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出世=昇進で平均の1.7~2.2倍の年収が手に入る 今ドキ出世事情~あなたはどう生きるか(5)

平康 慶浩 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント

2016/6/7

PIXTA

今私たちの目の前にある出世ルートにはどういうものがあるのでしょう。2010年以降、私たちが現実的に選べるルートは3つあります。今回はその1つ目を紹介します。王道と言える出世パターンも、時代の変化の影響を受けてそのあり方を変えています。

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これまでの分析によって、生涯を通じて高い収入を得たいのなら、中小企業よりも大企業を選ぶべし。大企業の中でも、右肩上がり型か、せめて山型(おじぎ型)を選ぶべし。それは具体的には製造業とか建設業とか、IT関連業、金融業、不動産業を選ぶべきだ、ということがわかりました。

しかし現時点でそのような条件で働けている人は、大企業の中でも約40%。正社員全体で見れば約19%です。残る81%の人たちは、働いている会社が大企業でないとか、あるいは右肩上がりでも山型でもない業界で働いているということです。その場合、何らかの出世ルートに乗らない限り、生活の改善は難しく、また将来にも不安が残ります。その中でも、王道と言える出世ルートがあります。

■王道出世は今いる会社で上に行くこと

王道と言える出世ルートは、やはり今いる会社で昇進することです。昇進することによって手に入るのは、その会社の一般社員年収のおよそ1.7倍から2.2倍の年収です。たとえばある会社の一般社員年収平均が400万円くらいだとしましょう。この会社で課長になれば、たいていの場合600万円の年収にはたどりつきます。部長になれたら900万円近くにはなります。

一般社員年収500万円のメーカーの場合、課長の年収は850万円で部長年収が1100万円、一般社員年収650万円の金融機関だと、課長の年収が1100万円で部長年収が1400万円、ということです。

ほとんどの人は、今の年収の2倍が手に入るならやる気を出すといいます。だとすれば、今いる会社で上を目指すのなら年収が倍以上になる部長を目指すべきです。そしてゴールが部長になるような出世を実現するには、それよりも少し上の役員か、できれば常務を目指して頑張ると良いのです。

上を目指すための出世方法については、2014年、2015年にそれぞれ出版した日経プレミアシリーズの『出世する人は人事評価を気にしない』、『出世する人は一次会だけ参加します』で紹介しています。また、常務を目指すためのさらに詳しい出世方法については『逆転出世する人の意外な法則』(プレジデント社)に詳しく記載していますので、ぜひ読んでみてください。

■上を目指すことには犠牲がつきもの

上を目指す出世は、少ないリスク(転職などのチャレンジがいらない)で中くらいのリターン(年収の増加と、周囲からのわかりやすい賞賛)が得られますが、一方でデメリットもあります。それはプライベートが犠牲になること。

残念ながら多くの企業では、課長や部長などの管理職になっても、自由な時間が増えることは稀です。労働政策研究・研修機構の調査「管理職の労働時間と業務量の多さ」[小倉一哉、2009年]によれば、役職が上がるにつれて月あたりの労働時間は増えます。その一方で、管理職に法的に認められている「出退勤時間を自由に決める」権利すら、行使できている人は課長・部長問わず40%程度です。王道出世では働く時間が増えるのに自由は得られない、ということが現実なのです。ちなみに月あたり労働時間の平均も課長で約213時間、部長で216時間と月の残業時間は50時間を超えているのが実態のようです。

昔とは異なり、最近はどの会社でも偉くなるほど仕事が忙しくなってゆきます。その理由は職務主義にあります。課長は課長、部長は部長の仕事をちゃんとしなければいけないということです。今20代から30代の人は「そんなのあたりまえだろう」と思うかもしれませんが、20年以上前を知っている世代の人たちは、そうじゃない時代があったことをご存じでしょう。いつかまた「部長になれば仕事は部下に任せて、一日のんびりしていられる」という時代が来るかもしれませんが、しばらくは難しそうです。

