NISA、職場通じ手軽に 投資教育や給与天引き

少額投資非課税制度(NISA)で、企業を通じて従業員が資産を運用できる「職場積立NISA」がじわり広がっている。非課税枠などのメリットはNISAと同じだが、投資セミナーなどの投資教育を受けられる。5~6月は新年度に導入を決めた企業が従業員向けに利用を募集する時期でもある。勤務先の企業が導入していればリスクを勘案しつつ資産形成に役立てられる。

職場積立NISAは企業を通じて給料から資金を出して、投信などの金融商品に投資する制度だ。NISAは原則、一人一口座しか持てないが、元本ベースで年120万円までの投資で得た売却益や配当が非課税にできる。2014年12月にガイドラインができて制度がスタートした。導入企業は15年末時点で1268社に上り、積立金額も増加基調にある。

職場積立NISAを利用するには、勤めている企業が導入を決める必要がある。導入企業と提携した銀行などの金融機関は従業員への投資商品やリスクの説明を実施する義務を負う。同制度を使って投資すると決めた従業員は会社経由で契約手続きを進め、通常3~4週間程度で口座を開設できる。

拠出する金額は毎月定額で積み立てるが、金額や口座の引き落とし日は従業員が設定できる。賞与からの引き落としや、給与からの天引きができる。

分散投資が基本

主な投資商品はNISAとほぼ同じ。中長期の資産形成という観点から長期の分散投資が基本になる。三井住友信託銀行は資産運用を一任し分散投資するラップ型ファンドや手数料が低い指数連動型のインデックスファンドもそろえる。日銀のマイナス金利政策で銀行預金の金利が低下する中で、投資への関心は高まるが「どういった商品に資金を振り向けるか、リスクを含めしっかり理解することが大事だ」(ライフアドバイザリー部の木村泰一郎副部長)という。

通常のNISAとの違いは金融機関によるセミナーなどの投資教育を受けることができる点だ。日本証券業協会がまとめたガイドラインで、金融機関は利用者から申し込みを受けるまでに税制や対象商品の特性、リスクを説明することを義務付けられている。社内のセミナーや動画などを使った説明が多いが、こうした機会を通じ、投資のリスクを理解することが重要だ。

これまで首都圏が中心だった職場積立NISAは地方でも広がってきた。3月には福島の東邦銀行や秋田県の北都銀行、4月には長野県の八十二銀行、宮城県の七十七銀行も受け付けを始めた。マイナス金利政策下で投信などの販売手数料を増やしたい地銀にとって、顧客との長期的な関係を築くための「入り口商品」として職場積立NISAへの期待が高い。各行はバランス型投信などの専門商品や専用サイトなどを通じてPRをはかっている。

企業が一部負担

職場積立NISAには福利厚生の一環として、企業が拠出額の一部を負担する仕組みもある。これまで活用された例はほとんどなかったが、4月には茨城県の常陽銀行と契約したメーカーが始めた。こうした動きが広がれば、職場積立NISAの普及にもつながる可能性がある。

給料から天引きで積み立ての資金を拠出するものでは企業型確定拠出年金や財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄などもある。企業型確定拠出年金は企業が将来の年金の原資として掛け金を拠出し、従業員も毎月一定額を拠出して運用できるケースもある。

従業員が資金を拠出する場合、運用時に非課税になる点はNISAと同じだが、拠出時に所得控除のメリットを受けられる。NISAは途中の売却が可能だが、確定拠出年金は原則60歳まで換金できない。

財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄は給料から天引きで一定額を積み立てる制度。住宅の建築・修繕費用など用途が限られるが元利合計で550万円が非課税になる。一方で使途や積立期間が5年以上と決められているため、用途の自由度は低い。メリットに合わせて使い分けることも必要だ。(逸見純也)

[日本経済新聞朝刊2016年5月28日付]

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