保育も介護も、やりたいこと貫く 片山ます江さん伸こう福祉会創設者(キャリアの扉)

2016/5/29

「こうあってほしいと思う保育所を、自分でつくったのが出発点」。保育所から老人ホームまで幅広く手掛ける社会福祉法人「伸こう福祉会」の創設者・片山ます江さんは設立の経緯を振り返る。自分が子育てに苦労したことが活動の源だ。

かたやま・ますえ 大阪府出身。2012年、社会起業家の支援組織アショカから「フェロー」認定。75歳

嫁ぎ先は東京・虎ノ門の青果店。定まった休憩時間がとりにくい家業を手伝いながら子育てをした。商家が並ぶ土地柄で近くに保育所はなく、働きづめで幼い子どもの身の回りの世話もこなさなければならなかった。しんどかった。この経験が保育所設立のきっかけとなった。

1976年、自分の子どもに手がかからなくなった30代半ば、満を持して神奈川県藤沢市に保育所を開いた。当初、実父や嫁ぎ先からは反対された。家業の青果店は経営も安定しており、決して生活が苦しいわけではない。それなのになぜ新たな事業を立ち上げようとするのか。保育所運営についても「子供屋」と揶揄(やゆ)された。女性が起業することや保育所の必要性に理解がほとんどない時代だった。しかし、自分と同じように子育てに苦労している母親に喜ばれることを何よりの支えとし、念願の保育所運営に力をそそいだ。

保育所も軌道に乗った86年。足をケガして入院していた知人を訪ねて、驚いた。知人は入院中にスペイン語を学び始めるなど意欲的な人だった。身近に利用できる介護施設がなかったため、病院への「社会的入院」を余儀なくされていた。療養中も豊かな生活が送れるよう介護施設をつくることを決めた。空いた独身寮を再活用するなどして、気軽に利用できることを追求した現在の事業の始まりとなった。

事業は国際的にも評価が高まり2012年には、国際組織から社会起業家として認定された。評価されたことで改めて自分が何がしたいのか、見つめ直すきっかけになったと振り返る。立ち戻ってみれば初心は「自分が求めるものを実現させる」だった。

現在は、米オレゴン州に老人がビジネスをしながら介護が受けられる施設を計画している。自分がやりたいことを貫いていくことで、その先の未来が開けると語る。

(科学技術部 矢野摂士)