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上司の言い分vs部下の言い分

第8回 誰が新人や若手を指導すべきなのか?

濱田秀彦 株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント

2016/7/10

PIXTA

上司にとって負荷の重い仕事

この季節になると、そろそろ来期のことを考える時期になります。期末の追い込みが本格化する前、いまの時期が、落ち着いて来期の構想をする格好のタイミングです。

来期の構想に関し、つい後回しになりがちなのが人材育成。今回は、中でも手間のかかる新人、若手の指導・育成(以下指導と略)がテーマです。

上司にとって、新人・若手の指導は負荷の重い仕事。上司は、部下にも一端を担ってもらいたいと願うものです。また、先輩社員が後輩の面倒を見るのは当然だと考えます。

一方の部下にとって、新人・若手の指導は上司の仕事であり、頼まれれば手伝う程度の位置づけであることが多いもの。そんな状況下では、新人・若手の指導が宙に浮いてしまうという職場も少なからず。

新人・若手の指導は、いったい誰がすべきなのでしょうか。

上司の言い分

来期はうちの部署にも新人が入ってくる予定です。育てるのは大変ですよ。通常の仕事だけでも大変な上に、なにもわからない人間に手取り足取り教えるのですから。会社には即戦力の人材を、と求め続けているのですが、要望通りにはならず、未経験の若手が来るなど、いつも指導には苦労しています。

部下達にはもっと指導に関わってほしいと思っています。でも、部下達は、自分には関係ないと思っているようですね。積極的に後輩の面倒を見る者は少ないです。

部下の中に、後輩の指導をしても評価されないと言っている者がいることは知っています。確かに、人事制度上、後輩の指導そのものを評価する項目は多くありません。でも、後輩の指導は先輩社員としての基本的な役目です。自分から手を上げて「面倒見ましょうか」と言ってくるぐらいの気持ちがほしいですね。

きちんと指導できるようになった者は、管理職に推薦することも考えています。

【部下に求めること】

*もっと指導に関わってほしい

*もっと後輩の面倒をよく見てほしい

*自ら手を上げて後輩の指導をしてほしい

部下の言い分

部下指導は上司の仕事だと思っています。後輩の指導をしろ、とよく言われますが、本来は上司がすべきことを、押し付けられるようで素直に「はい」とは言えません。

私の上司は、部下指導をきちんとしていないと思います。指導が行き届かないことについては、業務が忙しいことを理由にしているようですが、それはおかしいと思います。部下の指導は、上司の重要な仕事じゃないですか。

昨年うちの部署に異動してきた未経験の若手社員も、戸惑うことが多かったみたいですよ。本来は上司が教えるべきことまで僕に聞いてくるので大変でした。上司は僕が教えるのが当然と見ているようで、そのことに対する評価はまったくありません。

以前、上司から指導担当を頼まれたこともありましたが、上司が中途半端に介入してくるのでやりにくかったです。僕が教えていることと異なることを後輩に言うので、後輩も困っていました。そんなこともあったので、後輩の指導担当になるのは気が進みません。

将来、自分が管理職になったら、いまの上司よりはうまく指導できると思っています。

【上司に求めること】

*もっと部下指導をきちんとしてほしい

*後輩を指導したら正当に評価してほしい

*指導を任せるなら中途半端に介入しないでほしい

新人・若手の指導をめぐる溝を埋めるために

新人や若手が育たなければ、上司・部下ともに困るはずです。上司は、部門の戦力不足に悩み続けることになり、部下である先輩社員も、自分の負荷が減らず、いつまでも雑務に追われます。このように若手・新人の指導は、上司と部下双方の課題であるはずなのに、どちらもあまり積極的ではありません。どうすればよいのか考えましょう。

上司への提案

部下指導は上司の仕事です。ただ、その点は上司の皆さんもわかっていることでしょう。問題は、それに割く時間が足りないということです。

そこで、視点を変え、自分は育成のトータルプロデューサーとして、部門の中に育成の仕組みを作り、運用することを主な任務と考えます。

例えば、先輩社員の中に指導役を設定し、実際の指導はその者にやらせます。ただし、丸投げではなく、自分はプロデューサーとして関わります。それにより、直接関わる時間を減らしながら、効率よく育成することをねらいます。また、このような活動を通じ、指導する先輩社員に指導のスキルを付与していきます。

