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大人のマナー 超一流への道は「守・破・離」にあり

2016/5/31

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 一緒に仕事をしていて、とても安心感のある人、信頼感の持てる人がいます。キャリアは自分とそれほど違わないのに、なぜでしょうか。そんな人が管理職だったら、きっと組織を伸ばしていけるはずです。今回は、ある程度のキャリアを積んだ人のための「大人のビジネスマナー」について西出ひろ子さんに聞きました。

 ビジネスマナーとは新入社員のためだけのものでしょうか。もちろん、そうではありません。ある組織にとって、そのトップや管理職のマナーは、組織の業績にも大きくかかわるのです。そうした事例をいくつも見てきました。

 何年か前、講演会のために地方都市のあるホテルに宿泊しました。翌朝同じホテル内の美容室に行き、その後、チェックアウトをして講演会場に向かったのですが、その途中で何といつもはめている指輪がないことに気づいたのです。あわててホテルのフロントに電話をして、部屋の清掃のときに探していただくようお願いをしました。

 講演会が終わってから電話をすると、ありませんでしたという返事でした。「申しわけありませんが部屋の前の廊下やエレベーター、美容室までの通路も探していただけないでしょうか」と再度お願いしましたが、やはり「ありません」という返事です。

 念のため、美容室にも電話で問い合わせましたが、やはりないとのことでした。ところがその電話を切って5分後に、折り返し電話がかかってきて「指輪がありました」というのです。どこにあったのか伺ってみると、美容室の外の通路に落ちていたというのです。

 美容室には念のためと思って電話をしただけなのに、一言もお願いしていないお店の外の通路まで探してくださったんですね。これは何かというと、お客さまを思いやる気持ちから成る行動だと思います。たとえいちげんの客であっても、指輪をなくしたという相手の気持ちを想像して、その気持ちに応えて差し上げようと思う気配り、心配り以外の何ものでもありません。そして、それを目に見える行動という形にした結果、相手が求めていること、欲していることを提供するという結果と成果を出したわけです。この構図こそが真のマナーであり、マナーの存在価値なのですね。

 また、これも一言も伝えてはおりませんでしたが、その指輪はなんと大切な結婚指輪だったんです(それをなぜか落としてしまった私がいけなかったのですが……)。この美容室は歴史のある一流企業ですが、創始者の精神が組織の隅々まで浸透している証しだと思いましたし、その後も成長を続けています。一方、ホテルのほうはその後、外資系企業に買収されて名前も変わってしまいました。

 なぜこうしたお話をするかというと、組織のスタッフがそうした行動ができるかどうかは、やはり組織の長にかかっているからです。マナーは単なる作法や所作などではなく、ビジネスではまさにスキルであり、仕事の結果や業績、さらには会社の存続までも左右するものです。若手は皆、管理職や組織のトップを見ていてお手本にしますので、マネジャークラスの人こそ、基本的な人間力の表現の型としてのマナーを身につけている必要があるのです。

 ビジネスにおいても、マナーの基本は相手の立場に立って気持ちを思いやり、目に見えない「気持ち」を行動によって目に見える形にすること。それによって、お互いに幸せになるためのものがマナーだと考えます。

 最近、企業が組織ぐるみでデータを捏造(ねつぞう)するなどの不祥事が頻繁に報道されていますが、そうした組織の人たちも皆、やはり上に立つ人を見ています。数字とか実績など、目に見えるものだけを追いかけていると結局そうしたところに行き着いてしまって、誰も幸せにならないのですね。

■マナーは「ルール」ではない 大人は「守・破・離」で

 ビジネスマナーも一つ一つはとても基本的な細かいことです。けれども時には圧倒的に差がつくところでもあります。

 先日、仕事でご一緒した著名な男性は、周囲にとても安心感を与えるすてきな方だったんです。それはなぜなのかと考えてみたら、マナーをしっかりわきまえているのはもちろんのこと、マナーの型によってご自身の気持ちをとても自然に表現なさっていたんです。姿勢がいいとか服装のセンスがいいといったことは、その後についてくるものだと痛感しました。

 仕事をして十数年以上にもなると、いまさら新人のようなマナーでもない。でも、本当にこれでいいのだろうか、と感じている中堅の方、管理職の方は意外に多いようです。マネジャークラスの方こそ、自分の人間力表現の型としてのマナーについてあらためて考えてみてはいかがでしょうか。

 ここで気をつけたいことは、マナーとは「ルール」ではないということです。相手の表面的なマナーがなっていないからダメだとマイナス評価をするのではなく、管理職であれば、もう少し広く深く、その人の見えない部分にまで思いを巡らせ、できていない点は許される範囲内であれば「お互いさま」と考えることも、部下後輩などの相手から信望を得て、結果的に自分自身も楽になります。先手で相手と調和する思考に切り替えることで、必ず後々のプラスにつながります。

 そしてある程度の大人の方なら、基本のマナーを踏まえた上で、自分なりのやり方を模索してもいいでしょう。しかし、これは決して若手がいきなりやってはいけません。キャリアを積んだ方だからこそ、いざというときに型をやぶることで相手のプラスになることを自分なりに提供できる人になれます。そんな人はよりすてきですね。マナーも「守・破・離」を念頭に置き、相手をおもんぱかり、かつ自分なりのプラスを創造することが超一流への道だと思います。

西出ひろ子
 マナーコンサルタント・美道家。英国の民間企業WitH Ltd.ウイズ・リミテッド日本支社代表を務めたのち、ウイズ株式会社、HIROKO ROSE株式会社、一般社団法人マナー教育推進協会を設立。企業・一般向け研修、コンサルティングのほかTVドラマや映画のマナー指導などでも幅広く活躍中。インターネットライブマナー講座もスタート。『お仕事のマナーとコツ』(学研)、『できる大人の気くばりのルール』(KADOKAWA)など著書多数。最新刊は『超一流のビジネスマンがやっているすごいマナー』(ぱる出版)。

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