アスリートの語学上達請け負います教育事業会社、スポーツのグローバル化に商機

女子アイスホッケーの日本代表スマイルジャパンのFA浮田留衣選手は世界最高峰の北米大学リーグでのプレーを目指す
女子アイスホッケーの日本代表スマイルジャパンのFA浮田留衣選手は世界最高峰の北米大学リーグでのプレーを目指す

日本アイスホッケー連盟がアスリートの語学力強化に乗り出した。海外留学や語学教育事業を世界的に展開する「EFエデュケーション・ファースト」社の日本法人とパートナーシップ契約を結び、海外の大学チームやプロチームへの参加を目指す主に女子の日本代表候補選手らの語学習得をサポートする。渡航先や現地での活動拠点、練習環境の確保などについても、同社のネットワークを使って相談に乗る。トップアスリートが当たり前のように海外で活躍する時代となり、スポーツに打ち込む中高校生が海外に留学して一段と高いレベルでの武者修行を望むケースも珍しくなくなった。

スポーツと語学習得への関心がいっそう高まる2020年東京五輪・パラリンピックに向け、同社は海外雄飛を目指すトップアスリートの支援に積極的に取り組むことで、新たな留学への需要を掘り起こすことも狙っている。

EF社日本法人の中村淳之介社長(左)と日本アイスホッケー連盟の小野伸治・国際委員長

まずは海外で活躍する選手を含むアイスホッケー連盟が指定する10人程度に1年間、同社の運営するインターネットを使ったオンライン英語教材による通信教育を無償で提供する。さらに年に2回、連盟の強化合宿に英語講師を派遣してグループレッスンの授業も実施する。連盟の推薦する選手、スタッフは3カ月に1回の定期テストも無料で受けることが可能。同社のプログラムによる1週間か2週間の短期留学も割引料金で利用できる。

アイスホッケーの女子選手の語学習得には切実な事情がある。国内リーグのレベルが高くないため、高校を卒業して五輪や世界選手権の代表を目指す有力選手の多くは海外でのプレーを選択する。今年の世界選手権に出場した日本代表「スマイルジャパン」のメンバーには、北米や欧州でプレーする選手が7人もいた。ソチ五輪に続いて連続出場を目指す2年後の平昌五輪(韓国)に向け、その数はさらに増えていくとみられる。

海外でプレーするとなると、女子の最高峰は北米の大学リーグだ。参加するには大学に進学することが必要になるが、問題は入学を認められるだけの語学力を身につけられるかだ。例えば、スマイルジャパンのFA浮田留衣選手(19)は高校を卒業後、日本オリンピック委員会(JOC)が就職を支援するアスナビ(トップアスリート就職支援ナビゲーション)で昭和大に職員として就職、同大学の支援で北米にわたって、オンタリオ・ホッケー・アカデミーに所属して大学進学を目指している。アイスホッケー選手としての評価は高く、10校以上からオファーはあるのだが、今年秋に念願の入学を果たすには英語の試験をパスしなければならない。

契約を担当した日本アイスホッケー連盟の細谷妙子さんは「海外でのプレーを目指す女子選手の多くが英語で苦労しています。チームへの参加は大学進学が前提になるので、切羽詰まった問題です」と話す。

EF社はスウェーデンが発祥。世界53カ国・地域に事業拠点と直営の語学学校を展開する。それを活用して海外への留学プログラムを提供するほか、英会話スクールの運営、オンラインによる英語教育なども扱う。国際オリンピック委員会(IOC)との関係も深く、1988年ソウル五輪から大会開催に伴うボランティアらの英語トレーニングを担当。08年北京五輪以降は、語学教育に関する公式サプライヤーとなっている。

米国のゴンザガ大へ進学する見通しとなった八村塁選手=11日、東京都内

スポーツの世界でもグローバル化は進み、サッカーや野球、テニス、ゴルフのような日本のメジャースポーツだけでなく、アイスホッケー、バスケットボール、水球、卓球、バドミントンなどほぼあらゆるスポーツで日本のトップが海外のリーグで活躍を目指す時代となった。今年3月に高校を卒業した日本バスケット界のホープ八村塁選手(18)も、9月から全米大学体育協会(NCAA)1部の大学への進学を目指すことを明らかにした。世界を舞台に活躍するトップアスリートにあこがれて競技に打ち込む10代の少年少女たちにも、本場の厳しい環境で腕を磨きたい、あるいは短期間でも経験してみたいという留学熱が高まっている。

同社は、サッカーの英プレミアリーグ・チェルシーのサマーキャンプに短期間参加する中学生向きのプログラムなども扱っているが、最近はサッカー以外でもさまざまなスポーツについて、留学希望者から「現地でのチーム参加など本格的なスポーツ体験はできないのか」などの問い合わせも多いという。スポーツに絡んだ留学の需要は20年五輪・パラリンピックに向けてますます増えていくと予想される。日本のトップアスリートの海外進出や語学習得をサポートする企業として存在をアピールできれば、そうした需要を掘り起こして新たな顧客として取り込むことも容易になる。

同社はアイスホッケーを皮切りに、他の国内競技団体とも同様のパートナーシップなどで交渉したいという。日本法人の中村淳之介社長は「世界を舞台に活躍したいと目指す日本のアスリートの語学習得をできる限りサポートしたい」と話している。

(編集委員 北川和徳)