような経済成長が難しくなり、これまでの近代的な建築、「モダンムーブメント」は過去のものになったといえます。

大建築家による「大きな物語」の終わり

このため、権威ある著名建築家を後追いするのではなく、もっと素直に、しなやかに社会や時代を捉え、人と人とのつながりの中で、小さな仕事でも非常に丁寧に手がけていくような建築家たちを選びました。

当初はテーマとして「シェアリング(共有)」ということを考えました。ただ、「シェア」では「すでにあるものを共有する」ということになってしまいます。そこで、「ネクサス(結びつき、つながり)」という言葉が出てきました。

しかし、展覧会のつくり方として、それだけではあまりに単層的になってしまいます。展示に参加してもらう建築家たちと議論を進めるなかで、「何と何を結ぶか」ということを考えると、まず「人」だろうと。次に「モノ」、そして「地域」となり、展示のコンセプトを「人の縁」「モノの縁」「地域の縁」の3章構成とすることに決めました。

展示にあたっては会場の「日本館」も意識しました。20世紀を代表するフランス人建築家、ル・コルビュジエに師事した吉阪隆正氏の作品で今年、完成60周年を迎えます。コルビュジエ作品の特徴である「ピロティ」(1階部分を柱だけで構成する構造)を採用しています。ここに「縁側」を配置して、2階の展示を回遊した後、感想を話し合えるようにしました。2階中央の床に開口部があるため、ピロティでしゃべる声が階上の展示室にも聞こえます。アートに自由にアクセスできるという建物自体の意味をみせたいと考えました。

若手女性建築家のユニット「teco」が手がけた会場デザインや、映像作家の菱川勢一氏による展示映像も高く評価されました。

「人の縁」

展示作品でメッセージ性が強いものとしては、西田司、中川エリカ両氏の「ヨコハマアパートメント」があります。4つのワンルームを4本の壁柱で地上5メートルに持ち上げたピロティ構造で、地上階をリビング、居住者の共用空間とした集合住宅です。

近代家族は夫婦と子供2人の4人家族が基本とされ、公団住宅やマンションなどの商品としての建築はそれを前提としています。しかし、単身世帯の増加など、そうしたモデルが成り立たなくなってきています。この建物はそうした多様性を包含できるように住居を地上高く持ち上げ、広場をつくったというわけです。

完成から7年となりますが、居住者がリビングに下りてきて仕事をしたり、ほかの住居の人たちとご飯を食べたり、さらに近くに住んでいる高齢者が遊びにきたりしています。

横浜市は戦後の経済成長と共に発展した街です。数多く造成された郊外住の宅地では、高齢化が急速に進み、老夫婦や高齢者単身者が4人家族向けの住宅に住み続けています。この建物は、今まで規範とされてきたものをベースにせず、ある種の新しい「en(縁)」をつくり出すことに成功した建築といえます。

< ほかの出展作品 >

・不動前ハウス(常山未央/mnm)

・LT城西(成瀬・猪熊建築設計事務所)

・食堂付きアパート(仲建築設計スタジオ)

「モノの縁」

増田信吾、大坪克亘両氏の「躯体(くたい)の窓」は、もともと企業の研修所だった建物を週末住宅兼ハウススタジオに用途変更(コンバージョン)したものです。2階建て建物の躯体だけを残し、部屋と部屋を仕切っていた壁を壊し、さらに建物と外部を区切っていたファサード(正面外壁)とバルコニーを取り除きました。代わりに、3階分の高さのある巨大サッシを建物前面に据えつけ、ガラス窓で建物を覆いました。

建築家がやったのはこれだけです。不要なものを徹底的に取り除いてミニマルな姿にして、その前面に透明な壁を設けることで、もともとあった構造物に対するリスペクト、敬意を表現しています。単に建築の再生にとどまらず、新たに多様な意味を加えたという点で、「モノのen(縁)」の典型的な事例にあたると考えました。

・高岡のゲストハウス(能作アーキテクツ)

・駒沢公園の家(今村水紀+篠原勲/miCo.)

・15Aの家(レビ設計室)

・渥美の床(403architecture [dajiba])

・調布の家(青木弘司建築設計事務所)

「地域の縁」

少子高齢化で都市への人口集中と農村部の過疎化は深刻さを増しています。そうしたなか、過疎化の現状を受け入れながら活力の維持をめざす「創造的過疎」に取り組む徳島県神山町の取り組みが注目を集めています。高通信網の整備で、IT(情報技術)企業などのサテライトオフィスの集積に成功した地域です。

伊藤暁、坂東幸輔、須磨一清の各氏らによる建築家グループ「BUS(バスアーキテクツ)」はこの神山町で、移住者支援のための空き家改修や進出企業のための設備整備を手がけてきました。

今回の展示では5つの建物を「神山町プロジェクト」として紹介しています。なかでも築80年ほどの古民家をオフィスに改築した「えんがわオフィス」は特徴的な建物です。

当初、都会から移住してきた新しい住民たちはオフィスとした空き家の中にこもって仕事していたため、周辺の人たちは「あの人たちは何をしているのかしら」といぶかしみ、双方の間には距離があったそうです。

そこで、外壁を取り払いガラス張りにして縁側をつくることで、コミュニケーションしやすくしたのがこの建物です。新しい建物を建てるのではなく、もともとあった建物を利用することで、地域の風景に配慮しつつ、都会と地方、2つの地域性つなぐ仕組みとしたわけです。

・馬木キャンプ|美井戸神社(ドットアーキテクツ)

もう建築は「最先端」を追わなくていい

今回のビエンナーレ全体のテーマは「最前線からの報告」です。金獅子賞をとったスペイン館のテーマは「未完」。金融危機で中断した著名建築家のプロジェクトをパネルなどで紹介しています。いってみれば墓標が並んでいるようなものです。これまでのような成長が見込めない状況をテーマとした点で、本質的には日本館の展示と共通していて、裏と表の関係にあったと思います。

もう建築は「最先端」を追わなくていいのだと思います。縁側には壁はありません。壁と壁の間に住むという、コルビュジエによる集合住宅の代表作「ユニテ・ダビタシオン」のような生活は、そろそろ止めたほうがいいのだと思います。成長を追い求めてきた社会で今後、何が起こるのか。「豊かさ」というもの現実に即して見直さないと、人間も壊れてしまうし、地球も壊れてしまう。破綻に向かうのではなく、社会のあり方を見直さなければならないのではないでしょうか。

山名善之氏(やまな・よしゆき)
東京理科大学理工学部建築学科教授
1966年生まれ、東京都出身。90年東京理科大卒業。香山アトリエ/環境造形研究所、仏パリ・ベルビル建築学校DPLG課程(仏政府給費留学生)、仏パリ大学パンテオン・ソルボンヌ校博士課程。仏アンリ・シリニア・アトリエ(パリ・文化庁在外派遣芸術家研修員)、仏ナント建築大学契約講師などを経て、2002年から東京理科大勤務。ICOMOS(国際記念物遺跡会議)、近代建築保存の国際学術組織DOCOMOMOのメンバーとして活動。妻はフランス人建築家で長男、次男の4人家族。

(聞き手は平片均也)

en[縁]:アート・オブ・ネクサス

著者 : 山名善之, 菱川勢一, 内野正樹
出版 : TOTO出版
価格 : 1,620円 (税込み)

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