プロデューサーとしての主な任務は次ページの4つです。

(1)指導担当を指名し、評価方法についても確認しておく

部下のひとりに指導をやらせるならば、はっきりとした役割を与えた方が本人も動きやすくなります。評価は、人事考課のどの項目で、どのように行うかまで明らかにしておいたほうがよいでしょう。

(2)指導する者に指導方法を教えておく

指導を任せる場合、プレイヤーとして優秀な者に担当させるのが自然ですが、これが落とし穴になりがちです。プレイヤーとして優秀な人ほど教えるのはヘタです。なぜなら、優秀な人は一を聞いて十を知り、実践しながら感覚的に自分のものにしていくため、体系立てて教えるのは苦手だからです。おまけに、できない人の状況が察しにくく「どうしてこんな簡単なことができないのか」といらだちます。このような事態を避けるため、教え方を教えておきます。きちんと時間をとって指導法を教授するか、あるいはセミナーなどで基本的な進め方を学ばせる必要があります。

(3)一緒に育成計画を作る

育成計画を作る段階で、指導する側が忙しい時期にどうするかを検討し、準備しておくことは重要なポイントです。計画は指導する者が自分なりの意図をもって作る方がよく、上司はアドバイスをするという関わり方がよいでしょう。

(4)状況を把握し、必要に応じて介入する

状況を把握するには、定期的に指導者とのミーティングが必要です。あるいは、指導者と指導を受ける新人・若手の間で、交換日記的なものを行わせ、デイリー、ウィークリーに確認するという方法もあります。介入はし過ぎてもいけません。指導者が困っているときに相談に乗るなど支援を中心に行った方がよいでしょう。

*トータルプロデューサーとして育成の仕組みを作り運用する

*指導者を育成する

*指導者を支援する

部下への提案

新人・若手の指導は上司の仕事です。ただ、指導のスキルを身に付けるには経験が必要で、時間もかかります。だからこそ、早い時期に経験しておいたほうがよいのです。

どうせやるならば手を上げて自らすすんでやった方がよいでしょう。頼まれてやるよりも高く評価されます。実際に指導する場合の注意点は次の3点です。

(1)計画をきちんと作る

何をどういう手順で教え、教えたらどういう仕事を与えるのか、まで決めておきます。また、自分の繁忙期には上司やほかの同僚、あるいは他部署に面倒を見てもらうなど現実的なスケジューリングをしておきます。

(2)正しい教え方の手順を踏む

手順は「動機付け→やってみせ→説いて聞かせて→させてみて→ほめて→フォローする」というものです。動機付けは、いまから習得することはいつどのように活用できるのかを伝え習得に向けたモチベーションを上げるものです。やってみせるのは、先に完成形を見せることで説明をわかりやすくするとともに、説明を簡略化できる効果があります。そして、説明し、やらせてみます。ほめるのは、100%できる前段階から行います。うまくいっている部分を伝え、安心させ改善点に集中させることで早く習得させる効果があります。最後のフォローは、実際に仕事の場できちんとできるまで見届けることです。

(3)コーチングを身につける

メンタル面のサポートを行うためには、コーチングの技術が必要です。コーチングとは、問いかけ、相手に考えさせ、答えを引き出すアプローチです。例えば、「同期の中で自分は後れを取っている」と心配している新人には「焦るな」と言ったところであまり効果はありません。

それよりも、「どう感じているのか」、「原因はなんだと思うか」、「今後どうしたらよいと思うか」と考えさせ、自分で答えを見つけ動くように仕向けるのが効果的です。コーチングについては、本来セミナーなどで話の聞き方(傾聴)も含めて習得したほうがよいものです。希望して公開セミナーに行かせてもらうとよいでしょう。

部下指導はマネジメントの重要スキルです。自分のレベルアップのためにも、早いうちに、手をあげて担当してはどうでしょう。 

*早い時期に指導の経験をする

*手を上げて指導を担当する

*計画、教え方、コーチングなど指導のスキルを習得する

上司と部下が協力して新人・若手を早期に育て、部門の戦力を増やしていきましょう。

[2013年2月27日掲載の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

上司の言い分vs部下の言い分」は日曜更新。次回は7月17日の予定です。
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濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント
1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。

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