フランス生まれ女性社長の仕事と人生を楽しむコツミレイユ・ジュリアーノ著「フランス女性の働き方」

書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介する「若手リーダーに贈る教科書」。今回はフランス人女性、ミレイユ・ジュリアーノさんの「フランス女性の働き方 仕事と人生を楽しむコツ」。フランス流の生き方の魅力にあふれた一冊になっている。
ミレイユ・ジュリアーノさん (C) Andrew French

本書の著者、ジュリアーノさんは1946年、フランスに生まれ、大学卒業後に渡米しました。1984年にシャンパンの世界的ブランドとして知られる仏ヴーヴ・クリコの米国現地法人クリコの開設に携わり、後に社長兼CEO(最高経営責任者)を務めています。本書では、バランスのとれた生き方の達人である著者が、フランス流の人生レッスンを紹介します。

人を紹介するときに、肩書きなんていらない

「愛する人との上質な時間の過ごし方」「身支度はいつも身軽に」「ビジネスと楽しみのために食べる」……。私たちがさまざまな理由をつけて目を背けているものの、心の隅で気にかかっていることを著者は見事に指摘します。もちろん、指摘だけでは終わりません。本書は「で、どうしたらいいの?」という次のステップや、得られる効果に対しても答えを出してくれている、非常に実践的な1冊になっています。

(先に上梓した著作)「フランス女性の12ヵ月」で、フランス人は誰かを紹介するときに、職業で紹介しないと書いた。かたやアメリカ人はたいてい仕事を紹介する。(中略)最近、エドワードとわたしは、パリのレストランで友人夫婦といっしょにディナーをとった。お相手はアメリカ生まれで二十年間フランスに住んでいる女性と、彼女のフランス人の夫で、彼とは初対面だ。楽しいひとときを過ごしたが、二時間後にも彼の職業はわからないままだった。ほっとさせられたことだった。人を職業の肩書きで定義するのは退屈なことではないだろうか?
( 136ページ 「誰の成功?」より)

社会人になると初対面の人と会うとき、名刺は不可欠です。ビジネスシーンでなくとも、気がつくと名詞交換をしていることもままあります。最近では学生までサークルなど、所属団体などを記した名刺を持ち歩くほどです。でもそれって、本当に自分を紹介しているのでしょうか。

「○○会社で△△をしているAさん」よりも、「最近メキシコから帰ってきたばかりなのよ」などといった、人柄がうかがえる紹介の方が、相手との距離が縮まるのでは――と著者は指摘します。

「お礼状はすぐに書くこと」「ネットワークづくりには定期的に足を運び、参加したら話すこと」「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を大切にするだけでなく、自分が個性的な存在であること」……。こうした実体験をもとした数々の小さなアドバイスに触れると、いつのまにか考え方が凝り固まり、硬くなっていた頭が、柔らかくなるように感じます。ちょっと考え方を変えるだけで、肩肘張った生活から解放される、といったところでしょうか。

休むのが怖い? バカンスが人間的な成長を育む

休暇をすべて使わないアメリカ人に、これまでたくさん会った。彼らにとっては奇妙な勲章らしい。何を考えているのだろう、あるいは否定しているのだろう? 怖くて離れられないほど、仕事は人生にとって大きなよりどころなのだろうか? 自分がいなくても、会社が問題なくやっていけるとわかることを恐れているのか? それは周知の事実のはずだ。他の人間に置き換えられない人は一人もいない。従業員が一人去ってもビジネスがちゃんと続いていくことは、さほど経験がなくてもすぐにわかるだろう。
( 205ページ「ストレスを減らすための技術」 より)

仕事だけが人生ではありません。旅行予約サイト大手、米エクスペディアが昨年発表した有給休暇についての調査によると、フランスでは有休取得に罪悪感を抱く人の割合は6%にとどまるのに対し、日本は18%に上りました。フランス人にとって休暇は、生活のバランスをとるために必要な当たり前のものであって、エネルギーを充電するために不可欠なものと考えられています。休暇を楽しむことは結果的に、働き手としても人としても成長につながります。発想を変えるだけでも、同じ時間の楽しみ方は変わってくるはずです。

これまでの人生計画と夢をすべて捨てて、彼を選んだ

(旅先で出会ったアメリカ人の青年と)わたしはすっかり恋に落ちていた。わたしたちは交際を続けたいと思ったが、彼はアメリカに帰らなくてはならなかった。博士課程を終えなくてはならなかったからだ。わたしはフランスに戻った。それから数週間の間、わたしは人生でもっとも重要な決断に迫られた。古典的な決断だ―― 仕事か? 男性か? 街は? 国は?
結局、これまでの計画と夢をすべて捨てて、わたしは男性とニューヨークを選択した。三十年以上、その男性エドワードはわたしの夫であり、その町はわたしの家だ。

( 20ページ 「人生にはいくつものエピソードとステージがある」より)

 人生の計画を立てたとしても、計画通りにいくことは少ないもの。イライラしてチャンスを逃すのではなく、予想外の事態が実は幸せな未来につながっていることもあります。さすがは「恋愛の国、フランス」とうなってしまうようなエピソードですが、「ビジネスでも人生でも、計画なんてこんなもの」です。結婚や夫の仕事のステージ、子育て、両親の介護といったことで、決定せざるを得ないこともあります。失敗について考えるよりも、その瞬間を楽しもうという著者のメッセージが伝わってきませんか?

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◆ 担当編集者からひとこと  国分正哉
以前、ワイン本の編集を担当したことがきっかけで、すっかりフランスワイン好き(特にボルドー)になった私に、ニューヨークの作家エージェントが紹介してくれたのがミレイユ・ジュリアーノの第1作「フランス女性は太らない」でした。こってりのフレンチを毎日食べても太らないパリジェンヌの食とダイエットの秘訣……。世界40カ国で翻訳され、累計300万部の大ベストセラーになったこの本によって、ミレイユは一躍ベストセラー作家となりました。「フランス女性の働き方」は彼女の第3作になります。
もともと彼女は、シャンパンの世界的トップブランド、仏ヴーヴ・クリコの米現地法人の女性社長でした。今はフランスの食の魅力を伝えるアンバサダー(大使)として世界中を飛び回っています。5年前に来日した際、フランス大使館で開かれたパーティーでお会いしましたが、シャンパンを片手に食物繊維の大切さを語っていたのが印象的でした。小柄で、チャーミングで、情熱的なビジネスウーマンですよ。

(雨宮百子)

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「若手リーダーに贈る教科書」記事一覧

フランス女性の働き方 (日経ビジネス人文庫)

著者 : ミレイユ・ジュリアーノ
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)

フランス女性は太らない―好きなものを食べ、人生を楽しむ秘訣 (日経ビジネス人文庫)

著者 : ミレイユ・ジュリアーノ
出版 : 日本経済新聞出版社
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フランス女性の12か月

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