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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は3回目に訪れた八重洲ブックセンター本店を再訪する。東京駅前の大型書店ではゴールデンウイークの前と後で、どんな変化があったのだろう。

金融庁の次の一手が気になる

5~6月はビジネス書の動きが少ない時期だといわれる。ビジネス書売り場を預かる2階フロア長、木内恒人さんの実感でもそうだ。だが、そんな中で「異例ともいえる売れ行きを示した本がある」といって教えてくれたのが、橋本卓典『捨てられる銀行』(講談社現代新書)だ。金融行政の最新動向を共同通信の現役金融庁担当記者がリポートした内容で、その刺激的なタイトルが関係者を刺激したらしい。昨年、金融庁長官に就いた森信親氏は金融行政のエースで改革派、金融再編論者として知られる。このため「八重洲周辺は地方銀行の東京支店が多く、発売前から問い合わせが相次いだ。1日10冊を超えるペースで売れている」と木内さんは話す。

ニュースに反応――パナマ文書や鈴木敏文氏

もう一つ目につく動きが、最近のマネーや企業をめぐる大きなニュースへの反応だ。そのひとつが「パナマ文書問題」。パナマ文書そのものを扱った本は緊急出版のものや特集を組んだ雑誌がポツポツ出始めたところ。本格的な出版ラッシュは少し先になると見られるが、「タックスヘイブン(租税回避地)を扱った既刊書や、富の偏りへの関心からか仏経済学者トマ・ピケティの本などに動きが出ている」という。これを受けて同店では急きょそれらの本を並べて平台をつくった。その平台で立ち止まる来店客も数多く見られ、反応は上々のようだ。

4月初めのセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長(5月26日退任)の人事案強行の失敗と会長退任も大きな反響があった。鈴木氏本人もセブン&アイもともに流通の巨人。鈴木氏自らの著作も多く、同氏の戦略やセブン&アイについて書かれた本も少なくない。このため流通関連の書棚の一部を割いて一段を関連本を面陳列したミニ特集コーナーに仕立てた。日本経済新聞連載の「私の履歴書」を文庫化した『挑戦 我がロマン―私の履歴書―』(日経ビジネス人文庫)がよく売れているという。

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)あれか、これか野口真人著(ダイヤモンド社)
(2)未来から選ばれる働き方 神田昌典・若山陽一著(PHP研究所)
(3)M&A交渉人養成プログラム佐久間優著(中央経済社)
(4)捨てられる銀行橋本卓典著(講談社)
(5)嫌われる勇気岸見一郎・古賀史健著(ダイヤモンド社)

(八重洲ブックセンター本店、2016年5月15日~5月21日)

冒頭に上げた『捨てられる銀行』が4位に入っていて関心の高さを示す。発売がこの週の半ばで、1~3位はまとめ買いが入ったと見られることから「事実上の1位と言ってもいい」。店頭にまだ在庫はあるが、版元では一時的に品切れ状態といい、増刷に1~2週かかりそうで少しの間入荷待ちが続く。

1位は企業評価を専門とするプルータス・コンサルティング(東京・千代田)の社長が著者。「『本当の値打ち』を見抜くファイナンス理論入門」との副題がつく。2位は経営コンサルタントと人材ビジネスの社長がこれからの働き方、企業のあり方を考察、提案した1冊。3位はコンサルティングファームに所属する著者がM&A交渉人を養成するプロセスを詳述した専門書だ。5位には心理学者アルフレッド・アドラーの関連本が入り、根強いロングセラーとなっている。

(水柿武志)

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