勝率は8割 ロング・ショート戦略で1億超え億万長者さんに聞いた、資産をみるみる増やす投資術(中)

日経マネー

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『日経マネー』誌が実施した「2016個人投資家調査」では、回答者2678人のうち167人が「億万長者さん」だった。このうち、年初の波乱相場でも負けなかったのは、3割の49人。勝ち続ける億万長者さんのすご腕テクニックを3回に分けて紹介しよう。2回目は、株の空売りと、先物の購入を組み合わせて億超えを達成した投資家の戦略を見ていく。

中小企業の会社員から独立して今は自分の会社を経営する山岡次郎さん(仮名・44歳)は、ちょっと変わった投資遍歴の持ち主だ。今でこそ日本株投資で1億円余りの資産を築いたが、本格的に株に投資し始めたのは、3年余り前の2013年半ば。それまでの13年間はもっぱら商品の先物取引を手掛けてきた。

ショック機に投資手法を転換

最初に扱ったのは小豆だった。1999年、27歳の時に商品先物取引会社の営業マンの勧誘を受けて、100万円の預金をはたいて始めた。「利殖にもともと関心があった」

取引は順調に立ち上がって残高は殖えていった。ところが、営業マンは出金になかなか応じてくれない。一方で、追加の入金を求めてくる。「おかしい」と感じてインターネットで調べてみると、詐欺まがいの行為を行っている会社が多いことが分かった。

殖えた小豆の取引の残高が1.5倍の150万円になったところで何とか解約し、その後はオンライン取引で商品先物への投資を続けた。主に取引したのはガソリン、プラチナ、金の先物。さらにFX(外国為替証拠金)取引や株価指数先物取引の「日経225ミニ」に手を広げた。

「毎年利益を出したが、1カ月当たり20万円くらいを小遣いとして使っていた」。それでも、2012年末時点での残高は、1000万円ほどあったという。

大勝負に出たのはこの時だ。民主党の野田佳彦前首相から自民党の安倍晋三首相に政権交代があった年末に、株価が上がるとみて、日経225ミニを証拠金200万円で10枚購入した。

安倍政権が発足し、黒田東彦日銀総裁の下で質的・量的緩和が始まり、アベノミクス相場が本格化。日経平均は8000円台から13年5月には1万6000円近くまで急伸した。日経225ミニを押し目買いで買い増していった。ところが、ここで思わぬ事態が起きた。13年5月23日に日経平均が1日で1143円も急落したバーナンキ・ショックだ。日経平均はその後も続落し、1億1000万円まで膨らんでいた山岡さんの取引の時価は、同年6月末には5000万円台にまで減少した。

「これが転機になった」。

山岡さんは、先物一辺倒だった投資をがらっと変えた。値上がりを期待して個別の日本株を購入し、同時に日経225ミニで値下がりリスクをヘッジする。ヘッジファンドが手掛ける、値上がりしそうな株の購入(ロング)と値下がりしそうな株の空売り(ショート)を組み合わせて差益を狙う「株式ロング・ショート」に似た手法で、ショートの部分を、日経225ミニで代替する。

年間の勝率は8割

具体的には、日経225ミニを売り建てた金額と同額分、値上がりしそうな個別株を購入する。

この取引では、個別株が値上がりし、日経平均が下がれば二重に利益が出る。日経平均が約定値段を上回って損が出ても、個別株の値上がり幅が日経平均のそれを上回れば、差益が出る。

個別株と日経平均の両方が下落しても、個別株の損失よりも、約定値段と日経平均の差額による利益が大きければ差益を得られる。一方、日経平均の値上がり幅が個別株より大きかったり、日経平均の下落幅が個別株より小さかったりした場合は、差損が生じる。

値下がりしそうな株の空売りと日経225ミニの買い建てを組み合わせて、差益を狙うこともある。これまでの実績は「ならすと、1年のうち10カ月は利益が出ている」。単純に計算した勝率は、10(カ月)÷12(カ月)×100=約83%だ。

この投資で山岡さんが購入する個別株は、東証2部や東証マザーズなどに上場する中小型株や新興企業株で値動きの激しい銘柄だ。

「3日連続して値下がりしている銘柄や、連続して下がって反発している銘柄などを探したりする。業績は考慮しない。こうした銘柄を1週間から1カ月の短期で売買する」。

山岡さんは、信用取引で追い証を求められて株の売却を強いられる事態を防ぐため、当初のシナリオが崩れたら損切りを徹底している。16年1~3月の波乱相場では、現物株は値下がりしたが、日経225ミニの売り建てで、10%以上の差益を出した。現在、現物株では、東証の条件を満たして、1部へ昇格しそうな銘柄をいくつか保有している。昇格が実現すると値上がりすることが多いからだ。

投資の柱をもう1つ作ろうともしている。タイへの旅行をきっかけに始めた不動産投資だ。今はタイのコンドミニアムの建設に出資している。

「割高になった国内不動産の価格が将来大幅に値下がりしたら購入し、賃料収入を得るようにする。これでさらに投資による収益を安定させたい」と話す。

(日経マネー編集部 中野目純一)

[日経マネー2016年7月号の記事を再構成]

日経マネー2016年8月号

著者 :日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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