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オリパラ支援、企業に新たな効能 目的・採算「なぜ」の裏側を見る

2016/5/25 日経産業新聞

ブリヂストンは今夏、ブラジルの従業員が聖火リレーに参加しリオ五輪を盛り上げる

今夏のリオデジャネイロ大会や2020年の東京大会を控え、オリンピック・パラリンピックの支援に取り組む企業が増えている。スポンサーへの名乗りや選手育成など形は様々。知名度やブランド力の向上を狙ったケースが大半だが、費用対効果を度外視しているように見えたり、目的が判然としなかったりする支援も少なからずある。3つのケースから企業とオリパラの新関係を探る。

ブリヂストン F1から転身、「環境」「開発競争」業界の変化映す

 「タイヤを購入していただいた方に抽選で、リオ五輪のサッカーの試合観戦にご招待します」。五輪ワールドワイドパートナーのブリヂストンは現在ブラジルで、こんな販促キャンペーンを展開している。

ワールドワイドパートナーとは国際オリンピック委員会(IOC)と契約を結ぶ五輪の最高位スポンサーのことで、現在この地位にあるのは米コカ・コーラや米ゼネラル・エレクトリック(GE)など12社だけ。日本勢はトヨタ自動車、パナソニックと一緒にブリヂストンが名を連ねる。

世界有数の企業がしのぎを削って射止める地位だけに、契約金は高額だ。当該企業は口をつぐむが、広告業界の関係者によると、8年契約のパナソニックで300億円程度、10年契約のトヨタで2000億円程度とみられるという。ブリヂストンの契約は16年までが日本、ブラジル、米国、韓国で、17年から24年までは世界で五輪のマークを活用した広告活動を展開できる内容で「契約額はパナソニックを上回ったと聞いている」(大手広告会社幹部)。

高額の資金を五輪につぎ込む一方で、ブリヂストンは10年にF1から撤退した。タイヤという本業との親和性や自動車ファンへのアピールを考える場合、五輪に巨費を投じるより、複数のモータースポーツへ分散して投じたほうが宣伝効果が高いのではないかという疑問が湧いてくる。

「五輪ほど世界で関心の高いイベントはない」。同社の山田良二オリンピック・パラリンピック室長はこう前置きした上で、謎解きをしてくれた。キーワードは「環境」と「競争」だ。

ブリヂストンはこれまで、モータースポーツを軸にスポーツに関わってきた。97年にはF1に参戦。ライバルのタイヤメーカーと競争することで、グリップ力や摩耗に対する強さといった技術力を高めてきた。

ところが、06年、F1におけるタイヤ供給を1社に絞るという国際自動車連盟の方針に仏ミシュランが反発し、同社がF1から撤退するという事件が起きた。ライバルを失ったブリヂストンにとっては、技術開発面で参加の意義が薄れてきた。

さらに、タイヤに求める性能の重点が、低燃費性など地球環境保全に移ってきた。F1撤退にはこんな事情があり、二輪車レースの「MotoGPクラス」へのタイヤ供給も15年で終了した。

新興タイヤメーカーの台頭も五輪スポンサーの大きな理由だ。韓国ハンコックタイヤや台湾の正新などがシェアを伸ばしており、グローバルでのブランド力を強化することがブリヂストンの喫緊の課題になっている。短期間で一気に知名度を高めることができるイベントは五輪しかないとの判断だ。(杜師康佑)

日立ソリューションズ 障害者スポーツを実業団で後押し、社内の団結引き出す
長野県白馬村で2月に開かれた大会に参加した新田佳浩選手と日立ソリューションズの応援団 (C)STAND/阿部謙一郎

観客やテレビ視聴者の関心が薄く、広告宣伝効果を期待できないマイナースポーツの支援に長年取り組む企業もある。

日立製作所のIT(情報技術)子会社、日立ソリューションズ(東京・品川)は04年11月、国内で初めて企業の実業団として障害者スポーツの支援を始めた。これまでに冬季パラリンピックのノルディックスキー種目で金メダルを含む合計7個のメダルを獲得。14年には車いす陸上競技部を設立し、所属選手は今夏のリオのパラリンピック出場を目指している。

今でこそ注目度が上がっているが、数年前まではほとんどの企業が見向きもしなかった障害者スポーツ。「支援のきっかけは偶然の出会いだった」。総務部の下谷昇平部長代理は振り返る。

パラリンピックのノルディックスキー日本代表監督の荒井秀樹氏が04年6月に日立ソリューションズ幹部と新幹線でたまたま相席となり、荒井氏が支援を求めたという。

同社はその前身の企業が合併した直後で株式公開も控えていた。ダイバーシティー(多様性)を推進する狙いとともに、社員が一体になるためのシンボルとして、選手を社員として雇用する実業団方式の支援に踏み切ることになった。

現在所属している選手や監督は6人。学生を除く4人が社員だ。競技生活引退後も雇用を続けることを基本としており、引退した3人のうち2人は総務などで働く。

チーム名は「AURORA(アウローラ)」。イタリア語で夜明けを意味する。障害者スポーツの発展を祈願した名前だが、社員の団結力の向上にもつながっている。チームが大会に参加する時の応援ツアーの参加者数は当初は20~30人だったが、最近では100人を超えるようになった。

社員と選手の懇親会も開催しており、多くの社員にとってアウローラは身近な存在。後援会組織の参加者も増え、社員の4割が加入している。下谷部長代理は「社員の一体感の醸成に寄与しており、5割まで高めていきたい」と力を込める。(多部田俊輔)

日航 マイルを選手に寄付、利用客サービス多様化に生かす

スポーツ支援を利用客サービスの多様化に生かそうとしているのは日本航空だ。旅客機に乗るとたまるマイルを寄付することで選手を支援する「JALネクストアスリート・マイル」を14年に始め、好評を得ている。

2千マイル(2千円相当)を1口として受け付け、日航も利用客と同額分を加算して各競技団体に寄付する。航空券や座席のアップグレード、商品との交換に加え社会的意義の高い使い道を用意し、顧客満足度を高める狙いだ。15年度は合計約900万円をラグビーや車いすバスケットボールなど17団体に贈った。

競技人口の少ない「マイナー種目」では用具購入など選手個人の負担が重く、金銭的な事情で海外の大会遠征などを断念するケースもある。スポンサーの裾野を個人に広げるために、寄付した利用客に選手のサイン色紙などを贈るといった期間限定イベントなども行っている。世界に挑むアスリートと利用客を結びつけ、一体となって応援することで「挑戦する企業イメージを伝える」(同社)という狙いもある。(比奈田悠佑)

[日経産業新聞2016年5月23日付]

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