毎月分配型ファンド、高い分配金を払えるカラクリQUICK資産運用研究所 清家 武

PIXTA
PIXTA

「毎月分配型ファンド」が高い分配金を背景に過去10年で急成長を遂げ、今年4月末時点の純資産総額は35兆円を超えた。しかし、なぜ他の金融商品と比べて高い分配金を出すことができるのかについては、意外と知られていない。今回は「毎月分配型ファンド」が高分配を実現できる仕組みについて解説した。

収益調整金が重要な役割

毎月分配を可能にする原資の基本は、債券や不動産投資信託(REIT)など組み入れ資産からのインカムゲイン(利息・配当等収益)だが、安定的に分配を継続するために「収益調整金」というものが重要な役割を果たしている。

収益調整金とは新たな投資家が投信を購入する追加設定(資金流入)によって、既存のファンド保有者への分配可能額が減らないように設けられた日本の投信特有の勘定科目だ。

投信の分配金にかかわる勘定科目には、当期の「配当等収益」「有価証券売買等損益」に加え、前期から繰り越された「収益調整金」「分配準備積立金」があり、そこから分配金が支払われる仕組みになっている。

実在する先進国債券型の「ファンドA」を詳しく見てみよう(表A)。分配可能原資を見ると、分配金が20円であるのに対し、経費控除後の組み入れ資産の「配当等収益」は11円であり、当期の組み入れ資産の収益で分配金の55%をまかなっていることが分かる。つまり、それ以外は前期から繰り越された分配可能原資から分配していることになる。

繰越分配可能原資のうち組み入れ資産の収益の蓄積ともいえる「分配準備積立金」34円に対し、「収益調整金」は131円とはるかに大きい。

多くの毎月分配型ファンドも同様の状況であり、過去の追加設定により膨らんだ「収益調整金」が分配可能原資の中心になっている。その結果、組み入れ資産の利回り水準より高い分配金を支払うことが可能になるわけだ。

例えば、先進国債券市場の最終利回りは1.5%程度だが、先進国債券を投資対象とした毎月分配型ファンドは分配金利回りが5%以上のものが多く、この乖離(かいり)は収益調整金がもたらしたものと考えられる。

分配金の希薄化を防ぐ

収益調整金を理解するために、わかりやすい例を挙げよう(図B)。

投資家Aの資金によって投資信託を10000円設定し、決算直前までに300円の分配原資(組み入れ資産からの利子など)がたまっていたと仮定しよう。投資家Aは決算期に300円の分配金がもらえると楽しみに思っていたところ、決算(分配)直前に別の投資家BがAと同じ口数を追加投資してきたとする。

投資家Bの購入金額は元の10000円に分配原資300円が積み上がってくるので、10300円ということになる。その直後に決算を迎えたとすると、たまっている分配原資は300円しかないので、この300円を2人で分ける形となり、1人あたりの分配金額は150円と投資家Aの当初予定した分配額より減ってしまう。これを分配金の希薄化という。

この分配金の希薄化を防ぐために、投資家Bの資産10300円のうち、10000円を超える300円の部分を収益調整金に入れることで、そこからも分配が可能になる。つまり、分配可能原資は300円+300円=600円となり、1人あたり300円の分配金を出すことが可能になるのだ。

このように、収益調整金は分配金の希薄化を防ぐために重要な役割を担っている。一方で、大量の追加設定(資金流入)により収益調整金の規模が拡大し、運用の実態以上に高い分配金を支払うファンドを多く生み出してきた(表C)。

分配金が組み入れ資産の利回り水準を上回り、かつ追加設定が少ないファンドは分配可能原資が減少し、分配金が先々減額されるリスクがあるため注意が必要だ。

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし