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公園は誰のもの?「禁止」やめて新ルール模索

2016/5/31 日本経済新聞夕刊

南池袋公園(東京都豊島区)は公園運営に新しい方式を導入した

 誰でも利用できる身近な公共の場のはずの公園。ところが、目立つのは「ボール遊び禁止」「大声は出さない」「ペットはご遠慮を」など禁止事項の看板ばかり。利用者のマナーに対する周辺住民からの苦情で、公園を管理する自治体が自主規制しているからだ。そんな中、もう一度皆が楽しめる公園にしようと、住民自らルールを作る新しい取り組みも始まった。

 4月2日、JR池袋駅東口から300メートルほどの場所に「南池袋公園」(東京・豊島)がリニューアルオープンした。中央に広がる鮮やかな緑の芝生に寝そべる若者や、公園内のレストランに行列する家族連れ。少し暗くて危険な印象だった都市公園が生まれ変わった。

 実は変わったのは見た目だけではない。運営方法に特徴がある。公園は、豊島区が土地を所有・管理する区立公園。樹木の剪定(せんてい)などハード面は区が受け持つが、公園の具体的な利用方法やルールづくりは地域の関係者で作る「南池袋公園をよくする会」に任せる方式を取り入れた。

 会のメンバーは地元の商店街や町会、公園に隣接する寺院、公園内に出店したレストランの経営者、区の代表ら9人。出店したレストランから売り上げの0.5%を地域還元費として寄付し、公園で会が企画するイベントなどの資金にあてる。区から特段の補助金は無い。

 活動は始まったばかりだが、野菜生産者と組んだ即売会の開催、地元小学生による芝生栽培など様々なアイデアが浮上。メンバーでレストラン経営の金子信也さんは「公園を都市のリビングにしたい。あれもこれもダメというネガティブ規則ではなく、住民自身が前向きに活用を考え、実現できる場を目指す」と話す。

 公園内で開くイベントなどからも売り上げの一部を「会」の活動資金にしていく。「公園全体が収益や雇用を生めば、持続可能な公共空間が実現できるはず」(金子さん)。区は当初「外部の指定管理者に運営を任せる方法も考えた」(公園緑地課)。しかし「地元との接点がなくなれば結局ルールが守られなくなる」と地元に任せた。

 千葉県北西部の野田市。9月1日をメドに「都市公園設置及び管理に関する条例」を改正し、市内の都市公園での火気利用などを禁止する方針を決めた。理由は、一部の人の身勝手なマナー違反だ。

利用者のマナーが問われている(野田市のスポーツ公園)

 利根川に面した市スポーツ公園。休日の昼前には、県内外からの来訪者で駐車場は満車になる。脇には「警告 ここはバーベキュー施設やキャンプ場ではありません」と書かれた看板が立つ。

 野田市が看板を立てたのは約2年前。良識ある利用ならばと、バーベキューも禁止はしていなかった。口コミで人気が広がると同時に、芝生の上で火をおこしたり、早朝から場所を取ったりする利用者が増加。食材の残りや炭の燃えかすを捨てるマナー違反や利用者同士のけんかも起き、近所からの苦情も増えた。「指導や看板だけでは限界」(みどりと水のまちづくり課)と規制強化に踏み切る。

 一昔前ならば許容されていたようなことにも苦情が出るというのだ。「市民の声が届けば管理者として何らかの対応をせざるを得ない」。同市は昨年度、公園利用の禁止事項や注意を書き込んだ看板を市内の公園に約200基設置。看板は30~40種類ある。

 あまりの過剰反応に対し、船橋市の中学生から「ボール遊びができる公園に戻してほしい」と“抗議”の声も。昨夏、市長と語る「こども未来会議」で要望した。市は今年9月からボール遊びを一部解禁する。ただ「当面は公園と時間を限定し、職員の監視の下で遊んでもらう」と、周辺の対応に神経をとがらせる。

 ところが、公園周辺の住民に配慮し、トラブルを避けたい自治体は「苦情が来ればまずは禁止を打ち出す」(同)。禁止項目が増えると、利用者側も「公園ではボール遊びは控えるべきだ」と思い込みがち。公園が住民から遠い存在になれば、治安の悪化にもつながりかねない。

 生活する人が便利で楽しいと思える公園にするにはどうすればいいのだろう。建築家で、公共空間の活用に詳しい馬場正尊さんは「行政は安全や秩序を保つために過剰防衛になり、市民も管理に厳格さを求めがち。公共空間を有効に使うには、双方がもっと柔軟に意見しあうのが大切」と話す。公園は誰のものか、いま一度考えてみてはどうだろう。

(田辺省二)

〔日本経済新聞夕刊 2016年5月31日付〕

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