■ライフスタイルの変化にあわせて出世方法を見直す

プライベートを確保しながら王道出世を目指すことはできないのでしょうか。

近年ダイバーシティーの研究が進んで、企業における多様な働き方の整備が進んでいます。しかし実際にはその進みは遅々としたもの。裏付けとなるはずの経営学においても「ダイバーシティーって実は業績に逆効果じゃない?」という内容の論文が示されたりして、ブレーキがかかっている感が否めません。

そして多くの会社の経営者は、目の前のわかりやすい結果を求めます。だから、ダイバーシティーへの逆張りとしてあえて「プライベートを犠牲にできる男性正社員のみ」で従業員を構成して業績を伸ばしている会社も出てきたりしています。

男性正社員を支えるのは、専業主婦の女性です。高度成長期日本の標準的な家族は正社員の夫に専業主婦の妻、そして2人の子どもでした。しかし現在では共働きの世帯が半数を超えていますし、家庭の子どもの数も減っています。

となれば、「正社員の夫と専業主婦の妻」ではない形のライフスタイルを前提にして出世を考える方が自然です。例えばその一つの形が、パートナーとの共働きを前提とした出世方法です。一言で言えばそれは、互いに支え合うライフスタイルです。

共働きのスタイルだと、出世で目指すべきポジションも少し低くすることができるので、犠牲にするプライベートも減らせます。たとえばあなたが現在、平均年収500万円の会社で働いているとします。王道出世で1000万円年収の部長を目指すこともできますが、実現する頃にはおそらくかなりのプライベートが犠牲になっているでしょう。しかしパートナーと二人で世帯所得1000万円を目指すのなら、プライベートを犠牲にする割合を少なくできます。ちなみに個人給与所得1000万円の人の割合は5.8%ですが、合計年収1000万円の世帯割合は11.1%なので、達成できる可能性も2倍になります。

■そこそこ出世でワークとライフをバランスさせる

世帯年収1000万円を実現するためには、大きくわけて2つのパターンが考えられます。

第一のパターンは対等型。互いに500万~600万円の年収を維持すれば合計して1000万円以上の世帯年収になります。このパターンのメリットは、それぞれがビジネスでの働きがいをもって生活できているので、気力が充実していることです。

第二のパターンは補完型。どちらかが収入の主体となって、もう一人がそれを支えるパターンです。例えば一方が年収750万円の課長になって、もう一方が年収400万円くらいの一般社員として働き続けること。このパターンでは役割分担がはっきりしているので、何らかのイベントが起きた時の意思決定がしやすいというメリットがあります。

2010年以降、首都圏在住で結婚している方々に働き方を尋ねてみると、多くの方々がすでに上記のような働き方を実践しています。夫がバリバリと出世を目指し、妻が専業主婦としてそれを支えている、という家庭はむしろ地方に多いようです。

しかしこれらのパターンを実現したとしても、自由度がとても大きくなるのかといえばそうではありません。また、休業すれば現状維持すら難しくなります。

■出世でお金と自由の両方を手に入れることはできないのか

ライフイベントに伴う休業によって出世に悪影響が出るということは「出世する人は一次会だけ参加します」に詳しく書きました。それは別にマタニティーハラスメントやパタニティーハラスメントというわけではなく、休業を取っている期間が評価対象とならないので、昇進候補にあげられなくなる、ということです。

共働きが増えていてワークとライフのバランスを取りやすくなっているけれど、一度休業するとなかなか復活できない。この状況をクリアしないことには本当の意味での出世=地位や名誉やお金を得るとともに自由も得る状態にはなれなさそうです。現状ではやはり、自由を得ると地位や名誉が手に入りづらい。

それぞれの会社の昇進ルールを改善する人事制度改定は私のような人事コンサルタントに任せていただくとして、制度改定を待たずに対応するにはどうすればいいのでしょう。

言い換えるなら、会社の中で出世して、お金と自由の両方を手に入れる方法はあるのでしょうか。次回は二つ目の出世ルートとともに、そのあたりの答を探してみましょう。

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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