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派遣切りがきっかけとなった、マルクスの再評価
~資本主義経済は失業者を生み出すとマルクスは予言した~

前回取り上げたアダム・スミスは、市場=マーケットを大事にする自由放任を唱えました。しかし、19世紀のヨーロッパ、とりわけイギリスの労働者の悲惨な状況を目にして、本当に資本主義経済はうまくいくのだろうか、さまざまな問題を引き起こしているのではないか、資本主義は間違っている、これを何とかしなければならないと新しい経済理論を打ち立てたのが、社会主義の父、カール・マルクスです。

マルクスの理論によってたくさんの社会主義国が生まれました。著書である『資本論』は、第2次世界大戦前から日本語訳が出版されていましたが、戦後は日本語訳が何種類も出て非常に売れました。昔はベストセラーとしてどこの本屋にも必ず置いてありました。

マルクスは、第1巻を書いたあと、2巻、3巻の執筆途中で亡くなります。死後、親友だったエンゲルスがマルクスの遺志を継いでこれを完成させました。そのため1巻と2巻・3巻ではまったく文章が違います。マルクスが資本主義とは一体どんな経済体制なのかを分析したのは1巻なので、とりあえず第1巻に目を通しておけばマルクスの考え方はわかります。それはどのようなものなのでしょうか。

資本主義経済においては、激しい競争に打ち勝っていかなければならないので、資本家は利益を追い求めます。その結果、労働者を低賃金で長時間働かせることになります。こうして資本家が大金持ちになっていく一方で、ひたすら働かされる多くの貧しい労働者が生まれていきます。やがて資本家と労働者のあいだに激しい闘争が起きるようになります。ついには多くの労働者が立ち上がって革命を起こし、資本主義が崩壊する。ざっくり言ってしまうと、これがマルクスの『資本論』の考え方です。

ところがソ連が崩壊し、東ヨーロッパの国々も次々に社会主義を放棄すると、マルクスは死んだ、時代遅れだと言われるようになりました。いまでは日本の大学でもマルクス経済学を教えている先生は非常に少なくなりました。

しかし、2008年のリーマン・ショック以降、派遣切りが相次ぎ、多くの失業者が出ました。これをきっかけに、彼が『資本論』の中で予言した労働者の状態がいま再現されているのではないかと言われ、マルクスの再評価が始まっています。マルクスは、一体どのようなことを予言していたのでしょうか?

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