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池上彰のやさしい経済学

派遣切りがきっかけとなった、マルクスの再評価 著者が解説~池上彰氏(4)

2012/5/18

労働者たちの革命による社会主義国家の誕生
~自由競争をやめ、計画経済による理想の社会を目指した~

こうして資本家がどんどん安い給料で大勢の人を働かせることによって、資本家のもとにはたくさんの資本が蓄積されます。一方で、失業者はどんどん増えていきます。その結果、失業者には窮乏の蓄積がされます。つまり貧困です。これこそまさに格差社会です。

いけがみ・あきら ジャーナリスト。東京工業大学特命教授。1950年(昭25年)生まれ。73年にNHKに記者として入局。94年から11年間「週刊こどもニュース」担当。2005年に独立。主な著書に「池上彰のやさしい経済学」(日本経済新聞出版社)ほか多数。長野県出身。

一方で労働者が減らされることによって、工場で働かされている労働者は少数精鋭になっていきます。労働者の能力が以前よりも高まっていくわけです。実はマルクスは資本主義をまったくの悪とは書いていません。労働者の数が減り高度な仕事をしなければならなくなることによって、労働者の能力が高まっていくと書いているのです。

やがて工場ではみんなで協力して仕事をするようになり、職場ではリーダーが生まれ、そのリーダーのもとで労働者が組織化されていく。そのような中で労働者たちは資本家によって搾取されているんだという自覚を持つようになります。そして貧困にあえぐ失業者と、資本家のもとで能力が高められ組織力を持った労働者が一体となって革命を起こす。そして資本家を追い出し、自分たちで社会主義計画経済を行う。これがマルクスの考えた資本主義のてん末です。このマルクスの社会主義の理論に共鳴した人々が、世界中で共産党という組織をつくり、共産主義運動をしていきます。ロシアではレーニンが革命を起こし、ソビエト社会主義共和国連邦という国ができました。

さて、社会主義と共産主義の違いは何でしょうか。社会主義というのは現実にある制度、共産主義というのは将来の理想の社会と考えることができます。労働者がいくら働いてもそれに見合っただけの賃金がもらえず搾取されている、これが資本主義でしたね。それに対してマルクスやレーニンの考え方では、社会主義になると労働に応じて正当な賃金がもらえるようになる、さらに共産主義になれば、生産力がさらに発展して必要に応じて好きなだけもらえるようになると考えます。レーニンは、最終的にはトイレの便器は金でつくられることになるだろうと言っています。共産主義ではそれくらい人々が何でももらえて豊かな暮らしができるようになるということです。そうなると、国と国との争いごとはなくなってくるので、そもそも国家というものがなくなってくる。よく共産主義国家という言い方がされますが、あれは形容矛盾でおかしいんです。共産主義では国家は存在しないというのが建前なのです。

社会主義国家、それから国家がなくなった共産主義というふうに考えると、共産主義というのはユートピアだということがわかりますね。社会主義の先に共産主義がある。社会主義国家では、共産主義に向けてがんばれ、がんばれと労働者が尻をたたかれる、ということになります。

理想の社会を目指した社会主義国家は、なぜ崩壊してしまったのでしょうか? 続きは書籍で詳しく解説しています。

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(イラスト:北村人)

次回は、経済政策の常識を変えたケインズを取り上げます。

[日経Bizアカデミー2012年5月18日付]

池上彰のやさしい経済学 (1) しくみがわかる (日経ビジネス人文庫)

著者 : 池上 彰
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 648円 (税込み)

池上彰のやさしい経済学 (2) ニュースがわかる (日経ビジネス人文庫)

著者 : 池上 彰
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 648円 (税込み)

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