社長の写真でわかる意外な投資の法則(藤野英人)レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者

「投資の仕事をしていて分かったのは、ささいなところに会社の本質が表れるということ。成長する良い企業とダメな企業を見極めるためのある『法則』が見えてきた」

私はこれまで、ファンドマネジャーとしてずっと投資の世界で仕事をしてきました。

みなさんは株式の投資というとどのような仕事をしていると思われるでしょうか。複数のモニター画面が備わった机に座り、株価のチャートや世界のニュースを読みながらクールに仕事をしている、というようなイメージが強いと思われます。

もちろんそのような面もありますが、実際は企業の社長やIR(投資家向け広報)の担当者にお会いしたり、会社の製品や商品やサービスを体験したり、さらには工場を見学したりする、地味な調査の連続が仕事の中心です。私は実際に26年間で延べ5500社以上の会社を訪問し、約5800人の社長にお会いしました。

ただ会社の本質というのは、私たち外部の人間が社長に一度お会いしたり、会社訪問したりしたくらいでは、なかなか分かるものではありません。でもそうした経験を続けているうちに気づいたのは、ささいなところにその会社の本質が表れるということでした。

その結果、成長する良い企業とダメな企業を見極めるためのある「法則」が見えてきました。もちろん、この法則は万能ではありません。しかし、法則に当てはまる良い企業は、この先成長する可能性が高く、逆にダメな会社のサインが多く出ていると、先行きが不安という傾向があるのも確かです。みなさんが就職や転職、そして投資など、企業を見る際のヒントになるような話をしたいと思います。

まず「社長の写真の法則」です。今は企業の規模に関係なく、どんな会社も自社のウェブサイトを開設しています。そこには事業・サービス内容、採用情報、IR情報などが盛り込まれていますが、特に注目すべきは社長の顔写真です。

ウェブサイトの目的はいわゆる「招き猫」です。たくさんの人に訪れてもらい、自社の商品やサービスを見ていただく。そして、もし気に入ってくれたら買ってください。あるいは、社員になってください、株を買ってください、とアピールするのが役割です。ところが、そこに社長の顔を出していない会社があります。

昔からどんな商売でも、店主は他の従業員を従えて店のいちばん前に立ち、「いらっしゃいませ」とお客さまを迎えてきました。商売=ビジネスをしている以上、そこに社長の姿がないというのは、ありえないことです。できればウェブサイトには役員も載っていたほうがいい。この人たちは顧客に対してベストを尽くしますから何でもお申しつけください、という人たちなのですから。

逆に写真をあえて載せていないとしたら、その理由として“顔が割れる”のを避けているなど、何かしら後ろ暗い理由があるのかなと勘繰ってしまいます。俗に“ブラック企業”と呼ばれる会社では、多くの場合、社長の写真がウェブサイトに載っていません。過去に社長が不祥事を起こしたり逮捕されたりした会社も、不祥事前から社長の顔写真を出していなかったケースが多いのが事実です。

社長のあいさつの文章だけでは、見るお客さまの側に、人としての温もりが伝わりません。容貌に自信がないという人もいるかもしれませんが、どんな人でも精一杯の笑顔で撮影すれば悪い印象は与えないし、腕の良いカメラマンなら何とかしてくれます(笑)。

例えば、海外の名だたる大企業は、社長や役員が俳優さんや女優さんのようにカッコよく撮影されたすばらしいポートレートを載せています。もちろん国内でも例えばソフトバンクやファーストリテイリング、三井物産、三菱商事などは同様です。ベンチャー企業でも本当はこういうところには投資を惜しまずに、プロを使ってでもいい写真を載せるべきで、それは決して単なるビジュアル面の問題ではなく、気持ちの問題なのです。

実は興味深いことに、ウェブサイトの顔写真の有無と株価には一定の相関関係が認められます。日本の株式時価総額の上位200社について、ウェブサイトに社長と役員の写真が載っている会社と、社長だけの会社、両方とも載っていない会社を過去に調べたことがありました。すると業種に関係なく、株価は写真があるほど高くなる傾向があったのです。

付け加えると、ウェブサイトの社長あいさつの主語が「私、私たち」なのか、「当社、弊社、社名、当行」なのか、「主語なし、あいさつ文なし」かでも株価は違い、「私、私たち」のほうが高くなりました。さらにいえば、写真との組み合わせで、社長と役員の写真があって、主語が私、私たちであれば、抜きん出て株価が高かったのです。

もちろんこれはたまたまであったという可能性もあります。しかし、結局のところ、社長が自分の言葉で語りかけて、社長と役員の写真が載っている会社というのは、そうでない会社と比べてみると、商売の本質的なところを大切にしている良い会社といえます。

つまり商売に対する覚悟の問題ではないかと考えています。意外にそのようなところで会社の本質が透けて見えます。面白いとは思いませんか? ぜひみなさんも自分の会社や投資している会社のウェブサイトを見てください。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏と楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が交代で執筆します。
藤野 英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)。1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。90年野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。96年ジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。「JF中小型オープン」は1年間の上昇率219%を記録。驚異的なパフォーマンスを上げ、「カリスマファンドマネジャー」と呼ばれた。2000年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに入社。03年レオス・キャピタルワークス創業。CIOに就任。09年取締役、15年10月社長就任。明治大学非常勤講師なども務める。著書に「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社)など多数。
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