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上司の言い分vs部下の言い分

第6回 仕事を増やしつつ「残業を減らせ」という上司

濱田秀彦 株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント

2016/6/26

PIXTA

残業抑制にストレスをためる部下

この時期はどこの職場も忙しいものです。部署の人員抑制が厳しく、一人あたりの業務負荷が特に増えた昨今ではなおさらです。忙しさが慢性的になっている職場も増えました。

一方、厳しい環境が続く中、多くの企業は、人件費抑制のために、残業のコントロールを続けています。また、従業員の健康管理のためにも、管理職は残業時間を抑制することが求められるようになりました。

部下の立場からすれば、仕事量が増大している中で、残業を減らせと言われるのは心外でしょう。あれもこれもやれと言いながら、残業はするなという上司に対し、部下はストレスを溜めるものです。

ただ、上司側も残業抑制に関しては歯切れが悪く、仕方なく言っている様子があります。

今回は残業について考えます。

上司の言い分

以前に比べ少ないメンバーでやっていることは確かです。人を増やして余裕ができれば、解決できる問題はたくさんあります。しかし、いまは人を増やせる状況ではありません。会社に増員申請しても通らないのです。だから、いまのメンバーでなんとかやりくりするしかありません。

部下を見ていると仕事の効率が悪いですね。電話してパパっと決めてしまえばよいものを、メールで何往復もしています。資料作成を指示しても、なかなか上がってこず、やっとできたと思ったらトンチンカンなものを出してきます。また、夜にならないと落ち着いて仕事をしない部下、残業代狙いかと勘繰りたくなるような仕事ぶりの部下もいます。

確かに、残業抑制については、私も違和感を覚えるときがあります。ある程度の残業は認めてもらわないと仕事はしにくい。業務量には波があるのに、労働時間の枠は一律ですから。不満はありますが、他の部署が従っているのに、自分の部署だけが突出して残業が多くなるのはまずいんです。部下は文句を言いますが、私の立場もわかってほしいものです。

【部下に求めること】

*仕事の効率を上げてほしい

*要求した仕事は指示通りに完成してほしい

*こちらの立場をわかってほしい

部下の言い分

仕事は増え続けています。しかも、何のためかよくわからない書類仕事が多い。そこにもってきて、残業をするなという話です。いつか自分がキレてしまいそうで心配です。残業を減らせと言うなら、ムダな仕事、ムダな会議を減らしてから言ってほしいです。

特に仕事のやり直しはムダだと思います。上司に依頼されたことをちゃんとやっているのに、提出すると直しの指示が出ます。本当にムダな時間ですよ。指示はもっと明確にしてほしいです。

仕事の進め方について、上司はメールじゃなくて電話にしろ、とよく言いますが、いまはそういう時代じゃないんです。お客さんだって、社内の人だって拘束される電話は嫌がりますよ。うちの上司はやり方が古いんです。

先輩の中には、年収が減ったからと、わざと残業をしている人もいますが、いまの若い人にはそういう人は少ないです。みんな、自分の時間が大切ですから。でも、仕事はきちんと責任を持ってやり遂げたいので、必要ならば残業もするということです。

そのあたりの気持ちを上司はわかっていないと思います。

【上司に求めること】

*残業をするなと言うなら、その前にムダな仕事、会議を減らしてほしい

*仕事のやり直しが必要ないように指示は具体的にしてほしい

*いま風の仕事のやり方を理解してほしい

*残業をする気持ちをわかってほしい

残業をめぐる関係改善のために

増える仕事と残業抑制という相反する課題を前に、上司も歯切れは悪いようです。どうしていけばよいか考えましょう。

上司への提案

仕事量の管理と残業対策の2面からのアプローチが必要です。まずは、仕事量について。慢性的に人員不足の状況で、チームの仕事が増えていけば、メンバーの負荷は増えます。ある程度までは頑張りで対応できるでしょうが、キャパシティを超えれば仕事の質は落ちます。

管理職は、優先度の低い仕事をなくしていく意識を持たなくてはなりません。なかでも「一応あったほうがよい」程度の報告書類は思い切って廃止し、総量を減らします。また、実稼働時間の確保のために、ミーティングの時間短縮といった手を打つ必要があります。さらに、仕事のやり直しをさせないため、指示の明確化、作業の早い段階での確認といったことも重要になります。

残業については、人件費のコントロール、部下の心身の健康管理、ワークライフバランスの観点から抑制が必要です。残業するな、減らせと言うだけでなく、状況別の対処が求められます。対処は部下の状況、タイプで分けると以下のようになります。

(1) キャパシティオーバー

本人の処理能力を超えた業務量がある状況。対策は負荷分散と指導による本人の能力向上。

(2) 夜型人材

昼は落ち着かないという理由で、まとまった仕事は夜に回してしまうタイプ。このタイプには「日中にまとまった仕事をするためにはどうすればよいか?」といった質問を投げかけ、解決策を考えさせ自発的に習慣を変えるよう仕向ける指導が必要。

(3) 仕事好き

仕事が好きで、責任範囲の仕事を終えても、新たな課題に取り組むためきりがなくなるタイプ。チャレンジするのが好きなので、「就業時間の中で密度の濃い仕事をするには」という課題に取り組ませる。

(4) 残業代狙い

月次の残業枠を決め、その中で終わらないようならば、役割分担を変更して重要な仕事から外す可能性もあることを告げ、粛々と進める。

(5) ワーカホリック

仕事熱心さや責任感が度を超え、際限なく仕事をしてしまう。メンタル不全の一種で、状況によっては、カウンセリングに連れて行く必要がある。

なお、業務効率化の方法に関しては、上司と部下が互いに納得のいくよう、話し合って行うのがよいでしょう。

部下への提案

確かに仕事が増える中での残業抑制は矛盾しています。ただ、文句を言っているだけでは、状況は変わりません。さらに状況が悪化して、自分の仕事に責任を持てなくなるような事態は避けたいもの。そこで、部下としてできる対策を考えます。

ひとつは、実作業時間の確保です。必要性に疑問がある報告書類など、なくすための提案をしましょう。この際、個々の書類について「いらないのではないか」と説得しようとすると文句を言っているように取られます。効率化のための提案という形にして数多く挙げた方が削減できる可能性が高まります。

また、その書類をなくすリスクをどこでカバーするかという対策もあれば、上司は了解しやすいはずです。会議についても同様で、効率化案を複数出すといったアプローチがよいでしょう。

もうひとつは、時間の有効活用です。最も自分の能率が上がる時間帯(プライムタイム)に企画や提案、問題解決など頭を使う仕事をあてます。その時間に優先度の低い案件でメールの往来をしていてはいけません。

また、仕事のやり直しを防ぐために、上司から仕事を依頼されたときには、その場でラフスケッチのような完成予想図を作って確認するのが有効です。大きなやり直しを抑制することができますし、万一後でやり直しを指示された際「打ち合わせでは、この方向でというお話でしたが」と言えば修正範囲を少なくすることもできます。

*実作業時間の確保のために提案をする

*時間の有効活用のためプライムタイムに頭を使う重要な仕事をやる

*やり直しを防ぐため、打ち合わせ時に納品物のラフスケッチを書く習慣を作る

仕事が増え、メンバーが減る傾向が続く中で、上司も会社からの要請でやむなく残業抑制をしている側面があります。部下側も協力してこの課題に対処してもらいたいと思います。

[2013年1月30日掲載の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

上司の言い分vs部下の言い分」は日曜更新。次回は7月3日の予定です。
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濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント
1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。

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