革命の矛盾描きたい 映画監督、ペドロ・コスタさん

ポルトガルの鬼才。貧民街の移民たちと共に映画を作ってきた。新作「ホース・マネー」(6月18日公開)は「コロッサル・ユース」に続きアフリカの旧ポルトガル領の島から来た男ヴェントゥーラが主演。リスボンでの苦難の記憶を語る。

ペドロ・コスタ 映画監督

「それは1974年の革命に始まる。彼が心の中の監獄に落ち込んだ瞬間だ」ポルトガル独裁政権を倒した革命のデモに14歳のコスタが加わっていたころ、仕事を失った黒人労働者たちは移民局から身を隠し、恐怖に震えていた。そんな話に衝撃を受けた。「植民地主義を終わらせようとして始まった革命がはらんでいた矛盾だ。それを描きたかった」

「デモを伝える当時の新聞に黒人は写っていない。黒人は革命と共にいなかった」「革命は病人の世話をせず、青年将校は細部に気が回らなかった。革命の意義は台無しになった。移民労働者は騒動におびえ、夢は実現しなかった。そして今、貧しい人はますます貧しくなった」

ヴェントゥーラの言葉を「構成し、濃縮した」。震え続ける手が苦難を物語る。貧民街に代わり、病院や刑務所といった無機質な場所にその身体が屹立(きつりつ)する。

「再開発で街がなくなったのは悲劇だ。湿っぽく臭い街だが、彼らは自分の手で造った家に住んでいた」「施設と呼ばれる空間、権力の手触りがある空間で撮った。そこで人は自由を制限され、従わざるを得ない。世界の黒人移民は人生の多くの時間をこんな施設で過ごしている」

「あの街には必要なものがそろっていた。俳優も食堂も。それは映画にとどまらないという予感もあった。芸術的により大きなものを創作したい。そのためには共に作る人、共に過ごす時間が必要だ」。移民との協働は続く。

[日本経済新聞夕刊2016年5月30日付]

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