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保険の新常識

保険はどこで買うのがいい? 保険コンサルタント 後田亨

2016/6/8

この連載では一般のお客様との対話を通して「実は間違っている保険の常識」を考えます。今回は「保険はどこで買ったらいいの?」という素朴な疑問をとりあげます。相談に来られた会社員の男性Kさん(33)との会話です。

Kさん(以下K):「保険ってどこで入るのがよいんですか? 知人が外資系生保の営業マンなので勧誘されますが、保険ショップやネットの保険もあるので迷っています」

後田(以下U):「迷いますよね。まず、外資系に限らず特定の会社の営業担当者は避けたほうがいいと思います。他社に優良品があっても自社商品を推奨せざるを得ない立場だからです」

K:「やはり、そうなるでしょうね」

U:「私が大手生保の営業職をやめたのは、大手の商品はおおむね他社商品より保険料が高かったため、自己を正当化できなくなったからなんです」

K:「では、ショップのほうがいいのですか」

U:「商品を比較検討できるという点ではショップなどの代理店がいいでしょう。ただ、どちらも同じ問題を抱えていると思います」

K:「何ですか?」

U:「『販売ありき』になりやすいということです。たとえば『老後資金が不安です』と相談すると『個人年金保険』などを案内されるでしょう。『リスクをあまり取らずに資産形成する手段の一つに個人向け国債があります』とか『保険よりも確定拠出年金を優先して検討すべきです』といったアドバイスは期待しにくいのです」

K:「お客さんが個人向け国債や確定拠出年金(DC)にお金を使って、保険に回すお金がなくなると困ってしまう、ということですか?」

U:「はい」

K:「でも、そもそも個人向け国債などを買うことが、保険に入るより有利な選択なんですか?」

U:「銀行や郵便局で保険販売に携わっている知人たちは『保険販売を奨励されるのは悩ましい』と言っています。個人向け国債の変動金利型10年であれば金利の上昇にも対応できるし、確定拠出年金の節税効果は個人年金保険より断然高い、といったメリットを彼らは知っているからです」

K:「本当ですか?」

U:「はい。外資系保険会社の営業マンや乗り合い代理店の人から、同じ悩みを打ち明けられたこともあります。保険を売らなければ生きていけないけれども、お客さんの側から見ると、手数料を稼ぎたい金融機関の都合で不利な選択肢を提示されているからです。保険以外の選択肢について勉強している人ほど悩むようです」

K:「では、ネットの保険会社はどうでしょうか?」

U:「根本的には変わらないです。たとえば、ネット生保で働く人の中にも、主に入院に備える医療保険について『保険に入るより自分で入院費などを負担するほうが合理的』と考えている人は珍しくありません。とはいえ『正直、自分では入る気がしない保険です』と自社のサイトで公言することはできないでしょう」

K:「会社員ですからね(笑)」

U:「『どこで買ったらいいのか』以前に、『そもそも買うべきなのか、他の選択肢があるのではないか』という問いかけが重要ですが、どの業態でもそこはスルーされがちですよね。手数料ビジネスの限界というか」

K:「う~ん。結局、どうしたらいいんですか?」

U:「保険会社や代理店の人ではなく、金融機関などに所属していないファイナンシャルプランナーの人に相談するという選択肢があります」

K:「お金がかかりますよね」

U:「無料相談だと、相談にかかる時間と労力を販売手数料で回収することになります。つまりタダでは済ませないぞ(笑)となりやすい。そのほうが怖くないですか?」

K:「まあねぇ……」

U:「保険料を安心料だという人に倣うと、相談料は『用心料』だと思います。相談料を払うことで、加入ありきの助言に傾くことを防ぐわけです。結果、どうしても加入すべき保険があればショップなどで比較して加入するといいでしょう。ただ、気をつけてほしいこともあります。次回、お話ししますね」

後田 亨(うしろだ・とおる) 大手生命保険会社や乗り合い代理店を経て2012年に独立。現在はバトン「保険相談室」代表理事として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。著書に「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)や「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」「保険外交員も実は知らない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。公式サイトはhttp://www.seihosoudan.com/とhttp://www.yokohama-baton.com/

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