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不動産リポート

自宅をより早く、より高く売る方法 不動産コンサルタント 長嶋修

2016/6/1

新築マンションの販売現場ではきれいに飾られた豪華なモデルルームやCG映像などを用意して、来場者に対し、よりビジュアルに訴求することで販売促進につなげるのが一般的。一方で中古住宅となるとこうしたケースはまれだ。ましてや売り主居住中の売却物件の場合、多少の整理整頓は行われているものの、居住者の実生活をそのまま見せるような状態となっているのが一般的である。

この点について米国では、物件を売却するに当たり「ホームステージャー」といった専門家が、その物件価値を高めることを企図して徹底的に空間演出を行う。築年数によらず、また居住中であるか否かにかかわらず、どの売り出し物件も例外なく家具やインテリアをコーディネートし、まさにモデルルームのようにしつらえるのが一般的だ。写真はすべて米ワシントン州シアトルで売り出されていた中古住宅の現場実例だ。

築30年超の中古住宅を演出して売り出した
居住中であっても室内空間を演出する

大量の荷物や生活感が出てしまう物品などは、ガレージやレンタル倉庫に収納し、必要に応じて家具やカーテンなどのインテリアをレンタルし空間を演出する。こうした「ホームステージング」を行うに際しては、ターゲットとなる想定購入者の趣味や嗜好を推察し、絵やプリザーブドフラワーなども必要に応じてアクセントとして用いる。

ホームステージングにかかる費用は、ケース・バイ・ケースだが数万円から数十万円。より早く高く売れるのなら必要な出費であると考えられている。

こうしたホームステージングを行った場合とそうでない場合とで、売却価格やスピードにどの程度の差が出るのかというのはよくわかっていない。が、米国の不動産エージェントの中には、売り主がホームステージングをしない物件は担当しないという者もいるくらいだ。

米国ではほとんどすべての売り出し物件がこうしたホームステージングで彩られているため、それをやらなければ相対的に見劣りしてしまう。こうした慣習は中古住宅同士のみならず、新築物件に対しても見劣りをしないといった競争力を持つ。

築31年の空き家だが、新築と比べても遜色ない
庭やバルコニーも必要に応じて装飾する

日本では居住中の物件を見学する場合、どうしても売り主に遠慮してしまい、クローゼットや押し入れは気軽に開けづらいものだ。しかしあちらではオープンルームの来場者がクローゼットを開けるのは当たり前。あらかじめ見られてもいい衣類などを整理整頓して掛けておき、それ以外のものは見えない所に収納しておく。

日本においても、空き家なのか居住中なのかにかかわらず、自宅を売りに出す際にはこうしたホームステージングを行うことを強くお勧めする。ホームステージングを行うことで、来場者は生活を容易にイメージできる。ステージングをすると良い印象を演出できるが、人はその印象が、果たして演出によるものなのか、物件そのものによるものなのか判別できないものだ。

日本でも最近、ホームステージングを提供する会社やホームステージングを付加価値として提供する不動産仲介会社が出始めた。こうした会社に依頼しない場合でも、自宅を売り出す際には室内外を演出する工夫をするといいだろう。

現在ほとんどの売り物件でこうした配慮は行われていないため、効果はてきめんだろう。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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