バラエティー番組で「酒飲み企画」増加 本音引き出す
テレビで出演者が酒を飲みながら語るバラエティー番組が盛況だ。人気の火付け役となったのは、日本テレビの『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』で2014年4月から始まった「朝までハシゴの旅」。当時低迷気味だった同番組の視聴率アップに貢献するほど、サラリーマンを中心に評判になった。
酒を扱いながらも、ゴールデンタイムで受け入れられた「ハシゴの旅」が定着してからは、他局でも続々と酒飲み企画が誕生。CBCテレビの『旅ずきんちゃん』(TBS系)では「酒飲み歩きの旅」(15年4月から)が、フジテレビの『ダウンタウンなう』では「本音でハシゴ酒」(15年8月から)の企画がスタートした。酔って開放的になるからか、恋愛や離婚、給料事情や不祥事の話まで、世間で騒がれたことのある当事者の口から本音がこぼれ出る。直近では、4月スタートの小堺一機の新トーク番組『かたらふ』(フジ系)でも、設定に酒場が採用されている。
なぜこんなにも酒飲みトーク企画が重宝されているのか。『ダウンタウンなう』プロデューサーの蜜谷浩弥は、視聴者の目が肥えてきていて、予定調和を嫌うことが理由のひとつではないかと語る。「バラエティーであっても"流れは決まっている"と思う視聴者の方が多い。そう感じさせてしまった時点で、笑ってもらえなくなる。お酒をツールとして取り入れることで、紛れもなく本心を言っている証拠になりますし、より素直に楽しんでいただける状態になる、とも言えます」
ロケーションもポイントだ。一般の客もいる居酒屋でトークしてもらうのは、よりプライベートに近い感覚でしゃべってもらうための演出でもある。「座る距離感だけでも、話す内容は変わってくるもの。きっとスタジオでは出てこない内容のトークになっていると思います」。
1回のロケ時間は、2時間スペシャルの場合で約4時間。ゲストが待つ5~6軒を回る。「皆さんかなり飲むので、1軒目は深い話をしていたのに、5軒目では何を言っているのか分からなくなる、ということはたまにあります(笑)」。そういう部分も基本的にはそのまま放送しているとのこと。放送できない部分や、どうしても嫌な話題は編集する約束で収録しているため、ゲストも思い切って話せる。結果、ギリギリの爆弾発言が出てきたりと、今のところメリットを感じることのほうが多いそうだ。
『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)など、主にBS放送で多かった本格的な飲み歩き番組も、地上波レギュラーで出てきた。テレビ東京の『博多華丸のもらい酒みなと旅』は、日本全国の漁港を回り、もらい酒をしながら地元の人たちと触れ合う番組。15年10月に放送が始まった。
こちらは深夜に放送されていることもあり、視聴率度外視のおおらかさが特徴。「お酒は本音を聞き出すひとつの記号にはなっていると思います。顔を赤らめながらも初対面の人同士が打ち解け合う、そんな姿が見られますし、制作側の視点でも、すでにあるトークバラエティーや旅番組との差別化ということで、フィットしているのでは」(プロデューサー・三宅優樹)。番組では、本気で泥酔する華丸の姿がよく見られる。視聴者層はF2層といわれる35歳~49歳の女性が多く、一緒に飲んでいるような感覚で見ているという声も寄せられるという。
(「日経エンタテインメント!」5月号の記事を再構成。敬称略、文・内藤悦子)
[日経MJ2016年5月27日付]
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