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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回から3巡目に入り、大手町の紀伊国屋書店大手町ビル店を三たび訪れた。4月初め、ゴールデンウイーク明けに続く訪問である。担当者に話を聞いていると、メーンの平台でいきなり大きな動きがあった。

『捨てられる銀行』を100冊まとめ買い

メーンの平台のほぼ中央に6列ほど積まれていた橋本卓典『捨てられる銀行』(講談社現代新書)が書店員の手でみるみる積み上げられていく。経済書やビジネス書を担当する広瀬哲太さんが本をまとめている店員に聞くと、「100冊のお買い上げです」と答えた。ベストセラーランキングに掲載されるために著者やその関係者がするまとめ買いではなく、周辺に立地する銀行からの実需ベースのまとめ買いだった。メーンの平台から『捨てられる銀行』が消えた。

本は新書コーナーの平台からもかき集められて何とか100冊そろえられたようだが、これで店頭在庫は売り切れ状態だ。同書の好調な売れ行きは先週の八重洲ブックセンター本店の様子でもお伝えした。東京でも有数の金融街といえる大手町では八重洲を上回る勢いだ。この時期に限れば金融関係者の必読書になっているといえそうだ。

どのコーナーでも売れる橘玲氏

もう一つ、広瀬さんが注目するのが作家、橘玲氏の本だ。橘氏は『マネーロンダリング』などの経済小説をはじめ、投資や国際金融、政治や社会全般の様々な事象から自然科学、社会科学の知見まで幅広いテーマで旺盛な執筆活動を続けている。週刊プレボーイや日経ヴェリタス、ウェブマガジンなど執筆媒体も多彩だ。こうした成果がこのところ一気に書籍化されている。

まず4月初めに文庫化された『タックスヘイブン』(幻冬舎文庫)。タックスヘイブン(租税回避地)をめぐる国際経済小説で、単行本として出たのは2年前だったが、文庫発売のタイミングがパナマ文書のニュースと重なり、その後も好調な売れ行きが続く。4月下旬には新潮新書の1冊として『言ってはいけない』が刊行された。こちらは遺伝や見た目、教育にかかわる残酷な真実を語る内容で、これまた発売から1カ月あまり、売れ続けている。さらに5月下旬、ソフトカバーの単行本で『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』(集英社)が刊行され、これも出足がいいと言う。こちらは週刊プレイボーイ連載のエッセーをまとめた社会時評集だ。

厳密な分類ではビジネス書にはあたらないが、「ビジネス書的な関心のもたれ方をしている」と広瀬さん。それだけに単に新書コーナーや文庫コーナーに置くだけでなく、メーンの平台にパナマ文書関連本として並べるなど、多面展開している。

それでは先週のベストセラーを見ていこう。今回は新書のベスト5を紹介する。

(1)捨てられる銀行橋本卓典著(講談社現代新書)
(2)言ってはいけない 橘玲著(新潮新書)
(3)クリエイティブ人事曽山哲人・金井壽宏著(光文社新書)
(4)日本会議の研究菅野完著(扶桑社新書)
(5)21世紀の戦争論半藤一利・佐藤優著(文春新書)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2016年5月23日~5月29日)

第1位は冒頭に触れた『捨てられる銀行』、2位が橘氏の『言ってはいけない』で、広瀬さんの印象に残った本がランクインしている。3位は2014年刊の旧刊だが、近くで開かれた人事担当者向けのイベントにブース出店して販売したために特別の反応があった。4、5位には骨太のノンフィクション、社会評論が並んだ。

(水柿武志)

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