お釣りで投信積み立ても 近未来のマネーライフ家計にフィンテック(4)

フィンテックが浸透していくと、個人のマネーライフにはどのような変化が起きるのでしょうか。海外の状況なども気になります。

某月某日。カフェでランチを終えたAさん。「846円になります」。レジでAさんが出したのは財布でもスマホでもなく指。指紋認証で1000円を支払うと、お釣りの154円は自動的に証券口座へ振り込まれた。一定額に達すると自動的にETF(上場投資信託)を購入するサービスだ。小銭を貯金する感覚で投資できる――。

そう遠くない将来、こんな生活が実現するかもしれない。スマホがあれば決済、送金から投資まで手軽にできる時代になったが、スマホさえ不要になる技術がすでに登場している。

ベンチャー企業のリキッド(東京・千代田)は指紋認証方式の決済サービス「リキッドペイ」を手掛ける。利用者はあらかじめデポジット(預かり金)やクレジットカード情報を登録しておく。商品やサービスの購入時に指紋をかざして本人確認をし、決済が完了する仕組みだ。ハウステンボス(長崎県佐世保市)が試験導入している。

「買い物をするたび未来へ投資ができる」。こんなキャッチフレーズを掲げるのは少額の投信積み立てサービスを提供する米エイコーンズだ。クレジットカードは通常は代金分だけ決済するが、同社が提供するサービスは、例えば14.32ドルの買い物をすると15ドルが引き落とされ、1ドル未満の釣り銭が積み立てに回る。

いますぐ友人にお金を返したいが、ATMでお金を下ろすと時間外手数料がかかるし、ネットバンキングだと振込手数料がかかってしまう。フィンテックによって手軽で安価な個人間の送金が可能になった。

楽天銀行やLINEはSNSを使った個人間の送金サービス開始。ヤフーも5月に参入し、利用者の裾野が広がりつつある。いずれもスマホに専用アプリをダウンロードし、利用登録して使う。送金相手の口座の情報などは必要ない。相手と金額を指定すれば、SNSで「友達」にメッセージを送る感覚で送金できる。

将来はフィンテックとマイナンバー制度の連係もあり得る。例えば個人の医療情報とひも付ければ、「年間の通院履歴によって支払った医療費の合計がわかるので、確定申告で医療費控除に利用できる」(大和総研経済環境調査部の町井克至主任研究員)。

金融庁は4月、「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」を設置。フィンテック分野でベンチャー企業の成長を後押しする環境整備に乗り出した。銀行によるIT企業への出資制限を緩める内容を盛り込んだ改正銀行法も成立した。近い将来、個人のマネーライフを塗り替える画期的なサービスが出てくるかもしれない。

=この項おわり

[日本経済新聞朝刊2016年6月1日付]

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