「文化のオリパラ」、アーティスト5万人競演へ

「オリパラ親善大使」としてアスリートに加え、映画監督の河瀬直美氏(左端)、パリ日本文化会館元館長の竹内佐和子氏(右端)の文化人も起用された(5月10日、東京で開かれた就任式で)
「オリパラ親善大使」としてアスリートに加え、映画監督の河瀬直美氏(左端)、パリ日本文化会館元館長の竹内佐和子氏(右端)の文化人も起用された(5月10日、東京で開かれた就任式で)

五輪はスポーツだけでなく、文化の祭典でもある。オリンピック・パラリンピック東京大会に備え、文部科学省はイベントの情報発信をする親善大使役の「アンバサダー」5人のうち文化人を2人起用。「スポーツだけではないオリパラ」の浸透を狙う。大会までの4年間で国内外の延べ5万人のアーティストが様々な文化交流を進める計画だ。

「殯(もがり)の森」「あん」などの作品で知られる映画監督の河瀬直美氏と、パリ日本文化会館元館長の竹内佐和子氏。5月10日に東京都内で開かれたアンバサダー就任式に、2人の文化人の顔が並んだ。米大リーグなどで活躍した元野球選手の松井秀喜氏、女子レスリングの伊調馨選手、パラリンピック競泳女子の成田真由美選手とともに、5人で大会や関連イベントをPRする。

竹内氏はフランスで10年以上生活した経験を踏まえ、「文化はうまくプロデュースできなければ、人が集まらず、(成否の)格差がはっきり出る。フランスの文化はホテル、レストラン、美術館、劇場などの総合的なプロデュースが上手で、それが空間のプロデュースにつながっている」と文化面でのPRの重要性を強調。「アスリートやアーティストだけでなく、建築家、デザイナー、メディアがどんな演出をするかが競争力を左右する。新しい人の流れが大切になる」と就任の抱負を語った。

「殯の森」でカンヌ国際映画祭のグランプリを獲得した河瀬監督も海外での知名度は高い。式では1997年に同映画祭で新人賞にあたるカメラドールを受賞した時を振り返り、「過疎化が進む山村を描いた作品についてフランスの審査員から『フランスの村にも同じ光があり、その中で育まれている』と言われた」と述べた。「国が違っていても同じ地球人であり、同じように降り注ぐ光、そして風を受け、それをいとおしんでいる。こうした心の豊かさは日本人にもあって、こうした文化がないと経済は動かないと感じた」と指摘。監督が作品のテーマとする過疎、高齢化などは、日本が抱える社会の実像とも重なる。

五輪憲章はスポーツを文化や教育と融合させることをうたっており、過去の五輪でも「カルチュラル・オリンピアード」と呼ばれる文化・芸術プログラムが実施されてきた。ロンドン大会では、2012年までの4年間で18万件の文化・芸術イベントが英国各地で開催され、約4万人のアーティストが参加。大会を成功に導く大きな要素になったとされる。

日本はロンドンを上回る4年間で20万件、アーティスト5万人の参加が目標。政府はリオデジャネイロ大会終了後の10月19日から4日間、国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」を開催する。リオ大会直後から国内外で「次は東京」という期待感を高める狙いだ。

フォーラムは国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長、国際パラリンピック委員会(IPC)のクレーブン会長らを招く。初日は京都市で、海外からの来賓らに伝統芸能や和食を体験してもらう「京都文化体験プログラム」を用意。世界遺産の二条城では、琴や尺八による日本の伝統的な音楽と洋楽の共演などが予定されている。

世界遺産の二条城も「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」の舞台になる

2日目以降は六本木ヒルズ(東京・港)にメーン会場を移し、複数の文化イベントが日程に組み込まれている。ダボス会議で有名な世界経済フォーラムが協力、「スポーツのダボス会議」として、イベントを盛り上げる。

世界の都市の魅力を比較する調査「世界の都市総合力ランキング2015」によると、東京はロンドン、ニューヨーク、パリに次ぐ4位。調査を実施した森記念財団都市戦略研究所は「東京の弱点は交通・アクセスと文化・交流。文化面ではアーティストの創作環境への評価が低い」(大和則夫研究員)と指摘する。

1964年の東京大会では、首都高速や新幹線建設といった高度経済成長期の日本の発展を海外に示した。次の東京大会でどのようなレガシー(遺産)を世界や次世代に伝えるのか。5万人のアーティストの競演が始まった。