老後に向けた資産を作るための最強の方法は「個人型確定拠出年金(DC)」だと言ってもいいでしょう。ちょうど先週開かれた衆院本会議で改正確定拠出年金法が可決・成立しました。これまでは対象は自営業者や一部の会社員に限っていましたが、2017年1月からは主婦や公務員が加わり、実質的に誰でもこの制度に加入することができるようになりました。
個人型DCはどこが最強なのか? ポイントは3つあります。1つ目のメリットは税制優遇です。個人型DCでは掛け金の全額が所得控除されます。これはかなり大きいメリットです。
具体的にどれぐらい税金が安くなるかというと、会社員で課税所得が400万円の場合、決められた掛け金の上限の月額2万3000円を払い込んだとすると、その年の所得税と住民税で合計8万4000円が戻ってきます。自営業の場合はさらに大きくなります。積み立てを10年とか20年という期間で続ければ、この金額が何十年にもわたって戻ってくるわけです。
税制優遇は掛け金だけではありません。運用益も非課税になります。これは少額投資非課税制度(NISA)も同様ですが、NISAと違って銀行預金など貯蓄性の商品にも適用されます。
そして受け取るときも税制優遇があります。まとめて一度に受け取ると、「退職所得控除」が適用されるため、相当な金額になっても非課税となります。年金として受け取る場合には税金がかかりますが、その場合でも「公的年金等控除」が適用されるため、税額は少なくて済みます。
2つ目のメリットは運用商品のコストの安さです。通常、銀行や証券会社の店頭で投信を買うと、購入手数料が数%かかることが多いのですが、確定拠出年金で投信を買うと、この購入手数料はありません。また保有している間ずっとかかる運用管理手数料も、金融機関の窓口で購入するものと比べると半分ぐらいのものも少なくありません。老後資産形成のように運用期間が長いと、その間に負担する手数料の額はとても大きな差になって出てきますから、これも大きなメリットです。
3つ目のメリットは、60歳までは引き出せないことです。人によってはこれをデメリットと感じる人もいるでしょうが、確定拠出年金はあくまでも老後の生活に目的を限定した制度です。何かあってもすぐに引き出せるのであれば、人間の心理としてはついつい使ってしまいがちになりますから、逆に引き出せない方がメリットだと考えましょう。
老後は誰にでもやってきます。積み立てできる金額は少なくてもできるだけ早いうちから少しずつ積み立てていくことはとても大切です。そのための最も強力な手段がこの個人型DCですから、利用しない手はないと思います。
来年の1月から新しく対象に加わる主婦や公務員の方々は今から制度をよく勉強しておくことをお勧めします。今回の改正法成立を機に確定拠出年金関連の書籍も多く出てくると思いますが、筆者も6月10日に「はじめての確定拠出年金投資」(東洋経済新報社)を上梓しますので、関心がある方はご覧ください。
またNPO法人「確定拠出年金教育協会」が運営するサイト、「個人型確定拠出年金ナビ」(http://www.dcnenkin.jp/)では個人型DCの仕組みがよくわかり、金融機関ごとの手数料や商品内容を一覧にしていますので、参考になるかと思います。

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